多民族集団から算出したリスクスコアで、炎症性腸疾患(IBD)のリスクの予測精度が改善されることが、米マウントサイナイ医科大学のKyle Gettler氏らの後ろ向き研究で明らかになった。詳細は、「Gastroenterology」に2020年12月24日掲載された。 BioMeバイオバンクには、マウントサイナイ・プライマリケアクリニックを受診した多くの民族の遺伝学的データが記録されている。このBioMeバイオバンクから抽出した2万9,358例のエクソームシークエンスおよび一塩基多型(SNP)アレイのデータを用いて、IBDにおいて発現頻度が高い変異(コモンバリアント)やまれな変異(レアバリアント)が、IBDリスクの予測精度などに及ぼす影響を検討した。 多遺伝子リスクスコア(PRS)は、欧州人、アフリカ系米国人およびアシュケナージ系ユダヤ人のそれぞれにおいて、IBD症例と対照とを比較したゲノムワイド関連解析、およびこれらの3民族のデータセットを用いたメタゲノムワイド関連解析に基づいて算出した。次に、これらの3民族のPRSを組み合わせて、どの組み合わせでIBDリスクの予測精度が最も高くなるかについて、ロジスティック回帰モデルを用いて検討した。さらに、超早期発症型IBD(VEO-IBD)に関連する遺伝子のレアバリアントの浸透度も推定した。 異なる民族のPRSを組み合わせたリスクスコアをBioMeバイオバンクの対象者に当てはめてIBDリスクを算出したところ、全ての民族集団で予測精度が改善した。同様に、主に欧州人が登録されているUKバイオバンク(IBD患者5,635例、対照42万4,835例)に当てはめたところ、ここでも予測精度が改善した。ただし、アフリカ系米国人ではIBDリスクの予測精度が比較的低かった。これは、アフリカ系米国人の遺伝子が多様であることと、アフリカ系米国人を対象とした症例対照研究の対象者数が少なかったことによるものと考えられた。 VEO-IBDに関連する遺伝子であり、アフリカ系米国人で多いレアバリアントであるADAM17遺伝子とLRBA遺伝子は、多民族集団が登録されているBioMeバイオバンクでもVEO-IBDとの関連が再現され、優性モデルとしての浸透度が高いことが示された。 共著者の一人は、「今回の結果をみると、疾患リスクの予測精度を高めるため、そして、全ての民族集団で健康格差を是正していくためには、アフリカ系米国人のデータを含め、遺伝的多様性に関する情報をさらに蓄積していく必要がある」と述べている。(HealthDay News 2021年1月4日)https://consumer.healthday.com/risk-scores-for-mul….Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
多民族集団から算出したリスクスコアで、炎症性腸疾患(IBD)のリスクの予測精度が改善されることが、米マウントサイナイ医科大学のKyle Gettler氏らの後ろ向き研究で明らかになった。詳細は、「Gastroenterology」に2020年12月24日掲載された。 BioMeバイオバンクには、マウントサイナイ・プライマリケアクリニックを受診した多くの民族の遺伝学的データが記録されている。このBioMeバイオバンクから抽出した2万9,358例のエクソームシークエンスおよび一塩基多型(SNP)アレイのデータを用いて、IBDにおいて発現頻度が高い変異(コモンバリアント)やまれな変異(レアバリアント)が、IBDリスクの予測精度などに及ぼす影響を検討した。 多遺伝子リスクスコア(PRS)は、欧州人、アフリカ系米国人およびアシュケナージ系ユダヤ人のそれぞれにおいて、IBD症例と対照とを比較したゲノムワイド関連解析、およびこれらの3民族のデータセットを用いたメタゲノムワイド関連解析に基づいて算出した。次に、これらの3民族のPRSを組み合わせて、どの組み合わせでIBDリスクの予測精度が最も高くなるかについて、ロジスティック回帰モデルを用いて検討した。さらに、超早期発症型IBD(VEO-IBD)に関連する遺伝子のレアバリアントの浸透度も推定した。 異なる民族のPRSを組み合わせたリスクスコアをBioMeバイオバンクの対象者に当てはめてIBDリスクを算出したところ、全ての民族集団で予測精度が改善した。同様に、主に欧州人が登録されているUKバイオバンク(IBD患者5,635例、対照42万4,835例)に当てはめたところ、ここでも予測精度が改善した。ただし、アフリカ系米国人ではIBDリスクの予測精度が比較的低かった。これは、アフリカ系米国人の遺伝子が多様であることと、アフリカ系米国人を対象とした症例対照研究の対象者数が少なかったことによるものと考えられた。 VEO-IBDに関連する遺伝子であり、アフリカ系米国人で多いレアバリアントであるADAM17遺伝子とLRBA遺伝子は、多民族集団が登録されているBioMeバイオバンクでもVEO-IBDとの関連が再現され、優性モデルとしての浸透度が高いことが示された。 共著者の一人は、「今回の結果をみると、疾患リスクの予測精度を高めるため、そして、全ての民族集団で健康格差を是正していくためには、アフリカ系米国人のデータを含め、遺伝的多様性に関する情報をさらに蓄積していく必要がある」と述べている。(HealthDay News 2021年1月4日)https://consumer.healthday.com/risk-scores-for-mul….Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.