たった1回でも頭部外傷の経験がある人は、後年に認知症を発症するリスクが25%高く、頭部外傷の受傷回数が多いほど認知症のリスクは上昇するという研究結果が、「Alzheimer's & Dementia」に3月9日発表された。研究論文の筆頭著者である、米ペンシルベニア大学神経学のAndrea Schneider氏は、「認知症のリスク因子には頭部外傷の他に高血圧や糖尿病などさまざまなものがあるが、頭部外傷はヘルメットやシートベルトの着用といった行動変容により防ぐことができる」と話している。.Schneider氏らは今回、米国の観察研究であるARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)研究に参加した1万4,376人の追跡データを解析した。ベースライン時の研究参加者の平均年齢は54歳、56%が女性であった。追跡期間中(中央値25年)には、定期的に対面または電話で頭部外傷に関する聞き取り調査を行ったほか、研究参加者の医療記録を用いて頭部外傷の既往歴も調べた。.その上で、頭部外傷とその後の認知症の関連について解析した結果、参加者における全認知症例の9.5%が、過去に生じた1回以上の頭部外傷に関連付けられることが明らかになった。頭部外傷の経験のある人とない人を比べたところ、経験が1回の人では、後年に認知症を発症するリスクが25%高く、経験が2回以上の人では、25年後に認知症を発症するリスクが2倍以上高かった。.このほか、頭部外傷を経験した後に認知症を発症するリスクは、男性よりも女性で(ハザード比は1.15対1.69)、また黒人よりも白人で(ハザード比は1.22対1.55)高いことも示された。.ただしSchneider氏によると、頭部外傷が認知症の発症を促し得るとしても、その機序は今のところ不明だという。同氏は、「高血圧や糖尿病、喫煙といった血管のリスク因子は、脳の血管の健康状態に影響を与え、後年の認知症を引き起こすと考えられている。頭部外傷も、それ自体が脳の血管に損傷をもたらし、似たような経路で後年の認知症を引き起こしている可能性がある」と推測している。.米アルツハイマー病治療薬開発財団(Alzheimer's Drug Discovery Foundation)チーフ・サイエンス・オフィサーのHoward Fillit氏は、今回報告された研究結果は「極めて重要」とした上で、頭部外傷が認知症を引き起こす可能性があるのなら、その機序の解明が必要だと指摘。「外傷性脳損傷が最終的に認知症を引き起こす機序は複数ある。また、認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症では、脳の病変が発症の20~30年前から始まることも明らかにされている」と説明している。.Fillit氏は、「禁煙や節酒のほか、社会的なつながりの維持、ヘルメットやシートベルトの着用による頭部保護などの対策を講じることで、認知症の発症リスクを低減できる」と話している。また、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの既知のリスク因子の管理も重要だとしている。(HealthDay News 2021年3月10日).https://consumer.healthday.com/3-10-even-1-concussion-early-in-life-could-raise-your-odds-for-dementia-later-2650974248.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
たった1回でも頭部外傷の経験がある人は、後年に認知症を発症するリスクが25%高く、頭部外傷の受傷回数が多いほど認知症のリスクは上昇するという研究結果が、「Alzheimer's & Dementia」に3月9日発表された。研究論文の筆頭著者である、米ペンシルベニア大学神経学のAndrea Schneider氏は、「認知症のリスク因子には頭部外傷の他に高血圧や糖尿病などさまざまなものがあるが、頭部外傷はヘルメットやシートベルトの着用といった行動変容により防ぐことができる」と話している。.Schneider氏らは今回、米国の観察研究であるARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)研究に参加した1万4,376人の追跡データを解析した。ベースライン時の研究参加者の平均年齢は54歳、56%が女性であった。追跡期間中(中央値25年)には、定期的に対面または電話で頭部外傷に関する聞き取り調査を行ったほか、研究参加者の医療記録を用いて頭部外傷の既往歴も調べた。.その上で、頭部外傷とその後の認知症の関連について解析した結果、参加者における全認知症例の9.5%が、過去に生じた1回以上の頭部外傷に関連付けられることが明らかになった。頭部外傷の経験のある人とない人を比べたところ、経験が1回の人では、後年に認知症を発症するリスクが25%高く、経験が2回以上の人では、25年後に認知症を発症するリスクが2倍以上高かった。.このほか、頭部外傷を経験した後に認知症を発症するリスクは、男性よりも女性で(ハザード比は1.15対1.69)、また黒人よりも白人で(ハザード比は1.22対1.55)高いことも示された。.ただしSchneider氏によると、頭部外傷が認知症の発症を促し得るとしても、その機序は今のところ不明だという。同氏は、「高血圧や糖尿病、喫煙といった血管のリスク因子は、脳の血管の健康状態に影響を与え、後年の認知症を引き起こすと考えられている。頭部外傷も、それ自体が脳の血管に損傷をもたらし、似たような経路で後年の認知症を引き起こしている可能性がある」と推測している。.米アルツハイマー病治療薬開発財団(Alzheimer's Drug Discovery Foundation)チーフ・サイエンス・オフィサーのHoward Fillit氏は、今回報告された研究結果は「極めて重要」とした上で、頭部外傷が認知症を引き起こす可能性があるのなら、その機序の解明が必要だと指摘。「外傷性脳損傷が最終的に認知症を引き起こす機序は複数ある。また、認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症では、脳の病変が発症の20~30年前から始まることも明らかにされている」と説明している。.Fillit氏は、「禁煙や節酒のほか、社会的なつながりの維持、ヘルメットやシートベルトの着用による頭部保護などの対策を講じることで、認知症の発症リスクを低減できる」と話している。また、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの既知のリスク因子の管理も重要だとしている。(HealthDay News 2021年3月10日).https://consumer.healthday.com/3-10-even-1-concussion-early-in-life-could-raise-your-odds-for-dementia-later-2650974248.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.