中年期における家庭や職場での自分の役割に対する感じ方が、心血管の健康状態に影響を及ぼす可能性があるとする研究結果が、米ピッツバーグ大学のAndrea Leigh Stewart氏らにより「Journal of the American Heart Association」12月15日号に発表された。仕事でストレスを抱えていたり、家庭における介護者、母親、妻としての役割にストレスを感じていたりする女性は、高血圧や過体重、不健康な食習慣となるリスクが高いことが明らかになったのだ。一方、やりがいを感じながら自分の役割を果たしている女性は、身体活動レベルが高く、喫煙習慣のない人の割合が大幅に高かった。こうした要因は、心血管の健康状態にも良い影響を与える可能性があるという。.Stewart氏らは今回、42~61歳の女性2,764人を対象に、女性たちが感じている社会的役割に対するストレスややりがいが、心血管の健康状態を良好に保つ能力に与える影響について検討した。心血管の健康状態は、米国心臓協会(AHA)が提唱する"Life's Simple 7"の7つの指標(BMI、血圧、血糖値、コレステロール値、運動、食事、喫煙)に基づき評価した。7つの指標全てのデータが集められたのは、研究開始時を除くと、9回に及ぶ追跡調査のうちの5回目のみで、その際の対象者数は1,694人(平均年齢51歳)だった。.その結果、自分の役割についてやりがいを感じていた女性では、中強度~高強度の運動を1週間当たり2時間以上行っている確率が58%高く、喫煙していない確率も30%高かった。なお、連邦政府のガイドラインでは、成人に対して週に150分以上の中強度~高強度の有酸素運動、または75分以上の高強度の有酸素運動のいずれか、あるいはそれに相当する運動を組み合わせて行うことを推奨している。.また、自己評価によるストレスのスコアが1点増えるごとに、至適血圧を維持する確率が13%、BMIを30未満に維持する確率が10%、健康的な食生活を送る確率が18%、それぞれ低下するとの解析結果も得られた。.ただし、ストレスややりがいが女性の心血管の健康に関わる行動に影響を与えるのか、あるいはそのような行動が自分の役割に対して女性が抱く気持ちに影響を与えるのかについては、はっきりとしたことは分かっていない。Stewart氏も、「この研究は観察研究であるため、社会的な役割に対してやりがいを感じている女性は、定期的な運動を行う意欲が高いのか、あるいは社会的な役割そのものが女性たちを活動的にさせるのかについての因果関係までは分からない」と述べている。.中年期は人々の健康、特に女性の健康にとって重要な時期だ。「女性の場合、身体的および精神的な変化の現れに子育てや高齢の親の介護が重なり、さらに、夫との関係や仕事に変化が生じることもある。しかし、中年期の経験は、身体疾患や障害が起こりやすくなる高齢期の健康状態に直接的な影響を与える」とStewart氏は言う。.2017年のAHAの勧告によると、"Life's Simple 7"の7つのリスク因子の適切な管理は、心血管の健康状態の維持だけでなく、脳の健康にも良い影響を与え、認知症の予防、あるいは発症を遅らせることにもつながるとされている。.今回の研究には関与していない専門家の一人で、米マイアミ大学のHannah Gardener氏は、「過去数十年間に報告された研究では、心血管の健康に良い影響を与えるものは、脳にも良いことが示されている」と指摘する。また、今回の研究報告を受けて、「やりがいのある役割を担うことで、ストレスによる健康への悪影響をある程度緩和できる可能性がある」との見方を示している。(American Heart Association News 2020年12月11日).https://consumer.healthday.com/aha-news-feeling-stressed-about-your-role-in-life-for-women-that-could-be-a-health-risk-2649451443.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
中年期における家庭や職場での自分の役割に対する感じ方が、心血管の健康状態に影響を及ぼす可能性があるとする研究結果が、米ピッツバーグ大学のAndrea Leigh Stewart氏らにより「Journal of the American Heart Association」12月15日号に発表された。仕事でストレスを抱えていたり、家庭における介護者、母親、妻としての役割にストレスを感じていたりする女性は、高血圧や過体重、不健康な食習慣となるリスクが高いことが明らかになったのだ。一方、やりがいを感じながら自分の役割を果たしている女性は、身体活動レベルが高く、喫煙習慣のない人の割合が大幅に高かった。こうした要因は、心血管の健康状態にも良い影響を与える可能性があるという。.Stewart氏らは今回、42~61歳の女性2,764人を対象に、女性たちが感じている社会的役割に対するストレスややりがいが、心血管の健康状態を良好に保つ能力に与える影響について検討した。心血管の健康状態は、米国心臓協会(AHA)が提唱する"Life's Simple 7"の7つの指標(BMI、血圧、血糖値、コレステロール値、運動、食事、喫煙)に基づき評価した。7つの指標全てのデータが集められたのは、研究開始時を除くと、9回に及ぶ追跡調査のうちの5回目のみで、その際の対象者数は1,694人(平均年齢51歳)だった。.その結果、自分の役割についてやりがいを感じていた女性では、中強度~高強度の運動を1週間当たり2時間以上行っている確率が58%高く、喫煙していない確率も30%高かった。なお、連邦政府のガイドラインでは、成人に対して週に150分以上の中強度~高強度の有酸素運動、または75分以上の高強度の有酸素運動のいずれか、あるいはそれに相当する運動を組み合わせて行うことを推奨している。.また、自己評価によるストレスのスコアが1点増えるごとに、至適血圧を維持する確率が13%、BMIを30未満に維持する確率が10%、健康的な食生活を送る確率が18%、それぞれ低下するとの解析結果も得られた。.ただし、ストレスややりがいが女性の心血管の健康に関わる行動に影響を与えるのか、あるいはそのような行動が自分の役割に対して女性が抱く気持ちに影響を与えるのかについては、はっきりとしたことは分かっていない。Stewart氏も、「この研究は観察研究であるため、社会的な役割に対してやりがいを感じている女性は、定期的な運動を行う意欲が高いのか、あるいは社会的な役割そのものが女性たちを活動的にさせるのかについての因果関係までは分からない」と述べている。.中年期は人々の健康、特に女性の健康にとって重要な時期だ。「女性の場合、身体的および精神的な変化の現れに子育てや高齢の親の介護が重なり、さらに、夫との関係や仕事に変化が生じることもある。しかし、中年期の経験は、身体疾患や障害が起こりやすくなる高齢期の健康状態に直接的な影響を与える」とStewart氏は言う。.2017年のAHAの勧告によると、"Life's Simple 7"の7つのリスク因子の適切な管理は、心血管の健康状態の維持だけでなく、脳の健康にも良い影響を与え、認知症の予防、あるいは発症を遅らせることにもつながるとされている。.今回の研究には関与していない専門家の一人で、米マイアミ大学のHannah Gardener氏は、「過去数十年間に報告された研究では、心血管の健康に良い影響を与えるものは、脳にも良いことが示されている」と指摘する。また、今回の研究報告を受けて、「やりがいのある役割を担うことで、ストレスによる健康への悪影響をある程度緩和できる可能性がある」との見方を示している。(American Heart Association News 2020年12月11日).https://consumer.healthday.com/aha-news-feeling-stressed-about-your-role-in-life-for-women-that-could-be-a-health-risk-2649451443.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.