間もなくインフルエンザシーズンに入る。今シーズンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックと重複することも危惧されている。そのようなことになった場合、脳梗塞に対する注意が必要になるかもしれない。これら二つの感染症は、いずれも脳梗塞のリスクを高める可能性があるからだ。実際に脳梗塞が発症する頻度は低いかもしれないが、そのリスクを理解しておいた方が良いと専門家は指摘している。米コロンビア大学の教授で米国心臓協会(AHA)の会長であるMitchell Elkind氏は、「脳梗塞の長期的な危険因子は、高血圧、糖尿病、喫煙、脂質異常症、運動不足、非健康的な食生活などだ。そして、インフルエンザやCOVID-19に罹患した時に、それらのリスクが蓄積されてきた長いプロセスの最終段階として、一気に脳梗塞のリスクが高まる」と解説する。米ワイルコーネル医療センターのBabak Navi氏も、「脳梗塞などの血管イベントのきっかけは『トリガー(引き金)』と呼ばれる。感染症もよく知られたトリガーである」と話す。.Elkind氏はこれまでに、脳梗塞と感染症の関連に関する複数の論文を発表している。2019年の小規模な研究では、インフルエンザ様症状を呈する感染症の発症15日以内に、脳梗塞のリスクが4割増加すると推算している。またNavi氏は今年7月に「JAMA Neurology」に掲載された論文で、インフルエンザで救急外来を受診あるいは入院した患者のうち、脳梗塞を発症したのは0.2%であったのに対し、COVID-19の患者では1.6%に上ると報告している。.インフルエンザやCOVID-19と脳梗塞の関連を結びつけるメカニズムは明確には分かっていない。ただし、感染に対する体の免疫反応として生じる炎症が、その一端を担っていると考えられている。「炎症が脳梗塞危険因子であることは知られており、炎症が強いほど脳梗塞リスクは高くなる可能性がある」とNavi氏は解説する。一方、Elkind氏は免疫と血液凝固の関連や、感染症による脱水の関与に注目している。それらに加え、「新型コロナウイルスは、いくつかの未解明の機序を隠し持っているようだ」と語る。例えば、可能性として、血管内皮細胞に結合して血栓を起こしやすくすることも考えられるという。.今年の8月には、米疾病対策センター(CDC)から、インフルエンザで入院した成人患者の約8人に1人は心臓の合併症を持っていることが報告された。今、専門家はインフルエンザシーズンに備えて、予防接種の必要性を強調している。Elkind氏によると、AHAは長年、心血管疾患の合併症リスク抑制のために、インフルエンザの予防接種を推奨してきたという。そして今年はさらにその推奨活動を拡大している。.予防接種に加えて、Elkind氏は「脳梗塞の兆候を誰もが知っておくべきだ」と語る。具体的には、顔の一部が垂れ下がる(face drooping)、腕に力が入らない(arm weakness)、ろれつが回らない(speech difficulty)、および、速やかな救急要請(time to call 911。911は日本の119番に相当)の頭文字をとって「FAST」と覚えると良いとアドバイスしている。.また同氏は、「COVID-19感染抑止のためのルールやマナーを順守しなければいけない。COVID-19による脳梗塞から身を守る最善の方法は、何よりもCOVID-19に感染しないことだ」とし、「人混みを避け、マスクを着用し、手を洗い、社会的距離を保つという、過去数カ月にわたって何度も語られてきたことの全てを徹底してほしい」と語っている。(American Heart Association News 2020年10月14日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/coronavirus-1008/aha-news-flu-and-covid-19-are-bad-enough-but-they-also-can-raise-stroke-risk-762140.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
間もなくインフルエンザシーズンに入る。今シーズンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックと重複することも危惧されている。そのようなことになった場合、脳梗塞に対する注意が必要になるかもしれない。これら二つの感染症は、いずれも脳梗塞のリスクを高める可能性があるからだ。実際に脳梗塞が発症する頻度は低いかもしれないが、そのリスクを理解しておいた方が良いと専門家は指摘している。米コロンビア大学の教授で米国心臓協会(AHA)の会長であるMitchell Elkind氏は、「脳梗塞の長期的な危険因子は、高血圧、糖尿病、喫煙、脂質異常症、運動不足、非健康的な食生活などだ。そして、インフルエンザやCOVID-19に罹患した時に、それらのリスクが蓄積されてきた長いプロセスの最終段階として、一気に脳梗塞のリスクが高まる」と解説する。米ワイルコーネル医療センターのBabak Navi氏も、「脳梗塞などの血管イベントのきっかけは『トリガー(引き金)』と呼ばれる。感染症もよく知られたトリガーである」と話す。.Elkind氏はこれまでに、脳梗塞と感染症の関連に関する複数の論文を発表している。2019年の小規模な研究では、インフルエンザ様症状を呈する感染症の発症15日以内に、脳梗塞のリスクが4割増加すると推算している。またNavi氏は今年7月に「JAMA Neurology」に掲載された論文で、インフルエンザで救急外来を受診あるいは入院した患者のうち、脳梗塞を発症したのは0.2%であったのに対し、COVID-19の患者では1.6%に上ると報告している。.インフルエンザやCOVID-19と脳梗塞の関連を結びつけるメカニズムは明確には分かっていない。ただし、感染に対する体の免疫反応として生じる炎症が、その一端を担っていると考えられている。「炎症が脳梗塞危険因子であることは知られており、炎症が強いほど脳梗塞リスクは高くなる可能性がある」とNavi氏は解説する。一方、Elkind氏は免疫と血液凝固の関連や、感染症による脱水の関与に注目している。それらに加え、「新型コロナウイルスは、いくつかの未解明の機序を隠し持っているようだ」と語る。例えば、可能性として、血管内皮細胞に結合して血栓を起こしやすくすることも考えられるという。.今年の8月には、米疾病対策センター(CDC)から、インフルエンザで入院した成人患者の約8人に1人は心臓の合併症を持っていることが報告された。今、専門家はインフルエンザシーズンに備えて、予防接種の必要性を強調している。Elkind氏によると、AHAは長年、心血管疾患の合併症リスク抑制のために、インフルエンザの予防接種を推奨してきたという。そして今年はさらにその推奨活動を拡大している。.予防接種に加えて、Elkind氏は「脳梗塞の兆候を誰もが知っておくべきだ」と語る。具体的には、顔の一部が垂れ下がる(face drooping)、腕に力が入らない(arm weakness)、ろれつが回らない(speech difficulty)、および、速やかな救急要請(time to call 911。911は日本の119番に相当)の頭文字をとって「FAST」と覚えると良いとアドバイスしている。.また同氏は、「COVID-19感染抑止のためのルールやマナーを順守しなければいけない。COVID-19による脳梗塞から身を守る最善の方法は、何よりもCOVID-19に感染しないことだ」とし、「人混みを避け、マスクを着用し、手を洗い、社会的距離を保つという、過去数カ月にわたって何度も語られてきたことの全てを徹底してほしい」と語っている。(American Heart Association News 2020年10月14日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/coronavirus-1008/aha-news-flu-and-covid-19-are-bad-enough-but-they-also-can-raise-stroke-risk-762140.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.