女性の冠動脈性心疾患(Coronary Heart Disease;CHD)の最大のリスク因子は、2型糖尿病であることが報告された。特に55歳未満という比較的若い時期に発症するCHDに関しては、2型糖尿病がそのリスクを10倍以上押し上げているという。米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のSamia Mora氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Cardiology」に1月20日掲載された。Mora氏らは、米国の女性医療従事者の健康状態を長期間追跡調査している前向きコホート研究「Women's Health Study;WHS」のデータを解析。1993年4月30日~1996年1月24日に登録された、心血管疾患のない45歳以上の女性2万8,024人を2017年10月1日~2020年10月1日まで追跡し(追跡期間中央値21.4年)、CHDの発症と50項目以上の発症リスク因子との関連を検討した。データ解析はCHD発症時の年齢を、55歳未満、55歳以上65歳未満、65歳以上75歳未満、75歳以上の4群に分類して行い、発症年齢によるリスク因子の相違を検討した。.その結果、全ての年齢カテゴリーにおいて、2型糖尿病がCHD発症の最大の危険因子であり、特に55歳未満でのCHD発症に対しては調整ハザード比(aHR)10.71(95%信頼区間5.57~20.60)と、糖尿病によってリスクが10倍以上上昇することが明らかになった。75歳以上でも、糖尿病がある場合はaHR3.47(同2.47~4.87)と有意に高リスクだった。.2型糖尿病の他にも、リポ蛋白のインスリン抵抗性を表す新しいマーカーである「lipoprotein insulin resistance;LPIR」も、55歳未満発症CHDのaHR6.40(同3.14~13.06)と、強力なリスク因子として抽出された。既知のリスク因子の中では、メタボリックシンドローム(aHR6.09、同3.60~10.29)、高血圧(aHR4.58、2.76~7.60)、肥満(aHR4.33、同2.31~8.11)、喫煙(aHR3.92、同2.32~6.63)などの重要性が浮かび上がった。なお、これらのリスク因子のaHRは、CHD発症年齢が高いほど低下する傾向が見られた。.Mora氏は、「若い人がCHDを発症すると、その後の生活の質(QOL)や労働生産性の低下などに強い影響を及ぼすことが多い」と、若年発症CHDのインパクトの大きさを指摘する。これに対して米ノースウェル・ヘルスの内分泌代謝・糖尿病の専門医であるShuchie Jaggi氏は、「より若年期からリスク因子を管理することが重要であり、それによって将来のイベントリスクを大幅に低下させることができる」と解説している。.今回の研究発表に関連し、もう一つの重要なポイントを指摘するのは、米スタテン・アイランド大学病院の心臓専門医であるRoshini Malaney氏だ。同氏は、「CHDのリスク因子に関する研究は長年、高齢男性を中心に行われてきており、若年女性での研究は大きく立ち遅れている。今でも女性は高齢期に至るまで、CHD予防介入をスタートする機会が限られている」と述べている。そして、「遺伝素因を変更することは不可能だが、生活習慣は変えられる。今回の研究結果は、若年女性に生活習慣改善を強く勧めることを支持する、数多くの根拠を示している」と語っている。.Malaney氏の指摘にはMora氏も同意を表した上で、「大半の2型糖尿病は発症を予防できる。しかし、それには社会や医療のシステム的な問題が存在しており、その問題に対処するための新たな戦略が求められている」と述べている。具体的な戦略として、地域社会での糖尿病発症予防の取り組みや公衆衛生的アプローチ、肥満に対する外科的治療の普及、人々が生活習慣を改善・維持するためのイノベーションなどが考えられるという。(HealthDay News 2021年1月21日).https://consumer.healthday.com/sb-1-21-diabetes-boosts-odds-for-heart-trouble-10-fold-in-younger-women-2650025491.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
女性の冠動脈性心疾患(Coronary Heart Disease;CHD)の最大のリスク因子は、2型糖尿病であることが報告された。特に55歳未満という比較的若い時期に発症するCHDに関しては、2型糖尿病がそのリスクを10倍以上押し上げているという。米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のSamia Mora氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Cardiology」に1月20日掲載された。Mora氏らは、米国の女性医療従事者の健康状態を長期間追跡調査している前向きコホート研究「Women's Health Study;WHS」のデータを解析。1993年4月30日~1996年1月24日に登録された、心血管疾患のない45歳以上の女性2万8,024人を2017年10月1日~2020年10月1日まで追跡し(追跡期間中央値21.4年)、CHDの発症と50項目以上の発症リスク因子との関連を検討した。データ解析はCHD発症時の年齢を、55歳未満、55歳以上65歳未満、65歳以上75歳未満、75歳以上の4群に分類して行い、発症年齢によるリスク因子の相違を検討した。.その結果、全ての年齢カテゴリーにおいて、2型糖尿病がCHD発症の最大の危険因子であり、特に55歳未満でのCHD発症に対しては調整ハザード比(aHR)10.71(95%信頼区間5.57~20.60)と、糖尿病によってリスクが10倍以上上昇することが明らかになった。75歳以上でも、糖尿病がある場合はaHR3.47(同2.47~4.87)と有意に高リスクだった。.2型糖尿病の他にも、リポ蛋白のインスリン抵抗性を表す新しいマーカーである「lipoprotein insulin resistance;LPIR」も、55歳未満発症CHDのaHR6.40(同3.14~13.06)と、強力なリスク因子として抽出された。既知のリスク因子の中では、メタボリックシンドローム(aHR6.09、同3.60~10.29)、高血圧(aHR4.58、2.76~7.60)、肥満(aHR4.33、同2.31~8.11)、喫煙(aHR3.92、同2.32~6.63)などの重要性が浮かび上がった。なお、これらのリスク因子のaHRは、CHD発症年齢が高いほど低下する傾向が見られた。.Mora氏は、「若い人がCHDを発症すると、その後の生活の質(QOL)や労働生産性の低下などに強い影響を及ぼすことが多い」と、若年発症CHDのインパクトの大きさを指摘する。これに対して米ノースウェル・ヘルスの内分泌代謝・糖尿病の専門医であるShuchie Jaggi氏は、「より若年期からリスク因子を管理することが重要であり、それによって将来のイベントリスクを大幅に低下させることができる」と解説している。.今回の研究発表に関連し、もう一つの重要なポイントを指摘するのは、米スタテン・アイランド大学病院の心臓専門医であるRoshini Malaney氏だ。同氏は、「CHDのリスク因子に関する研究は長年、高齢男性を中心に行われてきており、若年女性での研究は大きく立ち遅れている。今でも女性は高齢期に至るまで、CHD予防介入をスタートする機会が限られている」と述べている。そして、「遺伝素因を変更することは不可能だが、生活習慣は変えられる。今回の研究結果は、若年女性に生活習慣改善を強く勧めることを支持する、数多くの根拠を示している」と語っている。.Malaney氏の指摘にはMora氏も同意を表した上で、「大半の2型糖尿病は発症を予防できる。しかし、それには社会や医療のシステム的な問題が存在しており、その問題に対処するための新たな戦略が求められている」と述べている。具体的な戦略として、地域社会での糖尿病発症予防の取り組みや公衆衛生的アプローチ、肥満に対する外科的治療の普及、人々が生活習慣を改善・維持するためのイノベーションなどが考えられるという。(HealthDay News 2021年1月21日).https://consumer.healthday.com/sb-1-21-diabetes-boosts-odds-for-heart-trouble-10-fold-in-younger-women-2650025491.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.