余暇時間の身体活動は認知症リスクを低下させることが知られているが、職業上の高強度の身体活動は、認知症リスクをかえって増大させる可能性のあることが報告された。コペンハーゲン大学(デンマーク)のKirsten Nabe-Nielsen氏らの研究結果であり、詳細は「Scandinavian Journal of Medicine and Science in Sports」10月10日オンライン版に掲載された。WHO(世界保健機関)は、認知症のリスク抑制のために定期的な運動を推奨している。しかし、余暇時間の運動ではなく職業上の高強度身体活動、つまり肉体労働にも認知症抑制効果があるか否かは明らかでなかった。Nabe-Nielsen氏らは、コペンハーゲンに拠点を置く14社の男性労働者を対象に行われている縦断研究のデータを用いて、肉体労働と認知症リスクの関連を解析した。.解析の対象は、1970~1971年に登録された、ベースライン時年齢40~59歳の男性労働者4,721人で、2016年まで追跡した。8万6,557人年の追跡中に697人が認知症を発症。年齢の他、アンケートの回答から把握した、社会経済的地位、婚姻状況、および心理的ストレスで調整後、座業中心の労働者を基準として認知症リスクを比較した。.その結果、職業上の身体活動量が多い労働者の認知症の発生率比(IRR)は1.48(95%信頼区間1.05~2.10)であり、有意に高リスクであることが明らかになった。なお、この研究においても既報と同様に、余暇時間の身体活動が多い人では、認知症のリスクが低いという有意な関連が認められた。また同大学が最近行った別の研究からは、健康的な生活様式が認知症リスクを半減させることが示されている。これらの結果から、余暇時間の身体活動と職業上の身体活動は、認知症リスクに対して異なる影響をもたらすと考えられた。.Nabe-Nielsen氏は、「認知症の予防のための身体活動は"質の高い"ものでなくてはならず、きつい肉体労働はそれに該当しないことが示唆された。職業上の身体活動は余暇時間に行う身体活動と正反対の影響があると考えられ、両者を区別しなければならない」と述べている。また、職業上の身体活動と認知症の関連について、さらなる研究の必要性を指摘している。.一方、論文の共著者の一人であるデンマーク国立労働環境研究センターのAndreas Holtermann氏は、「多くの職場では既に労働者の健康維持のための施策を取り入れている。問題は、その制度の利用者が、学歴が高くて機智に富んだ層に偏っていることだ。学歴が低い労働者は、肉体労働に従事していることが多いにもかかわらず、過体重や身体の痛み、あるいは体調不良などを抱えこんでいることが少なくない」と指摘。「肉体労働に従事している人が70歳まで仕事を続けたいのなら、例えば重い物を持ち上げるのを回避するといった措置だけでは不十分だ。余暇時間の身体活動や筋力トレーニングなど、認知症リスクの低減につながる対策を検討する必要があるだろう」と、同氏は語っている。(HealthDay News 2020年11月2日).https://consumer.healthday.com/to-prevent-dementia-not-all-physical-activity-is-created-equal-2648533302.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
余暇時間の身体活動は認知症リスクを低下させることが知られているが、職業上の高強度の身体活動は、認知症リスクをかえって増大させる可能性のあることが報告された。コペンハーゲン大学(デンマーク)のKirsten Nabe-Nielsen氏らの研究結果であり、詳細は「Scandinavian Journal of Medicine and Science in Sports」10月10日オンライン版に掲載された。WHO(世界保健機関)は、認知症のリスク抑制のために定期的な運動を推奨している。しかし、余暇時間の運動ではなく職業上の高強度身体活動、つまり肉体労働にも認知症抑制効果があるか否かは明らかでなかった。Nabe-Nielsen氏らは、コペンハーゲンに拠点を置く14社の男性労働者を対象に行われている縦断研究のデータを用いて、肉体労働と認知症リスクの関連を解析した。.解析の対象は、1970~1971年に登録された、ベースライン時年齢40~59歳の男性労働者4,721人で、2016年まで追跡した。8万6,557人年の追跡中に697人が認知症を発症。年齢の他、アンケートの回答から把握した、社会経済的地位、婚姻状況、および心理的ストレスで調整後、座業中心の労働者を基準として認知症リスクを比較した。.その結果、職業上の身体活動量が多い労働者の認知症の発生率比(IRR)は1.48(95%信頼区間1.05~2.10)であり、有意に高リスクであることが明らかになった。なお、この研究においても既報と同様に、余暇時間の身体活動が多い人では、認知症のリスクが低いという有意な関連が認められた。また同大学が最近行った別の研究からは、健康的な生活様式が認知症リスクを半減させることが示されている。これらの結果から、余暇時間の身体活動と職業上の身体活動は、認知症リスクに対して異なる影響をもたらすと考えられた。.Nabe-Nielsen氏は、「認知症の予防のための身体活動は"質の高い"ものでなくてはならず、きつい肉体労働はそれに該当しないことが示唆された。職業上の身体活動は余暇時間に行う身体活動と正反対の影響があると考えられ、両者を区別しなければならない」と述べている。また、職業上の身体活動と認知症の関連について、さらなる研究の必要性を指摘している。.一方、論文の共著者の一人であるデンマーク国立労働環境研究センターのAndreas Holtermann氏は、「多くの職場では既に労働者の健康維持のための施策を取り入れている。問題は、その制度の利用者が、学歴が高くて機智に富んだ層に偏っていることだ。学歴が低い労働者は、肉体労働に従事していることが多いにもかかわらず、過体重や身体の痛み、あるいは体調不良などを抱えこんでいることが少なくない」と指摘。「肉体労働に従事している人が70歳まで仕事を続けたいのなら、例えば重い物を持ち上げるのを回避するといった措置だけでは不十分だ。余暇時間の身体活動や筋力トレーニングなど、認知症リスクの低減につながる対策を検討する必要があるだろう」と、同氏は語っている。(HealthDay News 2020年11月2日).https://consumer.healthday.com/to-prevent-dementia-not-all-physical-activity-is-created-equal-2648533302.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.