脳卒中後に麻痺がみられる患者に遠隔医療を用いて、自宅でリハビリテーション(以下、リハビリ)を行ってもらったところ、理学療法士による対面でのリハビリを行った患者よりも回復が良好だったとするデータが報告された。復旦大学(中国)のChuancheng Ren氏らが実施した研究の結果であり、詳細は「Neurology」10月27日号に発表された。Ren氏らは、脳卒中患者を、自宅でライブ動画を介した指導を受けながらリハビリを行う群(テレリハビリ群)と、対面でのリハビリを行う群(従来型リハビリ群)にランダムに割付けて、回復の程度を比較した。その結果、12週間後の運動機能は、従来型リハビリ群よりもテレリハビリ群の方が高かったという。Ren氏らは「自宅でも参加できるという利便性の高さが、テレリハビリ群でのプログラム順守率を押し上げたのかもしれない。それが、従来型リハビリ群よりもテレリハビリ群の運動機能の改善幅が大きかった要因の一つである可能性がある」と考察している。.一方、今回の報告を受けて、「遠隔医療を利用している患者に、対面診療を行っている患者と同等の治療効果が見られること自体は驚きでない。その考え方をリハビリにも当てはめるのは、理に適っている」と話すのは、米バージニア大学のAndrew Southerland氏だ。同氏は今回の研究には関与していないが、「医療機関に行くための移動、階段の昇り降りなどが負担になる人も多い中、遠隔医療は治療機会を広げる手段の一つとなり得る」と説明。また、「医療機関で行うよりも自宅の方が、リハビリという医療行為を受け入れやすくなるという面もあるのではないか」との見方を示している。.この研究の対象者は、2017年7月~2019年1月に復旦大学付属第五人民医院で脳卒中治療を受け、片麻痺が残った52人。このうち半数は自宅で実施するテレリハビリのプログラムに参加し、残る半数は従来型の外来でのリハビリのプログラムに参加した。リハビリのセッションは、両群ともに作業療法と理学療法で構成され、1回当たり60分間かけて行われた。.12週間のリハビリ終了時点で、上肢・下肢の運動機能の評価スコア(Fugl-meyer Assessment;FMA)は、テレリハビリ群の方が従来型リハビリ群よりも有意に高かった(P=0.011)。また脳内一次運動野の安静時機能結合(M1-M1 rsFC)は、テレリハビリ群で有意に強化されていた(P=0.031)。M1-M1 rsFCの変化はFMAの変化と有意な正相関が認められた(P=0.018)。.ただしRen氏は、この研究の限界点として、リハビリを全く受けない対照群を設定しなかった点を挙げている。自然経過で麻痺が回復する可能性もあるため、介入を全く行わない対照群を設定していれば、実際の介入効果をより正確に評価できていたと考えられる。.前出のSoutherland氏は、テレリハビリの実施に必要な条件として、患者が身体的にリハビリを行える状態であることが前提であり、かつ、「患者のサポートに当たれる介護者や家族の存在も、テレリハビリの成功に不可欠」としている。その上で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックをきっかけに、遠隔医療が浸透している現状を指摘。「遠隔医療の一層の普及には、保険償還システムなどの面での環境整備が重要であることを、政策立案者に認識してもらう必要がある」との見解を示している。(HealthDay News 2020年10月21日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/heart-stroke-related-stroke-353/post-stroke-rehab-at-home-may-work-best-762301.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.