不眠症の詳細な自然経過が報告された。成人約3,000人を5年間にわたって追跡した結果、ベースライン時に不眠症だった人の37.5%が5年後も同じ症状を抱えており、不眠症でなかった人の13.9%が新たに不眠症を発症したという。ラヴァル大学(カナダ)のCharles Morin氏らの研究結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に11月6日掲載された。不眠症の症状としては、眠りにつくのに時間がかかる、夜中に何度も目が覚める、起床予定時刻よりも早く目が覚めるなどが挙げられる。Morin氏によると、「このような症状が続くと、さまざまな健康上の問題が起こり得ることが既に明らかになっている」という。ただ、不眠症は決して珍しくない疾患であるにもかかわらず、どのような経過をたどるのかは明確にはなっていない。.同氏らは、不眠症の自然経過とともに、不眠症の新規発症率を明らかにするため、今回の検討を行った。結果について、「不眠症の症状が継続している人が、これほどまでに多いとは予想外だった。不眠症の多くは一時的な問題によるもので、放置しても自然に改善すると考えられてきた。しかし実際はその逆であり、症状の持続する頻度が極めて高いことが示された」と語っている。不眠症の早期発見と早期治療の重要性を示した結果と言える。.この研究は、3,073人の成人を対象とするコホート研究として実施された。対象者の年齢は18〜95歳(平均48.1±15.0歳)で、女性が62.2%であり、睡眠時無呼吸症候群などの不眠症以外の睡眠関連疾患の罹患者は除外されていた。ベースラインにおいて、不眠症の診断基準を満たす「不眠症群」、不眠症状や昼間の眠気などが全く該当しない「不眠症でない群」、および診断基準項目の一部が該当する「亜症候性不眠症群」の3群に分類。それぞれ538人(17.5%)、1,717人(55.9%)、818人(26.6%)が該当した。.5年間の追跡中に、不眠症でない群の13.9%が不眠症を発症した。その発症率は、男性よりも女性の方が有意に高かった(10.1%対17.6%)。また、不眠症群と亜症候性不眠症群の合計の37.5%は、5年後にも不眠症が持続していた。不眠症の寛解率は、亜症候性不眠症群の方が不眠症群よりも高かった(5年後時点で73.6%対40.9%)。.米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部教授で米国睡眠医学会(AASM)の役員でもあるJennifer Martin氏によると、不眠症は抑うつや不安、高血圧、糖尿病、心疾患、自殺といったさまざまな問題を引き起こしたり、これらの問題とともに併存することがあるという。「私が臨床で出会う患者のほとんどは、受診時点で既に不眠症の症状を長年抱えてきた人たちだ。今回の報告は、われわれ医療者が、患者を待つのではなく、他疾患で受診中の患者に睡眠の悩みについて尋ねるべきであることを教えてくれる研究の一つだ」とMartin氏は話す。.Martin氏やMorin氏は、不眠症に対するファーストライン治療として認知行動療法(CBT)に期待を表している。CBTは、睡眠習慣を見直して改善するための精神療法の一種である。「不眠症があると睡眠のことばかり考え、『眠れないかもしれない』という不安や昼間の活動への影響で頭がいっぱいになってしまうことがある」。Morin氏はそのように指摘した上で、「CBTのカウンセリングは不眠症患者の行動や思考パターンを変えるのに極めて有用」との見解を示している。またMartin氏によると、CBTを受けた患者の約70%に効果が認められ、薬物療法とは異なり治療を終了した後も良好な状態が維持されやすいという。.なお、不眠症を治療することで、併存疾患の治療状態が改善し健康リスクが低減するか否かは今のところ不明だ。また、CBTを施行できる医療者も、現状では限られている。さらに今後は、不眠症のタイプ別に最善の治療法を確立するための研究も必要であると、Morin氏は指摘している。(HealthDay News 2020年11月10日).https://consumer.healthday.com/11-10-e-insomnia-is-tough-to-shake-2648639283.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
不眠症の詳細な自然経過が報告された。成人約3,000人を5年間にわたって追跡した結果、ベースライン時に不眠症だった人の37.5%が5年後も同じ症状を抱えており、不眠症でなかった人の13.9%が新たに不眠症を発症したという。ラヴァル大学(カナダ)のCharles Morin氏らの研究結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に11月6日掲載された。不眠症の症状としては、眠りにつくのに時間がかかる、夜中に何度も目が覚める、起床予定時刻よりも早く目が覚めるなどが挙げられる。Morin氏によると、「このような症状が続くと、さまざまな健康上の問題が起こり得ることが既に明らかになっている」という。ただ、不眠症は決して珍しくない疾患であるにもかかわらず、どのような経過をたどるのかは明確にはなっていない。.同氏らは、不眠症の自然経過とともに、不眠症の新規発症率を明らかにするため、今回の検討を行った。結果について、「不眠症の症状が継続している人が、これほどまでに多いとは予想外だった。不眠症の多くは一時的な問題によるもので、放置しても自然に改善すると考えられてきた。しかし実際はその逆であり、症状の持続する頻度が極めて高いことが示された」と語っている。不眠症の早期発見と早期治療の重要性を示した結果と言える。.この研究は、3,073人の成人を対象とするコホート研究として実施された。対象者の年齢は18〜95歳(平均48.1±15.0歳)で、女性が62.2%であり、睡眠時無呼吸症候群などの不眠症以外の睡眠関連疾患の罹患者は除外されていた。ベースラインにおいて、不眠症の診断基準を満たす「不眠症群」、不眠症状や昼間の眠気などが全く該当しない「不眠症でない群」、および診断基準項目の一部が該当する「亜症候性不眠症群」の3群に分類。それぞれ538人(17.5%)、1,717人(55.9%)、818人(26.6%)が該当した。.5年間の追跡中に、不眠症でない群の13.9%が不眠症を発症した。その発症率は、男性よりも女性の方が有意に高かった(10.1%対17.6%)。また、不眠症群と亜症候性不眠症群の合計の37.5%は、5年後にも不眠症が持続していた。不眠症の寛解率は、亜症候性不眠症群の方が不眠症群よりも高かった(5年後時点で73.6%対40.9%)。.米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部教授で米国睡眠医学会(AASM)の役員でもあるJennifer Martin氏によると、不眠症は抑うつや不安、高血圧、糖尿病、心疾患、自殺といったさまざまな問題を引き起こしたり、これらの問題とともに併存することがあるという。「私が臨床で出会う患者のほとんどは、受診時点で既に不眠症の症状を長年抱えてきた人たちだ。今回の報告は、われわれ医療者が、患者を待つのではなく、他疾患で受診中の患者に睡眠の悩みについて尋ねるべきであることを教えてくれる研究の一つだ」とMartin氏は話す。.Martin氏やMorin氏は、不眠症に対するファーストライン治療として認知行動療法(CBT)に期待を表している。CBTは、睡眠習慣を見直して改善するための精神療法の一種である。「不眠症があると睡眠のことばかり考え、『眠れないかもしれない』という不安や昼間の活動への影響で頭がいっぱいになってしまうことがある」。Morin氏はそのように指摘した上で、「CBTのカウンセリングは不眠症患者の行動や思考パターンを変えるのに極めて有用」との見解を示している。またMartin氏によると、CBTを受けた患者の約70%に効果が認められ、薬物療法とは異なり治療を終了した後も良好な状態が維持されやすいという。.なお、不眠症を治療することで、併存疾患の治療状態が改善し健康リスクが低減するか否かは今のところ不明だ。また、CBTを施行できる医療者も、現状では限られている。さらに今後は、不眠症のタイプ別に最善の治療法を確立するための研究も必要であると、Morin氏は指摘している。(HealthDay News 2020年11月10日).https://consumer.healthday.com/11-10-e-insomnia-is-tough-to-shake-2648639283.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.