睡眠薬の使用とメタボリックシンドローム(MetS)の関連が明らかになった。睡眠薬を使用している短時間睡眠の人でMetSの頻度が有意に高いという。自治医科大学が地域住民対象に動脈硬化危険因子の検証目的で行っている「JMS-IIコホート研究」のベースラインデータを解析した結果だ。同大学地域医療学センター公衆衛生学の石川鎮清氏らの論文が、「Journal of Epidemiology」に11月7日掲載された。疫学研究からは、睡眠時間がMetSや心血管疾患の有病率と相関することが示されている。一方、睡眠障害に対し睡眠薬を使用することが、心血管転帰にどのような影響を及ぼすのかは結論が得られていない。睡眠薬の使用によって睡眠時間が増えたり睡眠の質が改善することで、血圧や血糖に好ましい影響を与えるとする報告があるのとは反対に、睡眠薬の使用と心血管イベントの増加の関連を指摘する報告もある。そこで石川氏らは、JMS-IIコホート研究のデータを用いて、睡眠薬の使用とMetS有病率との関連を検討した。.検討の対象は、国内13カ所で健診を受けた28~95歳の6,153人(平均年齢63.8±11.2歳で、女性54.4%)。MetSの判定には、米国コレステロール教育プログラム治療パネルIII(NCEP ATP III)の基準を用いた。ただし腹囲については日本肥満学会の基準値(男性85cm以上、女性90cm以上)とした。.対象者のうち睡眠薬を使用しているのは858人(13.9%)だった。睡眠薬使用群と非使用群を比較すると、使用群は高齢で中性脂肪値と抑うつレベルが高く、脳卒中とがんの既往者が多いという有意差が認められた。ただしMetSの有病率や、MetS構成因子である血圧高値、耐糖能異常、高中性脂肪血症、および腹部肥満の頻度に有意差はなかった。.次に、睡眠時間6時間未満、6~7時間、7~8時間、8~9時間、9時間以上に分類。年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、婚姻状況、教育歴、心筋梗塞・脳卒中・がんの既往および抑うつ症状の有無などの交絡因子で調整し、MetS有病率を検討。その結果、睡眠薬使用の有無にかかわりなく睡眠時間が6~7時間の群でMetS有病率が最も低く、睡眠時間が短くても長くてもMetS有病率が高いことが分かった。.また睡眠時間が短い場合には、睡眠薬使用群においてMetS有病率がより高く、非使用群との間に有意差が存在した。具体的には、睡眠時間6時間未満の群では睡眠薬使用群が非使用群に対し、MetSの調整オッズ比3.08(95%信頼区間1.29~7.34)であり、有病率が3倍高かった。睡眠時間が6時間以上の場合は、睡眠薬使用の有無によるMetS有病率の差は有意でなかった。.この結果から著者らは、「睡眠時間が短い睡眠薬使用者は、睡眠時間が短い非使用者よりもMetS有病率が3倍高い。よって短時間睡眠の睡眠薬使用者では、代謝性疾患や動脈硬化進展へのリスクに、より注意が必要と考えられる」と結論付けている。なお、睡眠時間が短い人でのみ、睡眠薬使用によるMetS有病率が有意に高いことの背景については、短時間睡眠者は抑うつレベルが高く、抑うつはMetSのリスク因子であり、かつ抑うつレベルが高いと睡眠薬に対する反応が低下することなどの関連を考察している。(HealthDay News 2020年12月7日).Abstract/Full Texthttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20200361/_article.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
睡眠薬の使用とメタボリックシンドローム(MetS)の関連が明らかになった。睡眠薬を使用している短時間睡眠の人でMetSの頻度が有意に高いという。自治医科大学が地域住民対象に動脈硬化危険因子の検証目的で行っている「JMS-IIコホート研究」のベースラインデータを解析した結果だ。同大学地域医療学センター公衆衛生学の石川鎮清氏らの論文が、「Journal of Epidemiology」に11月7日掲載された。疫学研究からは、睡眠時間がMetSや心血管疾患の有病率と相関することが示されている。一方、睡眠障害に対し睡眠薬を使用することが、心血管転帰にどのような影響を及ぼすのかは結論が得られていない。睡眠薬の使用によって睡眠時間が増えたり睡眠の質が改善することで、血圧や血糖に好ましい影響を与えるとする報告があるのとは反対に、睡眠薬の使用と心血管イベントの増加の関連を指摘する報告もある。そこで石川氏らは、JMS-IIコホート研究のデータを用いて、睡眠薬の使用とMetS有病率との関連を検討した。.検討の対象は、国内13カ所で健診を受けた28~95歳の6,153人(平均年齢63.8±11.2歳で、女性54.4%)。MetSの判定には、米国コレステロール教育プログラム治療パネルIII(NCEP ATP III)の基準を用いた。ただし腹囲については日本肥満学会の基準値(男性85cm以上、女性90cm以上)とした。.対象者のうち睡眠薬を使用しているのは858人(13.9%)だった。睡眠薬使用群と非使用群を比較すると、使用群は高齢で中性脂肪値と抑うつレベルが高く、脳卒中とがんの既往者が多いという有意差が認められた。ただしMetSの有病率や、MetS構成因子である血圧高値、耐糖能異常、高中性脂肪血症、および腹部肥満の頻度に有意差はなかった。.次に、睡眠時間6時間未満、6~7時間、7~8時間、8~9時間、9時間以上に分類。年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、婚姻状況、教育歴、心筋梗塞・脳卒中・がんの既往および抑うつ症状の有無などの交絡因子で調整し、MetS有病率を検討。その結果、睡眠薬使用の有無にかかわりなく睡眠時間が6~7時間の群でMetS有病率が最も低く、睡眠時間が短くても長くてもMetS有病率が高いことが分かった。.また睡眠時間が短い場合には、睡眠薬使用群においてMetS有病率がより高く、非使用群との間に有意差が存在した。具体的には、睡眠時間6時間未満の群では睡眠薬使用群が非使用群に対し、MetSの調整オッズ比3.08(95%信頼区間1.29~7.34)であり、有病率が3倍高かった。睡眠時間が6時間以上の場合は、睡眠薬使用の有無によるMetS有病率の差は有意でなかった。.この結果から著者らは、「睡眠時間が短い睡眠薬使用者は、睡眠時間が短い非使用者よりもMetS有病率が3倍高い。よって短時間睡眠の睡眠薬使用者では、代謝性疾患や動脈硬化進展へのリスクに、より注意が必要と考えられる」と結論付けている。なお、睡眠時間が短い人でのみ、睡眠薬使用によるMetS有病率が有意に高いことの背景については、短時間睡眠者は抑うつレベルが高く、抑うつはMetSのリスク因子であり、かつ抑うつレベルが高いと睡眠薬に対する反応が低下することなどの関連を考察している。(HealthDay News 2020年12月7日).Abstract/Full Texthttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20200361/_article.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.