2008年にスタートした特定健診(メタボ健診)における特定保健指導の効果が限定的であるという研究結果が報告された。男性を対象とする検討からは、腹囲やBMIの減少には短期的効果があるものの、心血管疾患危険因子への有意な抑制効果は認められなかったという。京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の福間真悟氏らの研究によるもので、「JAMA Internal Medicine」10月5日オンライン版に論文掲載された。特定健診・保健指導は、動脈硬化が進展するメカニズムの基盤に位置するとされる内臓脂肪の蓄積を重視した保健システム。40歳以上75歳未満の国民全員を対象に、腹囲計測で内臓脂肪型肥満をスクリーニングし、血液検査などの結果とあわせてリスクレベルを評価。そのリスクレベルに応じて、内臓脂肪減少を目的とする、介入強度にめりはりのある保健指導が行われている。福間氏らは今回、建築関連企業保険組合の被保険者データを解析し、特定健診・保健指導の効果を検討した。.解析対象としたのは、2013~2018年に特定健診を受けた人のうち、データに欠落のない男性7万4,693人。女性は被保険者数や保健指導対象者数が少ないため、主な解析の対象から除外した。特定健診受診者のうち腹囲基準(男性は85cm)を超えていたのは53.1%だった。.対象者の平均年齢は52.1±7.8歳、腹囲は86.3±9.0cm、BMI24.5±3.4。評価項目は、特定健診受診後の肥満関連指標(腹囲、体重、BMI)と心血管危険因子(血圧、HbA1c、LDL-コレステロール)の変化とした。なお、特定保健指導の実施状況については2017~2018年のデータのみ利用可能であり、2017年は対象者の15.9%が指導を受けていた。.要指導判定を受けた人の1年後の肥満関連指標は、体重が-0.29kg(95%信頼区間-0.50~-0.08、P=0.005)、BMIが-0.10(同-0.17~-0.03、P=0.008)、腹囲が-0.34cm(同-0.59~-0.04、P=0.02)と、いずれも有意な減少が認められた。ただし2年後は、体重が-0.33kg(同-0.61~-0.55、P=0.02)、BMIが-0.10(同-0.20~-0.01、P=0.03)であり、この2項目は引き続き有意な減少が認められたものの、腹囲は-0.33 cm(同-0.64~0.04、P=0.09)であり有意性が消失していた。さらに4年後には全ての肥満関連指標が、特定健診受診前と有意差がなくなっていた。.一方の心血管疾患危険因子については、特定健診受診から1年後の時点で、収縮期血圧+0.28mmHg(同-0.53~1.47、P=0.36)、拡張期血圧-0.54mmHg(同-1.33~0.04、P=0.07)、HbA1c-0.01%(同-0.04~0.03、P=0.74)、LDL-コレステロール+0.42mg/dL(同-1.38~2.33、P=0.62)であり、いずれも有意な変化は認められなかった。また、2年目以降にも有意な変化が認められた項目はなかった。.これらの結果を福間氏らは、「特定健診・保健指導による介入は、継続的な体重減少につながらず、また臨床的に意味のある心血管危険因子の抑制を検出できなかった」とまとめている。また、本研究では特定保健指導がどのように実施されたかが評価できていないことなどの限界点を挙げつつ、「特定健診・保健指導の効果を改善するために、改善方法の詳細な検討と前向きな議論が必要である」と提言している。(HealthDay News 2020年10月26日).Abstract/Full Texthttps://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2771507.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
2008年にスタートした特定健診(メタボ健診)における特定保健指導の効果が限定的であるという研究結果が報告された。男性を対象とする検討からは、腹囲やBMIの減少には短期的効果があるものの、心血管疾患危険因子への有意な抑制効果は認められなかったという。京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の福間真悟氏らの研究によるもので、「JAMA Internal Medicine」10月5日オンライン版に論文掲載された。特定健診・保健指導は、動脈硬化が進展するメカニズムの基盤に位置するとされる内臓脂肪の蓄積を重視した保健システム。40歳以上75歳未満の国民全員を対象に、腹囲計測で内臓脂肪型肥満をスクリーニングし、血液検査などの結果とあわせてリスクレベルを評価。そのリスクレベルに応じて、内臓脂肪減少を目的とする、介入強度にめりはりのある保健指導が行われている。福間氏らは今回、建築関連企業保険組合の被保険者データを解析し、特定健診・保健指導の効果を検討した。.解析対象としたのは、2013~2018年に特定健診を受けた人のうち、データに欠落のない男性7万4,693人。女性は被保険者数や保健指導対象者数が少ないため、主な解析の対象から除外した。特定健診受診者のうち腹囲基準(男性は85cm)を超えていたのは53.1%だった。.対象者の平均年齢は52.1±7.8歳、腹囲は86.3±9.0cm、BMI24.5±3.4。評価項目は、特定健診受診後の肥満関連指標(腹囲、体重、BMI)と心血管危険因子(血圧、HbA1c、LDL-コレステロール)の変化とした。なお、特定保健指導の実施状況については2017~2018年のデータのみ利用可能であり、2017年は対象者の15.9%が指導を受けていた。.要指導判定を受けた人の1年後の肥満関連指標は、体重が-0.29kg(95%信頼区間-0.50~-0.08、P=0.005)、BMIが-0.10(同-0.17~-0.03、P=0.008)、腹囲が-0.34cm(同-0.59~-0.04、P=0.02)と、いずれも有意な減少が認められた。ただし2年後は、体重が-0.33kg(同-0.61~-0.55、P=0.02)、BMIが-0.10(同-0.20~-0.01、P=0.03)であり、この2項目は引き続き有意な減少が認められたものの、腹囲は-0.33 cm(同-0.64~0.04、P=0.09)であり有意性が消失していた。さらに4年後には全ての肥満関連指標が、特定健診受診前と有意差がなくなっていた。.一方の心血管疾患危険因子については、特定健診受診から1年後の時点で、収縮期血圧+0.28mmHg(同-0.53~1.47、P=0.36)、拡張期血圧-0.54mmHg(同-1.33~0.04、P=0.07)、HbA1c-0.01%(同-0.04~0.03、P=0.74)、LDL-コレステロール+0.42mg/dL(同-1.38~2.33、P=0.62)であり、いずれも有意な変化は認められなかった。また、2年目以降にも有意な変化が認められた項目はなかった。.これらの結果を福間氏らは、「特定健診・保健指導による介入は、継続的な体重減少につながらず、また臨床的に意味のある心血管危険因子の抑制を検出できなかった」とまとめている。また、本研究では特定保健指導がどのように実施されたかが評価できていないことなどの限界点を挙げつつ、「特定健診・保健指導の効果を改善するために、改善方法の詳細な検討と前向きな議論が必要である」と提言している。(HealthDay News 2020年10月26日).Abstract/Full Texthttps://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2771507.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.