心臓病になりやすい体質は、小児期からではなく、それよりもさらに早く、母親の子宮の中にいる時から作られ始めているのかもしれない。「Canadian Medical Association Journal(CMAJ)」9月28日オンライン版に掲載された論文によると、妊娠中に糖尿病だった女性から生まれた子どもは、生涯にわたり心臓病のリスクが高まる可能性があるという。筆頭著者でカナダ保健省のLaetitia Guillemette氏は、「母親が妊娠中に糖尿病だった人のリスクは、そうでない人の2~3倍高く、その関連の強さに驚いた」と語っている。この研究では、カナダのマニトバ州で30年近くにわたって続けられている、母親とその子どもの健康調査のデータが用いられた。この健康調査には、同州で生まれたほぼ全ての子どもの健康関連データが蓄積されている。.1979~2005年に生まれた子どもを2015年3月まで追跡し(最高齢の子どもは35歳に到達)、母親が妊娠糖尿病または妊娠以前から2型糖尿病であった場合の、出生後の子どもの健康への影響を解析した。一次評価項目は、虚血性心疾患、脳梗塞などの心血管イベントの複合エンドポイント、二次評価項目は、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの心血管疾患危険因子とした。.追跡期間中に20万754人の母親から35万9,919人の出生が記録されていた。母親が、妊娠糖尿病または2型糖尿病以外の糖尿病の場合や、子どもが先天性疾患の場合、データの欠落がある場合などを除外し、29万3,546人の子ども(平均年齢20.5±6.4歳、女性49.3%)を解析対象とした。これらの子どもの母親のうち、8,210人(2.8%)が妊娠糖尿病と診断され、3,217人(1.1%)は妊娠以前から2型糖尿病を有していた。.一次評価項目の心血管イベントを発症した子どもは2,765人(0.9%)、二次評価項目の心血管疾患危険因子を発症した子どもは1万2,673人(4.3%)だった。傾向スコアでマッチングさせて解析した結果、母親が妊娠糖尿病または2型糖尿病であった場合のいずれも、子どもの心血管イベント、心血管疾患危険因子のリスクが高いことが分かった。.具体的には、妊娠糖尿病の母親から生まれた子どもの心血管イベントの調整ハザード比(aHR)は1.42(95%信頼区間1.12~1.79)、心血管疾患危険因子についてはaHR1.92(同1.75~2.11)だった。また、2型糖尿病の母親の子どもの場合は心血管イベントのaHR1.40(同0.98~2.01)、心血管疾患危険因子はaHR3.40(同3.00~3.85)だった。.この研究結果について、米国糖尿病学会(ADA)のRobert Gabbay氏は、「母親が妊娠中に糖尿病であった場合、その子どもは35歳前の若さにもかかわらず心臓病のリスクが上昇することが示唆された。これはとても危惧されるデータだ。われわれは通常、心臓病のリスクが高まるのは、はるかに高齢になってからだと考えている」と述べている。また、「妊娠中の血糖値が高いと胎児が大きくなり、出産時にトラブルが発生しやすくなるほか、さまざまな合併症のリスクが高まる。血糖値が高いことがそれらのリスクと関連しており、血糖値をコントロールすることで出産時トラブルのリスクは抑制される」と解説している。.なお、今回の研究では、母親の糖尿病が子どもの心臓病リスクを高めるメカニズムは検討されていない。Guillemette氏は、この研究の目的について、「われわれの健康に影響を与える因子の多くが、個人のライフスタイルに直接関係しているとは限らないという事実を明確にすることだった」と述べている。そして研究の結果から、母親の子宮内で糖尿病に曝露した子どもを対象としたスクリーニング体制の確立などの新たな施策が、疾患予防に役立つ可能性が示唆された。同氏は、「政策立案者が、全ての人にとってより健康的である環境の構築に取り組むことが望まれる」とコメントしている。(HealthDay News 2020年9月28日).https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/misc-diabetes-news-181/diabetes-during-pregnancy-could-raise-lifelong-heart-risks-for-children-761657.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
心臓病になりやすい体質は、小児期からではなく、それよりもさらに早く、母親の子宮の中にいる時から作られ始めているのかもしれない。「Canadian Medical Association Journal(CMAJ)」9月28日オンライン版に掲載された論文によると、妊娠中に糖尿病だった女性から生まれた子どもは、生涯にわたり心臓病のリスクが高まる可能性があるという。筆頭著者でカナダ保健省のLaetitia Guillemette氏は、「母親が妊娠中に糖尿病だった人のリスクは、そうでない人の2~3倍高く、その関連の強さに驚いた」と語っている。この研究では、カナダのマニトバ州で30年近くにわたって続けられている、母親とその子どもの健康調査のデータが用いられた。この健康調査には、同州で生まれたほぼ全ての子どもの健康関連データが蓄積されている。.1979~2005年に生まれた子どもを2015年3月まで追跡し(最高齢の子どもは35歳に到達)、母親が妊娠糖尿病または妊娠以前から2型糖尿病であった場合の、出生後の子どもの健康への影響を解析した。一次評価項目は、虚血性心疾患、脳梗塞などの心血管イベントの複合エンドポイント、二次評価項目は、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの心血管疾患危険因子とした。.追跡期間中に20万754人の母親から35万9,919人の出生が記録されていた。母親が、妊娠糖尿病または2型糖尿病以外の糖尿病の場合や、子どもが先天性疾患の場合、データの欠落がある場合などを除外し、29万3,546人の子ども(平均年齢20.5±6.4歳、女性49.3%)を解析対象とした。これらの子どもの母親のうち、8,210人(2.8%)が妊娠糖尿病と診断され、3,217人(1.1%)は妊娠以前から2型糖尿病を有していた。.一次評価項目の心血管イベントを発症した子どもは2,765人(0.9%)、二次評価項目の心血管疾患危険因子を発症した子どもは1万2,673人(4.3%)だった。傾向スコアでマッチングさせて解析した結果、母親が妊娠糖尿病または2型糖尿病であった場合のいずれも、子どもの心血管イベント、心血管疾患危険因子のリスクが高いことが分かった。.具体的には、妊娠糖尿病の母親から生まれた子どもの心血管イベントの調整ハザード比(aHR)は1.42(95%信頼区間1.12~1.79)、心血管疾患危険因子についてはaHR1.92(同1.75~2.11)だった。また、2型糖尿病の母親の子どもの場合は心血管イベントのaHR1.40(同0.98~2.01)、心血管疾患危険因子はaHR3.40(同3.00~3.85)だった。.この研究結果について、米国糖尿病学会(ADA)のRobert Gabbay氏は、「母親が妊娠中に糖尿病であった場合、その子どもは35歳前の若さにもかかわらず心臓病のリスクが上昇することが示唆された。これはとても危惧されるデータだ。われわれは通常、心臓病のリスクが高まるのは、はるかに高齢になってからだと考えている」と述べている。また、「妊娠中の血糖値が高いと胎児が大きくなり、出産時にトラブルが発生しやすくなるほか、さまざまな合併症のリスクが高まる。血糖値が高いことがそれらのリスクと関連しており、血糖値をコントロールすることで出産時トラブルのリスクは抑制される」と解説している。.なお、今回の研究では、母親の糖尿病が子どもの心臓病リスクを高めるメカニズムは検討されていない。Guillemette氏は、この研究の目的について、「われわれの健康に影響を与える因子の多くが、個人のライフスタイルに直接関係しているとは限らないという事実を明確にすることだった」と述べている。そして研究の結果から、母親の子宮内で糖尿病に曝露した子どもを対象としたスクリーニング体制の確立などの新たな施策が、疾患予防に役立つ可能性が示唆された。同氏は、「政策立案者が、全ての人にとってより健康的である環境の構築に取り組むことが望まれる」とコメントしている。(HealthDay News 2020年9月28日).https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/misc-diabetes-news-181/diabetes-during-pregnancy-could-raise-lifelong-heart-risks-for-children-761657.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.