新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に世界各国で実施された1型糖尿病の遠隔医療に関する調査結果が、「Endocrinology, Diabetes and Metabolism」8月29日オンライン版に掲載された。ベルン大学(スイス)のSam Scott氏らの研究によるもので、調査に回答した大半の患者は遠隔医療を肯定的に捉えていることが明らかになった。ただし、血糖コントロールが不良な群では、否定的な考えをもつ患者も多かった。1型糖尿病の患者は、毎日複数回インスリン注射をするか、注入ポンプを用いてインスリンを持続的に投与するという治療を続ける。良好な血糖コントロールを維持するにはインスリンの投与量をこまめに調整する必要があり、定期的な医師の診察が欠かせない。.COVID-19パンデミックが1型糖尿病患者の通院の妨げとなり、代替手段として遠隔医療が活用されるケースが少なくないと考えられる。そこでScott氏らは、世界各国でCOVID-19パンデミックにより外出自粛または外出禁止状態にあった2020年3月24日~5月5日に、1型糖尿病患者を対象とする遠隔医療の利用状況調査を行った。.調査期間中に89カ国から7,477件の回答が寄せられた。居住地の内訳は、欧州と北米が各37%、アフリカ・アジアが17%、オセアニア5%、南米4%で国別では米国(33%)と英国(15%)が多数を占めた。対象者の68%が女性で、年齢は25〜44歳が53%と過半数を占めた。HbA1cは平均7.1±1.2%で、罹病期間は17±12年、治療法は56%がインスリンポンプ療法、43%が頻回注射で、1%がそれらを併用していた。.集計の結果、全体の32%はパンデミック期間中の治療状況に基本的な変化はないと回答し、30%は受診予約のキャンセルがあったと回答。さらに9%は、この期間中の医師との接触が絶たれたと回答した。遠隔医療を利用したのは28%で、その通信手段の内訳は電話が72%、ビデオ通話が28%だった。遠隔医療利用者の86%はそれが役立つと回答し、75%はパンデミック終了後の利用も考慮していた。.遠隔医療の利用を前向きに捉える傾向に、年齢や教育レベルとの関連は認められなかった。その一方で、血糖コントロール状態は、遠隔医療の捉え方に影響を及ぼす要因と考えられた。具体的には、HbA1cが9%を超える男性患者の45%、女性患者の20%が「遠隔医療は有用でない」と回答し、HbA1c9%未満の群との有意差が見られた(P=0.0016)。.Scott氏らは、1型糖尿病の治療は血糖測定の結果に基づくインスリン投与量の調整が主体であり、それらはインターネットを介して医師-患者間でデータ共有が可能であることから、遠隔医療に適した疾患の一つであると考えている。さらに同氏は、「遠隔医療は受診のための時間、コスト、および不便さを解消する。この点は、医療機関から遠方に住む人などにとっては特に重要だ」と述べている。.この研究結果に関連し、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルス小児糖尿病センターのMary Pat Gallagher氏は、「過去には遠隔医療を阻む障害が存在した。しかしCOVID-19によって遠隔医療が必須となり、それらの問題が解消された。今後も遠隔医療は1型糖尿病治療の選択肢の一つであり続けるだろう」と述べている。.米JDRF(旧・青少年糖尿病研究財団)のSanjoy Dutta氏も、サイバーセキュリティーなどの課題を指摘しながら、「遠隔医療には明らかなメリットがある。1型糖尿病の治療を包括的に行える診療所は少なく、眼科医や腎臓専門医の診察を受けるには、そのために仕事を休まなければならない。COVID-19パンデミックは遠隔医療を加速させた。将来的には、オンラインで包括的な治療を提供できるようになるかもしれない」と語っている。(HealthDay News 2020年10月5日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/coronavirus-1008/has-the-pandemic-changed-type-1-diabetes-care-for-good-761887.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に世界各国で実施された1型糖尿病の遠隔医療に関する調査結果が、「Endocrinology, Diabetes and Metabolism」8月29日オンライン版に掲載された。ベルン大学(スイス)のSam Scott氏らの研究によるもので、調査に回答した大半の患者は遠隔医療を肯定的に捉えていることが明らかになった。ただし、血糖コントロールが不良な群では、否定的な考えをもつ患者も多かった。1型糖尿病の患者は、毎日複数回インスリン注射をするか、注入ポンプを用いてインスリンを持続的に投与するという治療を続ける。良好な血糖コントロールを維持するにはインスリンの投与量をこまめに調整する必要があり、定期的な医師の診察が欠かせない。.COVID-19パンデミックが1型糖尿病患者の通院の妨げとなり、代替手段として遠隔医療が活用されるケースが少なくないと考えられる。そこでScott氏らは、世界各国でCOVID-19パンデミックにより外出自粛または外出禁止状態にあった2020年3月24日~5月5日に、1型糖尿病患者を対象とする遠隔医療の利用状況調査を行った。.調査期間中に89カ国から7,477件の回答が寄せられた。居住地の内訳は、欧州と北米が各37%、アフリカ・アジアが17%、オセアニア5%、南米4%で国別では米国(33%)と英国(15%)が多数を占めた。対象者の68%が女性で、年齢は25〜44歳が53%と過半数を占めた。HbA1cは平均7.1±1.2%で、罹病期間は17±12年、治療法は56%がインスリンポンプ療法、43%が頻回注射で、1%がそれらを併用していた。.集計の結果、全体の32%はパンデミック期間中の治療状況に基本的な変化はないと回答し、30%は受診予約のキャンセルがあったと回答。さらに9%は、この期間中の医師との接触が絶たれたと回答した。遠隔医療を利用したのは28%で、その通信手段の内訳は電話が72%、ビデオ通話が28%だった。遠隔医療利用者の86%はそれが役立つと回答し、75%はパンデミック終了後の利用も考慮していた。.遠隔医療の利用を前向きに捉える傾向に、年齢や教育レベルとの関連は認められなかった。その一方で、血糖コントロール状態は、遠隔医療の捉え方に影響を及ぼす要因と考えられた。具体的には、HbA1cが9%を超える男性患者の45%、女性患者の20%が「遠隔医療は有用でない」と回答し、HbA1c9%未満の群との有意差が見られた(P=0.0016)。.Scott氏らは、1型糖尿病の治療は血糖測定の結果に基づくインスリン投与量の調整が主体であり、それらはインターネットを介して医師-患者間でデータ共有が可能であることから、遠隔医療に適した疾患の一つであると考えている。さらに同氏は、「遠隔医療は受診のための時間、コスト、および不便さを解消する。この点は、医療機関から遠方に住む人などにとっては特に重要だ」と述べている。.この研究結果に関連し、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルス小児糖尿病センターのMary Pat Gallagher氏は、「過去には遠隔医療を阻む障害が存在した。しかしCOVID-19によって遠隔医療が必須となり、それらの問題が解消された。今後も遠隔医療は1型糖尿病治療の選択肢の一つであり続けるだろう」と述べている。.米JDRF(旧・青少年糖尿病研究財団)のSanjoy Dutta氏も、サイバーセキュリティーなどの課題を指摘しながら、「遠隔医療には明らかなメリットがある。1型糖尿病の治療を包括的に行える診療所は少なく、眼科医や腎臓専門医の診察を受けるには、そのために仕事を休まなければならない。COVID-19パンデミックは遠隔医療を加速させた。将来的には、オンラインで包括的な治療を提供できるようになるかもしれない」と語っている。(HealthDay News 2020年10月5日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/coronavirus-1008/has-the-pandemic-changed-type-1-diabetes-care-for-good-761887.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.