発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)は、主に性行為により感染すると考えられているが、口腔内にHPVが感染した状態で生まれてくる赤ちゃんは少なくないとする研究報告が、「Emerging Infectious Diseases」2021年3月号に掲載された。研究論文の筆頭著者である、トゥルク大学(フィンランド)歯学研究所のStina Syrjänen氏は、「簡単に言うと、若年齢期や、場合によっては出生時に、HPVに感染する可能性があるが、感染しても無症候性で、たいていの場合、口の粘膜からウイルスが確認されることはない」と話している。研究グループは、Finnish Family HPV Studyに参加したフィンランドの小児331人を対象に、唾液サンプルを集め、24種類のHPV遺伝子型の有無について調べた。唾液サンプルは、出生時と退院の3日前、および1、2、6、12、24、36カ月時と6歳時の追跡調査時に採取された。.その結果、口腔HPV感染の有病率には、8.7%(36カ月時)から22.8%(出生時)までの幅があり、出生時が最も高いことが明らかになった。また、確認されたHPV遺伝子型は全部で18種類であり、最も多かったのはHPV16型で、HPV18型、6型、33型、31型がそれに続いた。さらに、14.9%(323人中48人)では、追跡調査で2回以上連続してHPV陽性となる持続感染が確認された(平均感染期間は20.6カ月)。.米国小児科学会(AAP)感染症委員会の副委員長であるSean O'Leary氏は、対象者の約15%に持続感染が認められた点について、「HPV持続感染は、健康面に長期的なリスクをもたらす可能性がある。ただし、リスクの大きさについては、現時点でははっきりとしたことは分かっていない。しかし、HPV持続感染の認められた小児の全てががんを発症するわけではなく、いずれHPVが除去される人もいるだろう。問題は、除去される人とされない人で何が違うのかが、明確になっていないことだ」と話している。.では、どのようにして母親のHPVが子どもに感染するのか。Syrjänen氏は、感染経路として最も可能性が高いのは、分娩中の産道を介した感染だと考えている。この感染経路については、いくつかの研究によっても裏付けられている。その他、マウス・トゥ・マウス感染や妊娠中の胎内感染なども考えられるが、全ての感染経路が把握されているわけではないという。.米国立がん研究所は、HPV感染は、事実上、全ての子宮頸がんの原因である上に、ほとんどの口腔がん、肛門がん、陰茎がんの原因になるとしている。O'Leary氏は今回の研究結果について、「HPVワクチン接種の推奨に対する強力な論拠となるもの」との見方を示している。なぜなら、HPVに対する抗ウイルス療法はなく、また、HPVへの曝露後にHPVワクチンを接種しても、将来の感染を防ぐことはできないからだ。.O'Leary氏は、今回の研究で最も多く発見されたHPV16型変異体に着目し、「HPV16型は、HPV関連がんの原因となることが最も多いウイルスであり、HPVワクチンがターゲットにするウイルスの一つだ」と指摘。「免疫反応が良くなるので、ワクチン接種は早いに越したことはない」として、早期の接種を勧めている。.一方、Syrjänen氏は、「HPVワクチンを接種した母親から生まれた子どもは、HPV抗体レベルが高いことが研究により示されている」とし、母親がHPVワクチンを接種することで、子どもへの感染を防げるだけでなく、子どもに自然免疫を付与できる可能性もあることに言及している。(HealthDay News 2021年2月11日).https://consumer.healthday.com/2-11-many-babies-acquire-oral-hpv-probably-from-mom-2650404173.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)は、主に性行為により感染すると考えられているが、口腔内にHPVが感染した状態で生まれてくる赤ちゃんは少なくないとする研究報告が、「Emerging Infectious Diseases」2021年3月号に掲載された。研究論文の筆頭著者である、トゥルク大学(フィンランド)歯学研究所のStina Syrjänen氏は、「簡単に言うと、若年齢期や、場合によっては出生時に、HPVに感染する可能性があるが、感染しても無症候性で、たいていの場合、口の粘膜からウイルスが確認されることはない」と話している。研究グループは、Finnish Family HPV Studyに参加したフィンランドの小児331人を対象に、唾液サンプルを集め、24種類のHPV遺伝子型の有無について調べた。唾液サンプルは、出生時と退院の3日前、および1、2、6、12、24、36カ月時と6歳時の追跡調査時に採取された。.その結果、口腔HPV感染の有病率には、8.7%(36カ月時)から22.8%(出生時)までの幅があり、出生時が最も高いことが明らかになった。また、確認されたHPV遺伝子型は全部で18種類であり、最も多かったのはHPV16型で、HPV18型、6型、33型、31型がそれに続いた。さらに、14.9%(323人中48人)では、追跡調査で2回以上連続してHPV陽性となる持続感染が確認された(平均感染期間は20.6カ月)。.米国小児科学会(AAP)感染症委員会の副委員長であるSean O'Leary氏は、対象者の約15%に持続感染が認められた点について、「HPV持続感染は、健康面に長期的なリスクをもたらす可能性がある。ただし、リスクの大きさについては、現時点でははっきりとしたことは分かっていない。しかし、HPV持続感染の認められた小児の全てががんを発症するわけではなく、いずれHPVが除去される人もいるだろう。問題は、除去される人とされない人で何が違うのかが、明確になっていないことだ」と話している。.では、どのようにして母親のHPVが子どもに感染するのか。Syrjänen氏は、感染経路として最も可能性が高いのは、分娩中の産道を介した感染だと考えている。この感染経路については、いくつかの研究によっても裏付けられている。その他、マウス・トゥ・マウス感染や妊娠中の胎内感染なども考えられるが、全ての感染経路が把握されているわけではないという。.米国立がん研究所は、HPV感染は、事実上、全ての子宮頸がんの原因である上に、ほとんどの口腔がん、肛門がん、陰茎がんの原因になるとしている。O'Leary氏は今回の研究結果について、「HPVワクチン接種の推奨に対する強力な論拠となるもの」との見方を示している。なぜなら、HPVに対する抗ウイルス療法はなく、また、HPVへの曝露後にHPVワクチンを接種しても、将来の感染を防ぐことはできないからだ。.O'Leary氏は、今回の研究で最も多く発見されたHPV16型変異体に着目し、「HPV16型は、HPV関連がんの原因となることが最も多いウイルスであり、HPVワクチンがターゲットにするウイルスの一つだ」と指摘。「免疫反応が良くなるので、ワクチン接種は早いに越したことはない」として、早期の接種を勧めている。.一方、Syrjänen氏は、「HPVワクチンを接種した母親から生まれた子どもは、HPV抗体レベルが高いことが研究により示されている」とし、母親がHPVワクチンを接種することで、子どもへの感染を防げるだけでなく、子どもに自然免疫を付与できる可能性もあることに言及している。(HealthDay News 2021年2月11日).https://consumer.healthday.com/2-11-many-babies-acquire-oral-hpv-probably-from-mom-2650404173.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.