腹部肥満が深刻な健康被害につながることが、対象者数合計250万人以上に上る72件の前向きコホート研究のシステマティックレビューとメタ解析の結果から明らかになった。BMIで補正してもなお、腹部肥満は死亡リスクと有意に関連するという。詳細は、「the BMJ」9月23日オンライン版に掲載された。トロント大学(カナダ)のTauseef Ahmad Khan氏によると、体脂肪の評価にはBMIが用いられることが多いが、BMIでは筋肉と脂肪を区別できず、また脂肪が蓄積している部位も特定できないため、リスク判定の正確さに欠けるという。それに対して今回の研究から、腹部に蓄積した過剰な脂肪は、体脂肪を全身的に評価した結果よりも死亡リスクと強く関連していることが明らかになった。Khan氏は、「BMIばかりを気にするのではなく、腹まわりをもっと気にするべきだ」と主張している。.このシステマティックレビューでは、PubMedおよびScopusを用いて2019年7月までに報告された、腹部肥満と死亡率の関係を検討した前向きコホート研究の英語論文を検索した。スクリーニングでヒットした9万8,745件の報告から、適格基準を満たし解析に十分なデータを有している72件の前向きコホート研究が抽出された。.これらの研究は1999~2019年に実施されたもので、米国、カナダ、欧州、オーストラリア、ブラジル、インド、インドネシア、日本、中国、韓国、イランなどから報告されていた。いずれも被験者は18歳以上で参加者数は合計252万8,297人、追跡期間は3~24年でイベント数は15万164件だった。腹部肥満の評価指標は研究により異なるが、ウエストやヒップの周囲長、またはその比、ウエストと大腿周囲長の比などで評価しているものが多かった。.メタ解析の結果、ウエスト周囲長が10cm増えるごとに、早期死亡のリスクは11%増大することが分かった〔ハザード比(HR)1.11(95%信頼区間1.08~1.13)〕。BMIで調整後も、この関連は有意だった。一方、大腿周囲長は5cm増えるごとに、早期死亡のリスクは18%減少することが分かった〔HR0.82(同0.75~0.89)〕。.大腿周囲長が大きいほど死亡リスクが低下する理由について、Khan氏は「太腿周囲長は筋肉量の指標となるため」と説明。反対にウエスト周囲長が大きい腹部肥満は内臓脂肪の蓄積を表しており、そのような状態は脂質異常症、糖尿病、高血圧、心疾患、脳卒中のリスクである」と解説。内臓脂肪を解消するための手段として、「特定の部位のみの脂肪を減らすことはできない。しかし食事や運動によって全身の脂肪を落とすことが、内臓脂肪を減らすことにつながる」と助言している。.米テキサス大学サウスウエスタン医療センターのLona Sandon氏も、「内臓脂肪はインスリン抵抗性を引き起こし、2型糖尿病や心疾患のリスクを高める炎症性物質を分泌するため、それを減らすための努力は間違いなく良いことだ」と解説。その上で、内臓脂肪の減らし方を2ステップに分け、以下のように解説している。.最初のステップは、自転車やトレッドミルなどで汗を流すことだという。「有酸素運動は脂肪を減らすのに役立つ。それに筋力トレーニングを追加し、できるだけ欠かさずに続けると良い。理想的には週に5日ほど行ってほしい」と述べている。続く第2のステップは、余分な摂取エネルギーをカットすることで、「砂糖と脂肪分を減らして果物と野菜に置き換え、食べる量自体も減らす。アルコールも控えた方が良い」としている。.Sandon氏はまた、「医師も腹部肥満の指標であるウエストサイズに注意し、患者の内臓脂肪を減らすことを目標に介入する必要がある」と付け加えている。(HealthDay News 2020年9月24日).https://consumer.healthday.com/vitamins-and-nutrition-information-27/body-fat-health-news-300/even-if-hips-legs-slim-down-belly-fat-remains-a-health-danger-761595.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
腹部肥満が深刻な健康被害につながることが、対象者数合計250万人以上に上る72件の前向きコホート研究のシステマティックレビューとメタ解析の結果から明らかになった。BMIで補正してもなお、腹部肥満は死亡リスクと有意に関連するという。詳細は、「the BMJ」9月23日オンライン版に掲載された。トロント大学(カナダ)のTauseef Ahmad Khan氏によると、体脂肪の評価にはBMIが用いられることが多いが、BMIでは筋肉と脂肪を区別できず、また脂肪が蓄積している部位も特定できないため、リスク判定の正確さに欠けるという。それに対して今回の研究から、腹部に蓄積した過剰な脂肪は、体脂肪を全身的に評価した結果よりも死亡リスクと強く関連していることが明らかになった。Khan氏は、「BMIばかりを気にするのではなく、腹まわりをもっと気にするべきだ」と主張している。.このシステマティックレビューでは、PubMedおよびScopusを用いて2019年7月までに報告された、腹部肥満と死亡率の関係を検討した前向きコホート研究の英語論文を検索した。スクリーニングでヒットした9万8,745件の報告から、適格基準を満たし解析に十分なデータを有している72件の前向きコホート研究が抽出された。.これらの研究は1999~2019年に実施されたもので、米国、カナダ、欧州、オーストラリア、ブラジル、インド、インドネシア、日本、中国、韓国、イランなどから報告されていた。いずれも被験者は18歳以上で参加者数は合計252万8,297人、追跡期間は3~24年でイベント数は15万164件だった。腹部肥満の評価指標は研究により異なるが、ウエストやヒップの周囲長、またはその比、ウエストと大腿周囲長の比などで評価しているものが多かった。.メタ解析の結果、ウエスト周囲長が10cm増えるごとに、早期死亡のリスクは11%増大することが分かった〔ハザード比(HR)1.11(95%信頼区間1.08~1.13)〕。BMIで調整後も、この関連は有意だった。一方、大腿周囲長は5cm増えるごとに、早期死亡のリスクは18%減少することが分かった〔HR0.82(同0.75~0.89)〕。.大腿周囲長が大きいほど死亡リスクが低下する理由について、Khan氏は「太腿周囲長は筋肉量の指標となるため」と説明。反対にウエスト周囲長が大きい腹部肥満は内臓脂肪の蓄積を表しており、そのような状態は脂質異常症、糖尿病、高血圧、心疾患、脳卒中のリスクである」と解説。内臓脂肪を解消するための手段として、「特定の部位のみの脂肪を減らすことはできない。しかし食事や運動によって全身の脂肪を落とすことが、内臓脂肪を減らすことにつながる」と助言している。.米テキサス大学サウスウエスタン医療センターのLona Sandon氏も、「内臓脂肪はインスリン抵抗性を引き起こし、2型糖尿病や心疾患のリスクを高める炎症性物質を分泌するため、それを減らすための努力は間違いなく良いことだ」と解説。その上で、内臓脂肪の減らし方を2ステップに分け、以下のように解説している。.最初のステップは、自転車やトレッドミルなどで汗を流すことだという。「有酸素運動は脂肪を減らすのに役立つ。それに筋力トレーニングを追加し、できるだけ欠かさずに続けると良い。理想的には週に5日ほど行ってほしい」と述べている。続く第2のステップは、余分な摂取エネルギーをカットすることで、「砂糖と脂肪分を減らして果物と野菜に置き換え、食べる量自体も減らす。アルコールも控えた方が良い」としている。.Sandon氏はまた、「医師も腹部肥満の指標であるウエストサイズに注意し、患者の内臓脂肪を減らすことを目標に介入する必要がある」と付け加えている。(HealthDay News 2020年9月24日).https://consumer.healthday.com/vitamins-and-nutrition-information-27/body-fat-health-news-300/even-if-hips-legs-slim-down-belly-fat-remains-a-health-danger-761595.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.