糖尿病患者はサルコペニアの頻度が高いことが知られているが、味噌の摂取量の多い患者はそうでない患者よりも、その有病率が低いというデータが報告された。ただしこの関連は女性のみで認められ、また女性でもタバコを吸う患者では有意でないという。京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科の橋本善隆氏、福井道明氏らの研究であり、詳細は「Nutrients」に12月28日掲載された。人口の高齢化とともに、サルコペニアを併発している糖尿病患者が増加している。サルコペニアとは、加齢や疾患により筋肉量や筋力が低下して、転倒や骨折などのリスクが高くなった状態のこと。糖尿病患者でのサルコペニア発症には、インスリン抵抗性や酸化ストレスの亢進などの関与が考えられている。一方、大豆食品、とりわけ発酵性大豆食品である味噌には、インスリン感受性や抗酸化作用を高める働きがあることが報告されている。.この研究は、同大学が中心となって行っている糖尿病患者対象の多施設共同多目的コホート研究「KAMOGAWA-DMコホート研究」のデータを用いた横断研究として実施された。解析対象者数は351人で平均年齢66.6±10.6歳、男性54.7%、糖尿病罹病期間14.1±10.0年、BMI24.5±4.4kg/m2、体脂肪率29.3±9.0%、HbA1c7.3±1.2%。.筋肉量の指標である骨格筋量指数(SMI)は29.0±4.3%であり、筋力の指標である体重調整握力(AGS)は44.1±12.0%だった。既報に基づき、男性はSMI28.64%未満かつAGS51.26%未満、女性は同順に24.12%未満かつ35.38%未満をサルコペニアと定義したところ、男性の8.7%、女性の22.6%がこれに該当した。また、味噌を習慣的に摂取している人の割合は、男性88.0%、女性83.6%だった。.女性では、味噌を習慣的に摂取している群が、そうでない群よりも体脂肪率(33.8±8.0対39.3±7.3%、P=0.001)、BMI(24.7±5.0対27.3±5.0kg/m2、P=0.022)、HbA1c(7.2±1.0対8.1±1.9%、P=0.006)が有意に低く、摂取エネルギー量は有意に多かった(30.8±11.2対23.5±6.3kcal/kg/日、P<0.001)。また、サルコペニアの有病率は味噌を習慣的に摂取している群が有意に低かった(18.8対42.3%、P=0.018)。一方、男性では、味噌を習慣的に摂取している群の体脂肪率が低い傾向にあったが有意でなく(24.4±7.2対27.4±5.6%、P=0.056)、BMIやHbA1c、摂取エネルギー量、サルコペニア有病率は両群同等だった。.サルコペニアの発症リスクに影響を与え得る因子(年齢、糖尿病罹病期間、運動・喫煙・飲酒習慣、エネルギーおよびタンパク質摂取量など)で調整後、味噌を習慣的に摂取する女性はそうでない女性に対してサルコペニアである確率が有意に低かった〔オッズ比(OR)0.20、95%信頼区間0.06~0.62〕。さらに、味噌汁の摂取量が多いほどサルコペニア有病率が低いという、有意な関連も存在した(摂取量を対数変換した値が倍になるごとにOR0.67、同0.52~0.86)。男性ではこれらの関係は認められず、また喫煙習慣の有無で層別化すると、女性でも喫煙者はこの関連が非有意だった。.この関連の背景にあるメカニズムとして、著者らはこれまでの知見を基に、味噌の摂取が脂肪蓄積を抑制し、脂肪誘発性の炎症反応が低下して筋委縮が抑えられる可能性を指摘。また味噌を摂取する人は健康的な食習慣であることが多い可能性があるとしている。実際に本研究でも、習慣的に味噌を摂取する女性はエネルギー摂取量が有意に多いながらも、体脂肪率は有意に低かったことが、この考え方を間接的に支持しているという。その他、大豆に豊富な不飽和脂肪酸が筋肉量の維持に働く可能性なども挙げている。.一方、男性で両者の関連が認められないことの理由は「不明」としながらも、女性で見られた味噌摂取量と食事の質との関連が、男性では存在しなかったことが一因ではないかと考察している。.論文筆頭著者の高橋芙由子氏は、「習慣的に味噌を摂取している糖尿病女性のサルコペニア有病率が低いことが、初めて明らかになった」と述べるとともに、「追試が必要ではあるが、味噌は日本の伝統的な食事の一部であり、その摂取でサルコペニアを予防できる可能性のあることが示唆された」と結論付けている。(HealthDay News 2021年2月15日).Abstract/Full Texthttps://www.mdpi.com/2072-6643/13/1/72.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
糖尿病患者はサルコペニアの頻度が高いことが知られているが、味噌の摂取量の多い患者はそうでない患者よりも、その有病率が低いというデータが報告された。ただしこの関連は女性のみで認められ、また女性でもタバコを吸う患者では有意でないという。京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科の橋本善隆氏、福井道明氏らの研究であり、詳細は「Nutrients」に12月28日掲載された。人口の高齢化とともに、サルコペニアを併発している糖尿病患者が増加している。サルコペニアとは、加齢や疾患により筋肉量や筋力が低下して、転倒や骨折などのリスクが高くなった状態のこと。糖尿病患者でのサルコペニア発症には、インスリン抵抗性や酸化ストレスの亢進などの関与が考えられている。一方、大豆食品、とりわけ発酵性大豆食品である味噌には、インスリン感受性や抗酸化作用を高める働きがあることが報告されている。.この研究は、同大学が中心となって行っている糖尿病患者対象の多施設共同多目的コホート研究「KAMOGAWA-DMコホート研究」のデータを用いた横断研究として実施された。解析対象者数は351人で平均年齢66.6±10.6歳、男性54.7%、糖尿病罹病期間14.1±10.0年、BMI24.5±4.4kg/m2、体脂肪率29.3±9.0%、HbA1c7.3±1.2%。.筋肉量の指標である骨格筋量指数(SMI)は29.0±4.3%であり、筋力の指標である体重調整握力(AGS)は44.1±12.0%だった。既報に基づき、男性はSMI28.64%未満かつAGS51.26%未満、女性は同順に24.12%未満かつ35.38%未満をサルコペニアと定義したところ、男性の8.7%、女性の22.6%がこれに該当した。また、味噌を習慣的に摂取している人の割合は、男性88.0%、女性83.6%だった。.女性では、味噌を習慣的に摂取している群が、そうでない群よりも体脂肪率(33.8±8.0対39.3±7.3%、P=0.001)、BMI(24.7±5.0対27.3±5.0kg/m2、P=0.022)、HbA1c(7.2±1.0対8.1±1.9%、P=0.006)が有意に低く、摂取エネルギー量は有意に多かった(30.8±11.2対23.5±6.3kcal/kg/日、P<0.001)。また、サルコペニアの有病率は味噌を習慣的に摂取している群が有意に低かった(18.8対42.3%、P=0.018)。一方、男性では、味噌を習慣的に摂取している群の体脂肪率が低い傾向にあったが有意でなく(24.4±7.2対27.4±5.6%、P=0.056)、BMIやHbA1c、摂取エネルギー量、サルコペニア有病率は両群同等だった。.サルコペニアの発症リスクに影響を与え得る因子(年齢、糖尿病罹病期間、運動・喫煙・飲酒習慣、エネルギーおよびタンパク質摂取量など)で調整後、味噌を習慣的に摂取する女性はそうでない女性に対してサルコペニアである確率が有意に低かった〔オッズ比(OR)0.20、95%信頼区間0.06~0.62〕。さらに、味噌汁の摂取量が多いほどサルコペニア有病率が低いという、有意な関連も存在した(摂取量を対数変換した値が倍になるごとにOR0.67、同0.52~0.86)。男性ではこれらの関係は認められず、また喫煙習慣の有無で層別化すると、女性でも喫煙者はこの関連が非有意だった。.この関連の背景にあるメカニズムとして、著者らはこれまでの知見を基に、味噌の摂取が脂肪蓄積を抑制し、脂肪誘発性の炎症反応が低下して筋委縮が抑えられる可能性を指摘。また味噌を摂取する人は健康的な食習慣であることが多い可能性があるとしている。実際に本研究でも、習慣的に味噌を摂取する女性はエネルギー摂取量が有意に多いながらも、体脂肪率は有意に低かったことが、この考え方を間接的に支持しているという。その他、大豆に豊富な不飽和脂肪酸が筋肉量の維持に働く可能性なども挙げている。.一方、男性で両者の関連が認められないことの理由は「不明」としながらも、女性で見られた味噌摂取量と食事の質との関連が、男性では存在しなかったことが一因ではないかと考察している。.論文筆頭著者の高橋芙由子氏は、「習慣的に味噌を摂取している糖尿病女性のサルコペニア有病率が低いことが、初めて明らかになった」と述べるとともに、「追試が必要ではあるが、味噌は日本の伝統的な食事の一部であり、その摂取でサルコペニアを予防できる可能性のあることが示唆された」と結論付けている。(HealthDay News 2021年2月15日).Abstract/Full Texthttps://www.mdpi.com/2072-6643/13/1/72.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.