心房細動(AF)患者では、薬物療法よりも、カテーテルアブレーション(カテーテル心筋焼灼術)で正常な心拍を回復させた方が、認知症の発症リスクが低下する可能性が高い。そんな研究結果を、延世大学校循環器内科学(韓国)教授のBoyoung Joung氏らが、「European Heart Journal」10月6日オンライン版に報告した。AFは高齢者に最もよく生じる心拍リズムの異常であり、脳卒中やその他の医学的問題、および死亡リスクを増大させることが知られている。Joung氏らは過去の研究で、たとえ脳卒中の既往歴がなくても、AFは認知症リスクの増大に関連することを明らかにしていた。また、AFに対するカテーテルアブレーションによる治療は、抗不整脈薬による治療と比べて、心臓がより長期間、正常なリズムを維持することを可能にし、これが生活の質(QOL)を改善することも知られている。.カテーテルアブレーションは、カテーテルと呼ばれる細い管を大腿静脈から心臓まで通し、カテーテルの先端から高周波エネルギーを発生させて、AFの発生部位を焼灼する処置である。今回の研究では、AF患者に対してカテーテルアブレーションや薬物療法を行うことにより、認知症の発症リスクを低減できるかどうかが評価された。対象となったのは、韓国で2005~2015年に新規にAFと診断された患者83万4,735人のうち、カテーテルアブレーションを受けた患者9,119人(カテーテルアブレーション群)と、薬物療法を受けた患者1万7,978人(薬物療法群)である。.追跡期間中央値52カ月の間に、カテーテルアブレーション群では164人、薬物療法群では308人が認知症を発症した。解析の結果、カテーテルアブレーション群では薬物療法群に比べて、認知症の発生リスクが27%低いことが明らかになった(ハザード比0.73)。また、認知症の種類に着目した場合、カテーテルアブレーション群では薬物療法群に比べて、アルツハイマー病の発症リスクが23%、血管性認知症の発症リスクが50%低減することも判明した。追跡期間中に脳卒中を起こした患者を解析から除外しても、カテーテルアブレーションと認知症全般、および血管性認知症のリスク低減との間には有意な関連が認められた。しかし、アルツハイマー病のリスク低減との間には、統計的に有意な関連は認められなかった。.研究結果についてJoung氏は、「追跡期間中に認知症を発症した人の割合は、カテーテルアブレーション群では6.1%、薬物療法群では9.1%であった。このことは、AF患者がアブレーションを受けることにより、100人当たり3人が認知症を回避できること、そして、追跡期間中に一人の認知症発症を予防するには34人の治療が必要であることを示唆している」と説明している。.研究チームは、今回の研究は観察研究であり、カテーテルアブレーションと認知症リスクとの関連が示されたに過ぎない点を強調。AFに対するカテーテルアブレーションによる処置が本当に認知症リスクの低減につながるのか、今後はランダム化試験を実施して、検証したいと話している。(HealthDay News 2020年10月14日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/atrial-fibrillation-959/a-fib-treatment-reduces-patients-dementia-risk-761975.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
心房細動(AF)患者では、薬物療法よりも、カテーテルアブレーション(カテーテル心筋焼灼術)で正常な心拍を回復させた方が、認知症の発症リスクが低下する可能性が高い。そんな研究結果を、延世大学校循環器内科学(韓国)教授のBoyoung Joung氏らが、「European Heart Journal」10月6日オンライン版に報告した。AFは高齢者に最もよく生じる心拍リズムの異常であり、脳卒中やその他の医学的問題、および死亡リスクを増大させることが知られている。Joung氏らは過去の研究で、たとえ脳卒中の既往歴がなくても、AFは認知症リスクの増大に関連することを明らかにしていた。また、AFに対するカテーテルアブレーションによる治療は、抗不整脈薬による治療と比べて、心臓がより長期間、正常なリズムを維持することを可能にし、これが生活の質(QOL)を改善することも知られている。.カテーテルアブレーションは、カテーテルと呼ばれる細い管を大腿静脈から心臓まで通し、カテーテルの先端から高周波エネルギーを発生させて、AFの発生部位を焼灼する処置である。今回の研究では、AF患者に対してカテーテルアブレーションや薬物療法を行うことにより、認知症の発症リスクを低減できるかどうかが評価された。対象となったのは、韓国で2005~2015年に新規にAFと診断された患者83万4,735人のうち、カテーテルアブレーションを受けた患者9,119人(カテーテルアブレーション群)と、薬物療法を受けた患者1万7,978人(薬物療法群)である。.追跡期間中央値52カ月の間に、カテーテルアブレーション群では164人、薬物療法群では308人が認知症を発症した。解析の結果、カテーテルアブレーション群では薬物療法群に比べて、認知症の発生リスクが27%低いことが明らかになった(ハザード比0.73)。また、認知症の種類に着目した場合、カテーテルアブレーション群では薬物療法群に比べて、アルツハイマー病の発症リスクが23%、血管性認知症の発症リスクが50%低減することも判明した。追跡期間中に脳卒中を起こした患者を解析から除外しても、カテーテルアブレーションと認知症全般、および血管性認知症のリスク低減との間には有意な関連が認められた。しかし、アルツハイマー病のリスク低減との間には、統計的に有意な関連は認められなかった。.研究結果についてJoung氏は、「追跡期間中に認知症を発症した人の割合は、カテーテルアブレーション群では6.1%、薬物療法群では9.1%であった。このことは、AF患者がアブレーションを受けることにより、100人当たり3人が認知症を回避できること、そして、追跡期間中に一人の認知症発症を予防するには34人の治療が必要であることを示唆している」と説明している。.研究チームは、今回の研究は観察研究であり、カテーテルアブレーションと認知症リスクとの関連が示されたに過ぎない点を強調。AFに対するカテーテルアブレーションによる処置が本当に認知症リスクの低減につながるのか、今後はランダム化試験を実施して、検証したいと話している。(HealthDay News 2020年10月14日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/atrial-fibrillation-959/a-fib-treatment-reduces-patients-dementia-risk-761975.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.