近隣に緑が豊富であればあるほど、脳卒中の発症リスクは低下するという研究結果が報告された。米マイアミ大学ミラー医学部のWilliam Aitken氏らによるこの研究結果は、国際脳卒中学会(ISC 2021、3月17〜19日、オンライン開催)で発表された。Aitken氏は、「自然環境が健康に影響を与えることを示すエビデンスは数多くあるが、われわれは、とりわけ脳卒中に与える影響について検討したかった。この研究結果は、住んでいる場所がその人の健康に影響を与えることを示す、新たなエビデンスとなるものだ」と話している。.この研究で対象とされたのは、2010〜2011年に米フロリダ州、マイアミ・デイド郡に住んでいた65歳以上のメディケア受益者24万9,405人。Aitken氏らは、衛星データを使った植生指標である正規化植生指標(NDVI)の区画単位の平均指数と対象者の脳卒中、またはしばしば「ミニストローク」と呼ばれる一過性脳虚血発作(TIA)診断との関連を検討した。解析の際には、性別や収入、人種、民族などの因子の他に、脳卒中の発症リスクに影響を与える可能性がある糖尿病、高血圧、高コレステロールなどの健康要因についても考慮した。.その結果、緑が最も多い地域に住む人は、最も少ない地域に住む人と比べて、脳卒中、あるいはTIAの発症リスクが全体で20%低かった。具体的には、緑の最も多い地域に住む人では、TIAのオッズが26%低く、最も頻発するタイプの脳卒中である虚血性脳卒中のオッズが16%低かった。しかし、出血性脳卒中のオッズについては、統計的に有意な減少は認められなかった。.Aitken氏は、「全体としては、緑には注目すべき、明らかな効果がある」として、「緑の最も多い地域に住む人と比べた、緑の最も少ない地域に住んでいる人の脳卒中の発症リスク増加は、糖尿病の発症による脳卒中の発症リスク増加に匹敵するレベルのものかもしれない」と推定している。.本研究と同じようにメディケアのデータを利用した過去の研究では、緑地が心疾患および心筋梗塞の発症リスク低下に関連することが報告されている。Aitken氏らは、「対象者の緑の中での過ごし方や過ごした時間については把握できていないが、いくつかの可能性は考えられる」と話す。.この研究には関与していない、米アラバマ大学バーミンガム校のElizabeth Jackson氏は、「家の近くに散歩道や緑地があれば、たいていの人はそれらを利用するものだ」と話す。同氏は、そのような体を動かす機会は健康にとって「非常に重要」と強調する。逆に、そうしたスペースが近くにない人や、外出に関して安全性やその他の問題を抱えている人は、体を動かす機会が少なくなる。同氏はまた、緑地がストレスや大気汚染などの問題を和らげてくれる可能性についても示唆している。.Aitken氏は、「この研究結果は、指導者や政策立案者が、個人レベルではなく、集団レベルで脳卒中を予防するための対策を講じるのに役立つ可能性がある。多くの人を、定期的に運動をし、喫煙をやめ、血糖値とコレステロール値をチェックするよう説得するのは難しいが、緑豊かな環境を増やしてそこで過ごす時間を少し増やすように促すことなら可能だ。それにより、その地域に住む全ての人に良い影響がもたらされるだろう」と話している。.なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般的に予備的なものとみなされる。(American Heart Association News 2021年3月17日).https://consumer.healthday.com/aha-news-study-links-green-communities-to-lower-stroke-risk-2651114734.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.