天気予報のチェックや音楽視聴、情報検索などにAmazon EchoやGoogle Homeなどのスマートスピーカーを利用する家庭は、米国では4世帯中1世帯に上る。こうした中、スマートスピーカーで心拍リズムをチェックするシステムを開発したことを、米ワシントン大学コンピューターサイエンス&エンジニアリング学部のShyamnath Gollakota氏らが、「Communications Biology」に3月9日報告した。.研究グループが報告したシステムは、コウモリが餌を見つけるときに利用する「エコロケーション(反響定位)」のように、スマートスピーカーから人間には聞こえない音波が放たれ、その反響から周囲の細かな状況を把握するというもの。システムには機械学習が組み込まれており、これにより心拍の正常・異常が判断される。その精度は、人間の呼吸と心臓の拍動による胸壁のわずかな動きを区別できるほど高いという。この技術の原理についてGollakota氏は、「動画を視聴しているときでも、あるいは複数の人が同じ部屋で話しているときでも、Alexa(Amazon Echoに搭載されているAIアシスタント)は私の声を聴き分けることができる。それと似たようなものだ」と説明する。.このシステムの利用者は、スピーカーから1~2フィート(30〜60cm)離れた場所にいる必要がある。研究グループは今回、このシステムの精度を検証するため、心房細動や心不全などの心疾患がある24人の入院患者と26人の健康な男女からスマートスピーカーと標準的な心拍のモニタリング装置(心電図)の両方で測定した心拍リズムのデータを収集して比較した。.その結果、このシステムにより、正常な心拍と不整脈の双方を、物理的な接触なしでモニタリングできることが明らかになった。健康な人たちで測定された1万2,280回の心拍において、スマートスピーカーによるR-R間隔(心室興奮から次の心室興奮までの時間、心拍間隔)を心電図での測定結果と比べたところ、絶対誤差の中央値は28ミリ秒(1,000分の28秒)以内だった。同様に、心疾患患者で測定された5,639回の心拍におけるスマートスピーカーと心電図でのR-R間隔の絶対誤差は30ミリ秒(1,000分の30秒)以内だった。.Gollakota氏は、「この研究では、心臓の移植手術を受けた患者や不整脈の患者など、さまざまな心疾患がある患者で、実際にこのシステムの精度を評価できた点が素晴らしかった」と話す。その上で、「健康な人だけでなく、実際に心疾患で入院中の人においてもこのような結果が得られたことから、この技術は極めて有望だ」としている。なお、研究グループは、自宅でくつろぎながら心臓の状態をモニタリングできるようにすることを、最終的な目標にしているという。.さらにGollakota氏は、「不整脈などの一部の心疾患は、頻繁に症状が現れるわけではない。したがって、机に置いておくだけで常に心拍のモニタリングをしてくれて、利用者に負担がかからず、触る必要もないデバイスには、かなり期待できる」と話す。また同氏は、新型コロナウイルス感染症の流行下でオンライン診療が普及したことを指摘し、「遠隔診療で患者の心臓の状態をモニタリングしたり不整脈の有無を確認するには、このようなツールがかなり有用となる可能性がある」との見方を示している。.現存する技術を使って利用者の健康管理に役立てようとする試みは、このようなスマートスピーカーのシステムだけではない。昨年、米ピュー研究所が実施した調査によると、米国人の約5人に1人がスマートウォッチを保有しており、その医療的な機能も飛躍的に増強されている。こうしたツールは一部の人々の命を救うこともあるが、余計な心配の種にもなりかねない。しかし、その精度が信頼できるものとなるなら、十分な医療保険に加入していない人や、近くに医療機関がない人でも健康状態のモニタリングが可能になり、医療格差の縮小に寄与する可能性はある。(HealthDay News 2021年3月12日).https://consumer.healthday.com/3-12-alexa-is-my-heart-beat-healthy-2650924410.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
天気予報のチェックや音楽視聴、情報検索などにAmazon EchoやGoogle Homeなどのスマートスピーカーを利用する家庭は、米国では4世帯中1世帯に上る。こうした中、スマートスピーカーで心拍リズムをチェックするシステムを開発したことを、米ワシントン大学コンピューターサイエンス&エンジニアリング学部のShyamnath Gollakota氏らが、「Communications Biology」に3月9日報告した。.研究グループが報告したシステムは、コウモリが餌を見つけるときに利用する「エコロケーション(反響定位)」のように、スマートスピーカーから人間には聞こえない音波が放たれ、その反響から周囲の細かな状況を把握するというもの。システムには機械学習が組み込まれており、これにより心拍の正常・異常が判断される。その精度は、人間の呼吸と心臓の拍動による胸壁のわずかな動きを区別できるほど高いという。この技術の原理についてGollakota氏は、「動画を視聴しているときでも、あるいは複数の人が同じ部屋で話しているときでも、Alexa(Amazon Echoに搭載されているAIアシスタント)は私の声を聴き分けることができる。それと似たようなものだ」と説明する。.このシステムの利用者は、スピーカーから1~2フィート(30〜60cm)離れた場所にいる必要がある。研究グループは今回、このシステムの精度を検証するため、心房細動や心不全などの心疾患がある24人の入院患者と26人の健康な男女からスマートスピーカーと標準的な心拍のモニタリング装置(心電図)の両方で測定した心拍リズムのデータを収集して比較した。.その結果、このシステムにより、正常な心拍と不整脈の双方を、物理的な接触なしでモニタリングできることが明らかになった。健康な人たちで測定された1万2,280回の心拍において、スマートスピーカーによるR-R間隔(心室興奮から次の心室興奮までの時間、心拍間隔)を心電図での測定結果と比べたところ、絶対誤差の中央値は28ミリ秒(1,000分の28秒)以内だった。同様に、心疾患患者で測定された5,639回の心拍におけるスマートスピーカーと心電図でのR-R間隔の絶対誤差は30ミリ秒(1,000分の30秒)以内だった。.Gollakota氏は、「この研究では、心臓の移植手術を受けた患者や不整脈の患者など、さまざまな心疾患がある患者で、実際にこのシステムの精度を評価できた点が素晴らしかった」と話す。その上で、「健康な人だけでなく、実際に心疾患で入院中の人においてもこのような結果が得られたことから、この技術は極めて有望だ」としている。なお、研究グループは、自宅でくつろぎながら心臓の状態をモニタリングできるようにすることを、最終的な目標にしているという。.さらにGollakota氏は、「不整脈などの一部の心疾患は、頻繁に症状が現れるわけではない。したがって、机に置いておくだけで常に心拍のモニタリングをしてくれて、利用者に負担がかからず、触る必要もないデバイスには、かなり期待できる」と話す。また同氏は、新型コロナウイルス感染症の流行下でオンライン診療が普及したことを指摘し、「遠隔診療で患者の心臓の状態をモニタリングしたり不整脈の有無を確認するには、このようなツールがかなり有用となる可能性がある」との見方を示している。.現存する技術を使って利用者の健康管理に役立てようとする試みは、このようなスマートスピーカーのシステムだけではない。昨年、米ピュー研究所が実施した調査によると、米国人の約5人に1人がスマートウォッチを保有しており、その医療的な機能も飛躍的に増強されている。こうしたツールは一部の人々の命を救うこともあるが、余計な心配の種にもなりかねない。しかし、その精度が信頼できるものとなるなら、十分な医療保険に加入していない人や、近くに医療機関がない人でも健康状態のモニタリングが可能になり、医療格差の縮小に寄与する可能性はある。(HealthDay News 2021年3月12日).https://consumer.healthday.com/3-12-alexa-is-my-heart-beat-healthy-2650924410.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.