他の子どもよりも思春期の開始が早い子どもは、青年期に自傷行為に及ぶリスクの高いことが、英ブリストル大学のElystan Roberts氏らが実施した研究で明らかになった。詳細は、「Epidemiology and Psychiatric Sciences」10月6日オンライン版に掲載された。この研究は、英国で進行中のコホート研究「Avon Longitudinal Study of Parents and Children（ALSPAC）」の参加者5,369人（男児47％）のデータを解析したもの。目的は、思春期の身体発育のタイミング（以下、発育タイミング）と青年期および若年成人期の男女における自傷行為との関連を、発育タイミングの客観的な指標を用いて調べることである。.発育タイミングの客観的な指標として用いたのは、身長の最大発育速度年齢（aPHV）である。aPHVは、思春期に子どもの身長が伸びる速度が最も速い時点での年齢を指す。なお、今回の研究対象者の平均aPHVは、男児で13.5歳、女児で11.8歳だった。また、自傷行為歴については、参加者が16歳時と21歳時に行った自己報告により把握した。.16歳時に自傷行為を行ったことがある対象者の割合は、男児で10％、女児で25％であり、21歳時では、男性で28％、女性で35％に及ぶことが明らかになった。解析の結果、遅めのaPHVは、男女ともに、16歳時の自傷行為のリスク低下と関連することが明らかになった（aPHVが1年増えるごとのオッズ比は、女児で0.85、男児で0.72）。また、この関連は、統計学的に有意ではないものの、女児では21歳になるまで認められることも判明した。一方、男児では、こうした関連が21歳まで認められることを示すエビデンスは得られなかった。.思春期の訪れが早かった子どもでは、抑うつなどのメンタルヘルス問題の発症リスクが高まることが知られている。また、過去の研究では、思春期の訪れが早かった女児では、自傷行為のリスクが高まることも示されている。しかし、こうした研究の大半は、女児のみに焦点を当てているか、もしくは男児と女児を別々に扱っていなかった。また、思春期の開始時期についても、対象者に尋ねるなど主観的な指標に頼っており、正確性に欠ける可能性は否めなかった。.こうした点を踏まえた上でRoberts氏は、「われわれの研究は、aPHVという客観的な指標を用いて、男児の発育タイミングと自傷行為の関連を検討した、初めての研究である」と述べている。そして、「男児では、発育タイミングを測るのが極めて困難であるため、早めの思春期開始が男児に及ぼす心理的影響については、いまだに不明な点が多い。したがって、今回の研究結果は、男児と女児の自傷行為リスクを減らす上で有用な情報となるだろう」と述べている。.この研究論文の共著者で、同大学のBecky Mars氏は、次のステップは、早めの思春期の開始と自傷行為とを関連付けている因子の解明だとの展望を示している。同氏によると、脳の発達やホルモン分泌量の変化などの生物学的因子が関与している可能性や、いじめや物質使用、抑うつなどの心理社会的要因が関与している可能性が考えられるという。同氏は、「この点に関する理解が深まれば、自傷行為のリスクを軽減するための介入策を考案し、実施することも可能になる」と述べている。（HealthDay News 2020年10月8日）.https://consumer.healthday.com/kids-health-information-23/adolescents-and-teen-health-news-719/for-kids-who-hit-puberty-early-risk-of-self-harm-rises-761912.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
他の子どもよりも思春期の開始が早い子どもは、青年期に自傷行為に及ぶリスクの高いことが、英ブリストル大学のElystan Roberts氏らが実施した研究で明らかになった。詳細は、「Epidemiology and Psychiatric Sciences」10月6日オンライン版に掲載された。この研究は、英国で進行中のコホート研究「Avon Longitudinal Study of Parents and Children（ALSPAC）」の参加者5,369人（男児47％）のデータを解析したもの。目的は、思春期の身体発育のタイミング（以下、発育タイミング）と青年期および若年成人期の男女における自傷行為との関連を、発育タイミングの客観的な指標を用いて調べることである。.発育タイミングの客観的な指標として用いたのは、身長の最大発育速度年齢（aPHV）である。aPHVは、思春期に子どもの身長が伸びる速度が最も速い時点での年齢を指す。なお、今回の研究対象者の平均aPHVは、男児で13.5歳、女児で11.8歳だった。また、自傷行為歴については、参加者が16歳時と21歳時に行った自己報告により把握した。.16歳時に自傷行為を行ったことがある対象者の割合は、男児で10％、女児で25％であり、21歳時では、男性で28％、女性で35％に及ぶことが明らかになった。解析の結果、遅めのaPHVは、男女ともに、16歳時の自傷行為のリスク低下と関連することが明らかになった（aPHVが1年増えるごとのオッズ比は、女児で0.85、男児で0.72）。また、この関連は、統計学的に有意ではないものの、女児では21歳になるまで認められることも判明した。一方、男児では、こうした関連が21歳まで認められることを示すエビデンスは得られなかった。.思春期の訪れが早かった子どもでは、抑うつなどのメンタルヘルス問題の発症リスクが高まることが知られている。また、過去の研究では、思春期の訪れが早かった女児では、自傷行為のリスクが高まることも示されている。しかし、こうした研究の大半は、女児のみに焦点を当てているか、もしくは男児と女児を別々に扱っていなかった。また、思春期の開始時期についても、対象者に尋ねるなど主観的な指標に頼っており、正確性に欠ける可能性は否めなかった。.こうした点を踏まえた上でRoberts氏は、「われわれの研究は、aPHVという客観的な指標を用いて、男児の発育タイミングと自傷行為の関連を検討した、初めての研究である」と述べている。そして、「男児では、発育タイミングを測るのが極めて困難であるため、早めの思春期開始が男児に及ぼす心理的影響については、いまだに不明な点が多い。したがって、今回の研究結果は、男児と女児の自傷行為リスクを減らす上で有用な情報となるだろう」と述べている。.この研究論文の共著者で、同大学のBecky Mars氏は、次のステップは、早めの思春期の開始と自傷行為とを関連付けている因子の解明だとの展望を示している。同氏によると、脳の発達やホルモン分泌量の変化などの生物学的因子が関与している可能性や、いじめや物質使用、抑うつなどの心理社会的要因が関与している可能性が考えられるという。同氏は、「この点に関する理解が深まれば、自傷行為のリスクを軽減するための介入策を考案し、実施することも可能になる」と述べている。（HealthDay News 2020年10月8日）.https://consumer.healthday.com/kids-health-information-23/adolescents-and-teen-health-news-719/for-kids-who-hit-puberty-early-risk-of-self-harm-rises-761912.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
