腎移植を促進するためのさまざまな努力が積み重ねられているにもかかわらず、米国では過去20年間で、末期腎不全(ESKD)患者の移植待機リストへの登録率が実質的に変化していないとする研究結果が報告された。米クリーブランドクリニックのJesse Schold氏らによるこの研究は、「Journal of the American Society of Nephrology」に2月11日掲載された。ESKD患者に対する最善の治療法は、腎移植である。しかし、全てのESKD患者が腎移植の待機リストに登録されているわけではない。患者によっては腎移植という選択肢を意識さえしていない。待機リストに登録されていない患者は、腎臓の働きの一部を人工的に補うために、生きている限り、自宅や医療施設で透析を受け続けなければならない。.近年の研究から、患者が腎移植前の評価を受けて待機リストに載るまでに遭遇するさまざまな障害が明らかになってきている。また、特定の患者集団における医療格差の存在も指摘されている。こうした腎移植にまつわる問題を是正するために、いくつもの政策方針や介入策が立案され、研究も進められている。Schold氏らは今回、腎移植促進のためのこうした努力の効果を調査するために、1997年から2016年に米国腎臓データシステムに登録された130万9,998人の成人ESKD患者に関するデータを分析した。.その結果、ESKD患者の4年単位での待機リストへの登録率は、1997〜2000年で29.1%、2001〜2004年で29.3%、2005〜2008年で30.5%、2009〜2012年で30.0%、2013〜2016年で28.1%であり、過去20年間で待機リストへの登録率は改善していないことが明らかになった。また、待機リストへの登録率は、高所得地域に居住する患者に比べて、低所得地域に居住する患者の間で一貫して低いことも判明した。.こうした結果を受けてSchold氏は、「この研究結果は、腎移植へのアプローチを改善しようとするさまざまな努力が、ほとんど実を結んでいないことを示唆している。より効果的な対策が必要だ」と述べている。.ただし、2019年7月にドナルド・トランプ前大統領が署名した大統領令により、事態は一変する可能性がある。この大統領令は、腎移植の待機リストへの登録者数を増やし、2030年までに移植可能な腎臓の数を2倍にすることを目的としている。Schold氏によると、患者の腎移植への紹介率には透析センターごとに差があり、多様な社会的支援や保険を利用できる所ほど、紹介率は高いという。同氏は、この大統領令により、透析センターは患者を待機リストに紹介することで受け取るメディケアからの払戻額が増えるため、紹介率が向上するものと期待している。.また、腎移植へのアクセスを改善する別の方法として、Schold氏は、オプトイン方式ではなく、オプトアウト方式を採用することも提案している。オプトイン方式では、本人もしくは家族が臓器提供の意思表示をしていた場合、提供が行われるのに対して、オプトアウト方式では、本人が臓器提供に反対していなければ、提供を承諾したものと見なす。.さらに、腎臓供給という解決すべき大きな問題もある。Schold氏は、「腎臓病の主なリスク因子は、肥満、糖尿病、高齢だ。米国ではこれら全てが増加しているため、腎移植により恩恵を受ける可能性がある全ての患者に腎臓を提供することは至難の業だ」と話す。現状では、提供された腎臓の20%が廃棄されているが、「使用される可能性が最も高い場所にそれらを直送すれば、この割合は減少するはずだ」と同氏は話す。これを実現させるために、米国の臓器移植システムを管理する非営利団体United Network for Organ Sharing(UNOS)は現在、臓器の配分プロセスに変更を加えているところだ。これにより、完璧ではないものの、移植可能な臓器を用いた移植の実施件数が増える見込みだという。(HealthDay News 2021年2月12日).https://consumer.healthday.com/2-11-why-are-waits-for-donor-kidneys-not-improving-2650330934.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
腎移植を促進するためのさまざまな努力が積み重ねられているにもかかわらず、米国では過去20年間で、末期腎不全(ESKD)患者の移植待機リストへの登録率が実質的に変化していないとする研究結果が報告された。米クリーブランドクリニックのJesse Schold氏らによるこの研究は、「Journal of the American Society of Nephrology」に2月11日掲載された。ESKD患者に対する最善の治療法は、腎移植である。しかし、全てのESKD患者が腎移植の待機リストに登録されているわけではない。患者によっては腎移植という選択肢を意識さえしていない。待機リストに登録されていない患者は、腎臓の働きの一部を人工的に補うために、生きている限り、自宅や医療施設で透析を受け続けなければならない。.近年の研究から、患者が腎移植前の評価を受けて待機リストに載るまでに遭遇するさまざまな障害が明らかになってきている。また、特定の患者集団における医療格差の存在も指摘されている。こうした腎移植にまつわる問題を是正するために、いくつもの政策方針や介入策が立案され、研究も進められている。Schold氏らは今回、腎移植促進のためのこうした努力の効果を調査するために、1997年から2016年に米国腎臓データシステムに登録された130万9,998人の成人ESKD患者に関するデータを分析した。.その結果、ESKD患者の4年単位での待機リストへの登録率は、1997〜2000年で29.1%、2001〜2004年で29.3%、2005〜2008年で30.5%、2009〜2012年で30.0%、2013〜2016年で28.1%であり、過去20年間で待機リストへの登録率は改善していないことが明らかになった。また、待機リストへの登録率は、高所得地域に居住する患者に比べて、低所得地域に居住する患者の間で一貫して低いことも判明した。.こうした結果を受けてSchold氏は、「この研究結果は、腎移植へのアプローチを改善しようとするさまざまな努力が、ほとんど実を結んでいないことを示唆している。より効果的な対策が必要だ」と述べている。.ただし、2019年7月にドナルド・トランプ前大統領が署名した大統領令により、事態は一変する可能性がある。この大統領令は、腎移植の待機リストへの登録者数を増やし、2030年までに移植可能な腎臓の数を2倍にすることを目的としている。Schold氏によると、患者の腎移植への紹介率には透析センターごとに差があり、多様な社会的支援や保険を利用できる所ほど、紹介率は高いという。同氏は、この大統領令により、透析センターは患者を待機リストに紹介することで受け取るメディケアからの払戻額が増えるため、紹介率が向上するものと期待している。.また、腎移植へのアクセスを改善する別の方法として、Schold氏は、オプトイン方式ではなく、オプトアウト方式を採用することも提案している。オプトイン方式では、本人もしくは家族が臓器提供の意思表示をしていた場合、提供が行われるのに対して、オプトアウト方式では、本人が臓器提供に反対していなければ、提供を承諾したものと見なす。.さらに、腎臓供給という解決すべき大きな問題もある。Schold氏は、「腎臓病の主なリスク因子は、肥満、糖尿病、高齢だ。米国ではこれら全てが増加しているため、腎移植により恩恵を受ける可能性がある全ての患者に腎臓を提供することは至難の業だ」と話す。現状では、提供された腎臓の20%が廃棄されているが、「使用される可能性が最も高い場所にそれらを直送すれば、この割合は減少するはずだ」と同氏は話す。これを実現させるために、米国の臓器移植システムを管理する非営利団体United Network for Organ Sharing(UNOS)は現在、臓器の配分プロセスに変更を加えているところだ。これにより、完璧ではないものの、移植可能な臓器を用いた移植の実施件数が増える見込みだという。(HealthDay News 2021年2月12日).https://consumer.healthday.com/2-11-why-are-waits-for-donor-kidneys-not-improving-2650330934.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.