慢性の非特異的腰痛に対する運動療法を、患者の状態に応じ個別化することで、より大きな症状改善を期待できることが分かった。米ワシントン大学のLinda Van Dillen氏らが行ったランダム化比較試験の結果であり、詳細は「JAMA Neurology」に12月28日掲載された。Van Dillen氏は、「腰痛は非常に一般的な症状であり、米国成人における慢性疼痛の原因として最も頻繁に見られ、かつ身体機能障害の最大の原因」と解説する。また、「成人の少なくとも60~80%が生涯に一度は患い、そのほぼ半数は30歳までに大きなエピソードを経験することになる」という。.このように多くの人のQOL(生活の質)に多大な影響を及ぼす腰痛だが、それに対する効果的な標準治療は確立されておらず、一定の効果があるとされる運動療法についても、どのようなタイプの運動が最も良いのか分かっていない。そこで同氏らは、慢性腰痛の中でも明らかな原因を特定できない「非特異的腰痛」に焦点を当て、運動療法を個別化することが症状の改善につながるかを検討した。.研究デザインは、単施設前向き単盲検ランダム化比較試験。対象は、12カ月以上症状が持続していて機能障害度(modified oswestry disability questionnaire;MODQ)スコアが20点以上の18~60歳の非特異的腰痛患者154人。全体を二分し、1群は、腰痛に対し筋力と柔軟性の維持・改善を目的として一般的に行われている運動療法(strength and flexibility exercise;SFE)を行う群とした。他の1群は、患者の姿勢や動きを評価して痛みの少ない動作を特定し指導するという、個別化した運動技能訓練(motor skill training;MST)を行う群とした。.両群ともに週に1時間のトレーニングを6週間実施。この介入の直後と介入終了から6カ月後、12カ月後にMODQスコアを評価した。また各群の対象者の約半数に対しては、ブースター効果を期待して介入終了6カ月後に追加トレーニングを最大3回施行した。.介入期間中に5人が脱落したため、効果判定は149人(SFE群75人、MST群74人)を対象に行われた。MODQスコアの推移を見ると、SFE群はベースライン時が32.6±9.4点、介入終了時が21.2±10.7点、介入終了6カ月後が18.2±10.5点、12カ月後が16.7±11.3点。一方、MST群は同順に32.3±10.2点、12.8±10.7点、12.0±12.6点、10.8±11.3点であり、両群ともに改善していた。.両群のMODQスコアを比較すると、ベースライン時は同等だったが、介入終了時点においてはMST群の方が7.9点(95%信頼区間4.7~11.0)低く、有意差が認められた(P<0.001)。また追跡期間中は常にMST群がSFE群より低値で推移し、介入終了6カ月後もMST群の方が5.6点(同2.1~9.1、P=0.002)低く、12カ月後も5.7点(同2.2~9.1、P=0.001)低いという群間の有意差が維持されていた。.加えてMST群の患者はケアに対する満足度が高く、鎮痛薬の使用頻度が減少していた。さらに日常の身体活動を回避することも少なくなっていた。なお、6カ月時点での追加介入によるブースター効果は、両群とも認められなかった。これらの結果についてVan Dillen氏は、「MSTが効果的な治療であり、慢性腰痛患者に対して生活機能の短期的および長期的な改善をもたらすことを示唆している」としている。.一方、この研究報告をレビューした米オークランド大学のDaniel Park氏は、「結果は統計的に有意であり、MSTが腰痛治療上メリットのある介入法であることを支持している。ただし、その有意差が全ての患者にとって『有意義な改善』とは断言できない」と慎重に解釈し、「腰痛改善のための運動療法は、どのような方法でも何らかのメリットがあるのではないか」と付け加えている。その背景として同氏は、「かつて腰痛に対しては安静が重要だと考えられていた。しかし現在は、安静が良いのは急性期の短期間のみであり、安静期間が長すぎるとかえって症状が悪化する可能性がある」と解説している。(HealthDay News 2020年12月30日).https://consumer.healthday.com/12-30-what-exercise-regimen-works-best-to-ease-low-back-pain-2649630005.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
慢性の非特異的腰痛に対する運動療法を、患者の状態に応じ個別化することで、より大きな症状改善を期待できることが分かった。米ワシントン大学のLinda Van Dillen氏らが行ったランダム化比較試験の結果であり、詳細は「JAMA Neurology」に12月28日掲載された。Van Dillen氏は、「腰痛は非常に一般的な症状であり、米国成人における慢性疼痛の原因として最も頻繁に見られ、かつ身体機能障害の最大の原因」と解説する。また、「成人の少なくとも60~80%が生涯に一度は患い、そのほぼ半数は30歳までに大きなエピソードを経験することになる」という。.このように多くの人のQOL(生活の質)に多大な影響を及ぼす腰痛だが、それに対する効果的な標準治療は確立されておらず、一定の効果があるとされる運動療法についても、どのようなタイプの運動が最も良いのか分かっていない。そこで同氏らは、慢性腰痛の中でも明らかな原因を特定できない「非特異的腰痛」に焦点を当て、運動療法を個別化することが症状の改善につながるかを検討した。.研究デザインは、単施設前向き単盲検ランダム化比較試験。対象は、12カ月以上症状が持続していて機能障害度(modified oswestry disability questionnaire;MODQ)スコアが20点以上の18~60歳の非特異的腰痛患者154人。全体を二分し、1群は、腰痛に対し筋力と柔軟性の維持・改善を目的として一般的に行われている運動療法(strength and flexibility exercise;SFE)を行う群とした。他の1群は、患者の姿勢や動きを評価して痛みの少ない動作を特定し指導するという、個別化した運動技能訓練(motor skill training;MST)を行う群とした。.両群ともに週に1時間のトレーニングを6週間実施。この介入の直後と介入終了から6カ月後、12カ月後にMODQスコアを評価した。また各群の対象者の約半数に対しては、ブースター効果を期待して介入終了6カ月後に追加トレーニングを最大3回施行した。.介入期間中に5人が脱落したため、効果判定は149人(SFE群75人、MST群74人)を対象に行われた。MODQスコアの推移を見ると、SFE群はベースライン時が32.6±9.4点、介入終了時が21.2±10.7点、介入終了6カ月後が18.2±10.5点、12カ月後が16.7±11.3点。一方、MST群は同順に32.3±10.2点、12.8±10.7点、12.0±12.6点、10.8±11.3点であり、両群ともに改善していた。.両群のMODQスコアを比較すると、ベースライン時は同等だったが、介入終了時点においてはMST群の方が7.9点(95%信頼区間4.7~11.0)低く、有意差が認められた(P<0.001)。また追跡期間中は常にMST群がSFE群より低値で推移し、介入終了6カ月後もMST群の方が5.6点(同2.1~9.1、P=0.002)低く、12カ月後も5.7点(同2.2~9.1、P=0.001)低いという群間の有意差が維持されていた。.加えてMST群の患者はケアに対する満足度が高く、鎮痛薬の使用頻度が減少していた。さらに日常の身体活動を回避することも少なくなっていた。なお、6カ月時点での追加介入によるブースター効果は、両群とも認められなかった。これらの結果についてVan Dillen氏は、「MSTが効果的な治療であり、慢性腰痛患者に対して生活機能の短期的および長期的な改善をもたらすことを示唆している」としている。.一方、この研究報告をレビューした米オークランド大学のDaniel Park氏は、「結果は統計的に有意であり、MSTが腰痛治療上メリットのある介入法であることを支持している。ただし、その有意差が全ての患者にとって『有意義な改善』とは断言できない」と慎重に解釈し、「腰痛改善のための運動療法は、どのような方法でも何らかのメリットがあるのではないか」と付け加えている。その背景として同氏は、「かつて腰痛に対しては安静が重要だと考えられていた。しかし現在は、安静が良いのは急性期の短期間のみであり、安静期間が長すぎるとかえって症状が悪化する可能性がある」と解説している。(HealthDay News 2020年12月30日).https://consumer.healthday.com/12-30-what-exercise-regimen-works-best-to-ease-low-back-pain-2649630005.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.