この20年で、前立腺がん全体の症例は減少しているが、遠隔転移のある前立腺がんの症例は逆に増えているとする報告が、米疾病対策センター(CDC)発行の「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」10月16日号に掲載された。2003~2017年の間に、がんが前立腺から他の部位に転移した症例の割合が倍増したという。CDCによってまとめられた、米国での前立腺がんの罹患率と生存率に関するこの報告は、米国がん統計(USCS)、および全国がん登録プログラム(NPCR)のデータを解析したもの。その結果、2003~2017年の間に、米国では総計308万7,800人が新たに前立腺がんの診断を受けており、年齢調整罹患率は、2003年の10万人当たり155人から2017年の105人に減少したことが判明した。前立腺がんの進行度別に見ると、腫瘍が前立腺内に留まっている限局がん患者の割合が78%から70%に減少したのに対し、原発巣から離れた場所に転移している遠隔転移がん患者の割合は4%から8%に増加していた。また、5年相対生存率について、2001~2005年と2011~2016年で比較した場合、限局がん患者ではいずれも100%であり、遠隔転移がん患者では28.7%から32.3%に向上していた。.さらに、遠隔転移のある前立腺がん生存率の人種差に関する分析も行われた。その結果、2001~2016年の間に、遠隔転移のある前立腺がんの5年生存率は、アジア・太平洋諸島系で最も高く(42.0%)、次いでヒスパニック系(37.2%)、アメリカ先住民とアラスカ先住民(32.2%)、黒人(31.6%)、白人(29.1%)の順であった。.遠隔転移のある前立腺がん患者がなぜ増えているのか。米ハーバード大学医学部放射線腫瘍学教授のAnthony D'Amico氏は、2012年に米国予防医学専門委員会(USPSTF)が、PSA(前立腺特異抗原)検査による定期的な前立腺がんスクリーニングを不要とする勧告を出したことが原因だと考えている。同氏は、「この勧告が出された2012年の時点で、われわれは、2015~2016年頃に前立腺がんの遠隔転移が増加し、その2~3年後の2018~2019年頃に前立腺がんによる死亡率が上昇するものと予想していた」と話し、今回の報告で、この予想が現実となったと指摘する。.D'Amico氏によると、PSAスクリーニング中止の勧告は2018年まで撤回されなかったため、今後も遠隔転移がんの増加傾向が続き、増加が横ばいとなり減少に転じるまでには、あと数年はかかる見込みだという。同氏は、男性はPSA検査を受けるべきであり、PSA値の上昇が認められた場合には、さらに詳しい検査や治療が必要かどうかを、泌尿器科医との話し合いに基づいて判断すべきであるとの考えを示している。その上で、「PSA検査を再度、実施するようになることにより、低リスク前立腺がんの患者が、治療の副作用に関する知識を得た上で、治療を希望するかどうかを医師と話し合うことができるようになる。必要とする人が治療を受けられるようにするべきだ」と述べている。.この研究を率いたCDCがん予防と管理部門のDavid Siegel氏は、「どのような人が前立腺がんになり、生存率はどのくらいかを理解することは、患者にとっては前立腺がんのスクリーニングに関わる意思決定を下す際に、医療従事者にとってはそうした意思決定について患者と話し合う際に重要となる。また、前立腺がんスクリーニングを受けることの勧告を周知させる上でも重要な役割を果たす」と述べている。.なお、今回の研究では、PSA検査の実施傾向については調べられていない。しかしSiegel氏は、PSA検査実施数の減少については、過去の研究で報告されていることを指摘。その上で、「今回報告した、前立腺がんの罹患率に関する傾向に関与していると思われる因子は、PSA検査数の減少を含めて多数ある」と話している。(HealthDay News 2020年10月16日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/prostate-cancer-news-106/more-prostate-cancers-are-being-diagnosed-at-a-later-stage-762216.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
この20年で、前立腺がん全体の症例は減少しているが、遠隔転移のある前立腺がんの症例は逆に増えているとする報告が、米疾病対策センター(CDC)発行の「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」10月16日号に掲載された。2003~2017年の間に、がんが前立腺から他の部位に転移した症例の割合が倍増したという。CDCによってまとめられた、米国での前立腺がんの罹患率と生存率に関するこの報告は、米国がん統計(USCS)、および全国がん登録プログラム(NPCR)のデータを解析したもの。その結果、2003~2017年の間に、米国では総計308万7,800人が新たに前立腺がんの診断を受けており、年齢調整罹患率は、2003年の10万人当たり155人から2017年の105人に減少したことが判明した。前立腺がんの進行度別に見ると、腫瘍が前立腺内に留まっている限局がん患者の割合が78%から70%に減少したのに対し、原発巣から離れた場所に転移している遠隔転移がん患者の割合は4%から8%に増加していた。また、5年相対生存率について、2001~2005年と2011~2016年で比較した場合、限局がん患者ではいずれも100%であり、遠隔転移がん患者では28.7%から32.3%に向上していた。.さらに、遠隔転移のある前立腺がん生存率の人種差に関する分析も行われた。その結果、2001~2016年の間に、遠隔転移のある前立腺がんの5年生存率は、アジア・太平洋諸島系で最も高く(42.0%)、次いでヒスパニック系(37.2%)、アメリカ先住民とアラスカ先住民(32.2%)、黒人(31.6%)、白人(29.1%)の順であった。.遠隔転移のある前立腺がん患者がなぜ増えているのか。米ハーバード大学医学部放射線腫瘍学教授のAnthony D'Amico氏は、2012年に米国予防医学専門委員会(USPSTF)が、PSA(前立腺特異抗原)検査による定期的な前立腺がんスクリーニングを不要とする勧告を出したことが原因だと考えている。同氏は、「この勧告が出された2012年の時点で、われわれは、2015~2016年頃に前立腺がんの遠隔転移が増加し、その2~3年後の2018~2019年頃に前立腺がんによる死亡率が上昇するものと予想していた」と話し、今回の報告で、この予想が現実となったと指摘する。.D'Amico氏によると、PSAスクリーニング中止の勧告は2018年まで撤回されなかったため、今後も遠隔転移がんの増加傾向が続き、増加が横ばいとなり減少に転じるまでには、あと数年はかかる見込みだという。同氏は、男性はPSA検査を受けるべきであり、PSA値の上昇が認められた場合には、さらに詳しい検査や治療が必要かどうかを、泌尿器科医との話し合いに基づいて判断すべきであるとの考えを示している。その上で、「PSA検査を再度、実施するようになることにより、低リスク前立腺がんの患者が、治療の副作用に関する知識を得た上で、治療を希望するかどうかを医師と話し合うことができるようになる。必要とする人が治療を受けられるようにするべきだ」と述べている。.この研究を率いたCDCがん予防と管理部門のDavid Siegel氏は、「どのような人が前立腺がんになり、生存率はどのくらいかを理解することは、患者にとっては前立腺がんのスクリーニングに関わる意思決定を下す際に、医療従事者にとってはそうした意思決定について患者と話し合う際に重要となる。また、前立腺がんスクリーニングを受けることの勧告を周知させる上でも重要な役割を果たす」と述べている。.なお、今回の研究では、PSA検査の実施傾向については調べられていない。しかしSiegel氏は、PSA検査実施数の減少については、過去の研究で報告されていることを指摘。その上で、「今回報告した、前立腺がんの罹患率に関する傾向に関与していると思われる因子は、PSA検査数の減少を含めて多数ある」と話している。(HealthDay News 2020年10月16日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/prostate-cancer-news-106/more-prostate-cancers-are-being-diagnosed-at-a-later-stage-762216.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.