脊髄損傷に伴い体に麻痺が残った患者を対象としたランダム化比較試験の結果、外骨格型のアシスト付きスーツ(以下、外骨格)の装着が患者の歩行補助に有効かつ安全であることが示された。同試験は米ケスラー財団のティム・アンド・キャロライン・レイノルズ脊髄刺激センターのGail Forrest氏らが実施したもので、詳細は「Frontiers in Robotics and AI」に8月4日掲載された。この試験には、脊髄損傷を原因とする四肢麻痺、または対麻痺(両下肢の麻痺)を有する患者50人が参加した。参加者には、完全に運動機能を失っている人から、ある程度の動作能力が残っている人まで、さまざまな症状の患者が含まれていた。Forrest氏らはこの試験の目的を、脊髄損傷患者向けの外骨格の補助による歩行プログラムに関するガイドラインを確立することとしている。同氏らはさらに、外骨格を装着した状態で歩行スキルを身に付け、目標とする速度で歩けるようになるために必要な歩行訓練のセッション数も明らかにしたいと考えていたとも述べている。.試験参加者は、外骨格を装着しての歩行訓練を1週間に3回、12週間にわたって計36セッション行う群と通常の活動を行う群のいずれかに割り付けられた。訓練終了後は、介入を行う群を入れ替えて、外骨格を装着した群では同じく12週間にわたり36セッションの訓練を実施した。参加者の移動能力は、セッションの12回目、24回目、36回目に、1)10m歩行、2)6分間歩行、3)Timed Up & Go Test(TUG;椅子から立ち上がって歩き、方向転換して元の場所まで戻って再び座る検査)の3種類の検査を行って評価した。使用した外骨格はEkso GT(Ekso Bionics社製)とReWalk(ReWalk Robotics社製)の2種類だった。.その結果、試験参加者の過半数が、外骨格を装着した状態での移動を行えるようになった。12回目のセッション終了後には、事前に設定していた10m歩行、6分間歩行、TUGの目標値を達成できた患者の割合が、それぞれ62%(31人)、70%(35人)、72%(36人)に達したことが明らかになった。対象者の歩行能力は、36回目のセッション終了後にはさらに改善し、目標値を達成できた患者の割合はそれぞれ80%(40人)、82%(41人)、84%(42人)に上った。.以上の結果を踏まえてForrest氏は、「試験に参加した患者では、脊髄損傷の程度や麻痺のレベル(完全麻痺か不完全麻痺か)、損傷期間とは関係なく、外骨格による歩行能力の改善が認められた。外骨格を使うことで、脊髄損傷が原因で神経障害を抱えている幅広い層の患者の移動能力が改善され得ることを示した研究結果だと言える」と評価している。その上で、「脊髄損傷患者のリハビリテーションに外骨格を導入する際に、今回得た知見を活用できるのではないか」との期待も表している。(HealthDay News 2020年11月18日).https://consumer.healthday.com/b-11-18-exoskeleton-helps-some-walk-again-2648889426.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
脊髄損傷に伴い体に麻痺が残った患者を対象としたランダム化比較試験の結果、外骨格型のアシスト付きスーツ(以下、外骨格)の装着が患者の歩行補助に有効かつ安全であることが示された。同試験は米ケスラー財団のティム・アンド・キャロライン・レイノルズ脊髄刺激センターのGail Forrest氏らが実施したもので、詳細は「Frontiers in Robotics and AI」に8月4日掲載された。この試験には、脊髄損傷を原因とする四肢麻痺、または対麻痺(両下肢の麻痺)を有する患者50人が参加した。参加者には、完全に運動機能を失っている人から、ある程度の動作能力が残っている人まで、さまざまな症状の患者が含まれていた。Forrest氏らはこの試験の目的を、脊髄損傷患者向けの外骨格の補助による歩行プログラムに関するガイドラインを確立することとしている。同氏らはさらに、外骨格を装着した状態で歩行スキルを身に付け、目標とする速度で歩けるようになるために必要な歩行訓練のセッション数も明らかにしたいと考えていたとも述べている。.試験参加者は、外骨格を装着しての歩行訓練を1週間に3回、12週間にわたって計36セッション行う群と通常の活動を行う群のいずれかに割り付けられた。訓練終了後は、介入を行う群を入れ替えて、外骨格を装着した群では同じく12週間にわたり36セッションの訓練を実施した。参加者の移動能力は、セッションの12回目、24回目、36回目に、1)10m歩行、2)6分間歩行、3)Timed Up & Go Test(TUG;椅子から立ち上がって歩き、方向転換して元の場所まで戻って再び座る検査)の3種類の検査を行って評価した。使用した外骨格はEkso GT(Ekso Bionics社製)とReWalk(ReWalk Robotics社製)の2種類だった。.その結果、試験参加者の過半数が、外骨格を装着した状態での移動を行えるようになった。12回目のセッション終了後には、事前に設定していた10m歩行、6分間歩行、TUGの目標値を達成できた患者の割合が、それぞれ62%(31人)、70%(35人)、72%(36人)に達したことが明らかになった。対象者の歩行能力は、36回目のセッション終了後にはさらに改善し、目標値を達成できた患者の割合はそれぞれ80%(40人)、82%(41人)、84%(42人)に上った。.以上の結果を踏まえてForrest氏は、「試験に参加した患者では、脊髄損傷の程度や麻痺のレベル(完全麻痺か不完全麻痺か)、損傷期間とは関係なく、外骨格による歩行能力の改善が認められた。外骨格を使うことで、脊髄損傷が原因で神経障害を抱えている幅広い層の患者の移動能力が改善され得ることを示した研究結果だと言える」と評価している。その上で、「脊髄損傷患者のリハビリテーションに外骨格を導入する際に、今回得た知見を活用できるのではないか」との期待も表している。(HealthDay News 2020年11月18日).https://consumer.healthday.com/b-11-18-exoskeleton-helps-some-walk-again-2648889426.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.