雇用形態や収入、学歴などと、運動習慣や心肺機能との間に、統計的に有意な関連があることが、日本人労働者対象の研究から明らかになった。労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の松尾知明氏と蘇リナ氏の研究によるもので、収入の多い人ほど心肺機能が高いとのことだ。詳細は「Journal of Occupational Health」に2月2日掲載された。この研究は、2018年1~7月にWebアンケートとして実施された。年齢が20~65歳で、1都3県(埼玉、千葉、神奈川)で1日6時間以上、週3日以上働いていることを適格条件として、回答者が1万人になった時点で回答受付を終了。回答内容の不備があるものなどを除き、9,406人(男性56.0%)を解析対象とした。.アンケートの質問内容は、年齢、性別、身長、体重のほか、学歴、婚姻状況、雇用形態、勤務状況、年収といった社会経済的因子に関することと、運動習慣(厚生労働省の定義による、1日30分、週2日、1年以上の継続的な運動)の有無や身体活動量など。心肺機能は、年齢、性別、BMI、身体活動量から算出した推算最大酸素摂取量(VO2max)で評価した。.平均年齢は男性44.5±11.2歳、女性41.7±10.8歳、BMIは同順に23.4±3.5、21.0±3.5。運動習慣のある人の割合は男性36.5%、女性28.4%で、推算VO2maxは41.3±5.1mL/kg/分、35.9±4.7mL/kg/分だった。.統計解析の結果、社会経済的因子と運動習慣との間に、有意な関連があることが分かった。具体的には、未婚者(30.9%)より既婚者(同34.7%)の方が運動習慣のある人の割合が高く、高学歴であること(大学院卒36.7%、高卒27.8%)や、被雇用者より雇用者であること(雇用者41.5%、フルタイム従業員34.0%、パートタイム27.6%)などとの有意な関連も認められた(いずれもP<0.01)。また、標準体重(BMI18.5~24.9)の人は、低体重や肥満者よりも運動習慣のある人の割合が有意に高かった(P<0.01)。なお、年齢は運動習慣の有無と関連がなかった。.社会経済的因子は、年齢、性別、BMIで調整後の推算VO2maxとも有意な関連が認められた。例えば、高卒者に比べて大卒者は、推算VO2maxが第1三分位群(下位3分の1)に該当する確率が15%低かった〔オッズ比(OR)0.85、95%信頼区間0.74~0.98〕。また、パートタイム従業員に比較してフルタイム従業員はOR0.78(同0.68~0.89)、雇用者はOR0.73(同0.58~0.92)であり、いずれも推算VO2max低値である確率が有意に低かった。.年収と運動習慣や推算VO2maxとの間にも、以下のような有意な関連が認められた。年収の第1三分位群の人に比べて第3三分位群(上位3分の1)の人は運動習慣がある確率が76%高く、推算VO2max低値である確率は47%低かった。第2三分位群の人も運動習慣がある確率が22%高かった(推算VO2max低値との関連は非有意)。.この他にも、全体の92.7%が「運動は健康に良い」と考えており、運動習慣がない人でもその72.5%は「できれば運動習慣を身に付けたい」と考えていることが分かった。それらの人が運動を習慣的に行う上での妨げとなっている上位2項目は、「時間がないこと」(39.7%)と「経済的な余裕がないこと」(15.9%)だった。また、約8割(78.9%)は、「もし職場健診で心肺機能を簡単に測定できるのなら受けてみたい」と回答していた。.これらの結果を基に著者らは、「大半の労働者は運動の意義を認識しているが、社会経済的因子がそれを妨げている。よって、運動不足は個人の問題ではなく、社会の構造的な問題として扱う必要もある。一方、職場健診に心肺機能検査を導入することが、運動を習慣づける対策として有用かもしれない」と考察を述べている。(HealthDay News 2021年3月8日).Abstract/Full Texthttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/1348-9585.12187.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
雇用形態や収入、学歴などと、運動習慣や心肺機能との間に、統計的に有意な関連があることが、日本人労働者対象の研究から明らかになった。労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の松尾知明氏と蘇リナ氏の研究によるもので、収入の多い人ほど心肺機能が高いとのことだ。詳細は「Journal of Occupational Health」に2月2日掲載された。この研究は、2018年1~7月にWebアンケートとして実施された。年齢が20~65歳で、1都3県(埼玉、千葉、神奈川)で1日6時間以上、週3日以上働いていることを適格条件として、回答者が1万人になった時点で回答受付を終了。回答内容の不備があるものなどを除き、9,406人(男性56.0%)を解析対象とした。.アンケートの質問内容は、年齢、性別、身長、体重のほか、学歴、婚姻状況、雇用形態、勤務状況、年収といった社会経済的因子に関することと、運動習慣(厚生労働省の定義による、1日30分、週2日、1年以上の継続的な運動)の有無や身体活動量など。心肺機能は、年齢、性別、BMI、身体活動量から算出した推算最大酸素摂取量(VO2max)で評価した。.平均年齢は男性44.5±11.2歳、女性41.7±10.8歳、BMIは同順に23.4±3.5、21.0±3.5。運動習慣のある人の割合は男性36.5%、女性28.4%で、推算VO2maxは41.3±5.1mL/kg/分、35.9±4.7mL/kg/分だった。.統計解析の結果、社会経済的因子と運動習慣との間に、有意な関連があることが分かった。具体的には、未婚者(30.9%)より既婚者(同34.7%)の方が運動習慣のある人の割合が高く、高学歴であること(大学院卒36.7%、高卒27.8%)や、被雇用者より雇用者であること(雇用者41.5%、フルタイム従業員34.0%、パートタイム27.6%)などとの有意な関連も認められた(いずれもP<0.01)。また、標準体重(BMI18.5~24.9)の人は、低体重や肥満者よりも運動習慣のある人の割合が有意に高かった(P<0.01)。なお、年齢は運動習慣の有無と関連がなかった。.社会経済的因子は、年齢、性別、BMIで調整後の推算VO2maxとも有意な関連が認められた。例えば、高卒者に比べて大卒者は、推算VO2maxが第1三分位群(下位3分の1)に該当する確率が15%低かった〔オッズ比(OR)0.85、95%信頼区間0.74~0.98〕。また、パートタイム従業員に比較してフルタイム従業員はOR0.78(同0.68~0.89)、雇用者はOR0.73(同0.58~0.92)であり、いずれも推算VO2max低値である確率が有意に低かった。.年収と運動習慣や推算VO2maxとの間にも、以下のような有意な関連が認められた。年収の第1三分位群の人に比べて第3三分位群(上位3分の1)の人は運動習慣がある確率が76%高く、推算VO2max低値である確率は47%低かった。第2三分位群の人も運動習慣がある確率が22%高かった(推算VO2max低値との関連は非有意)。.この他にも、全体の92.7%が「運動は健康に良い」と考えており、運動習慣がない人でもその72.5%は「できれば運動習慣を身に付けたい」と考えていることが分かった。それらの人が運動を習慣的に行う上での妨げとなっている上位2項目は、「時間がないこと」(39.7%)と「経済的な余裕がないこと」(15.9%)だった。また、約8割(78.9%)は、「もし職場健診で心肺機能を簡単に測定できるのなら受けてみたい」と回答していた。.これらの結果を基に著者らは、「大半の労働者は運動の意義を認識しているが、社会経済的因子がそれを妨げている。よって、運動不足は個人の問題ではなく、社会の構造的な問題として扱う必要もある。一方、職場健診に心肺機能検査を導入することが、運動を習慣づける対策として有用かもしれない」と考察を述べている。(HealthDay News 2021年3月8日).Abstract/Full Texthttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/1348-9585.12187.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.