経皮的末梢神経刺激と呼ばれる技術が、術後の痛みの緩和に有効である可能性が、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のBrian Ilfeld氏らの研究で示された。この方法により術後のオピオイド系鎮痛薬の使用量を減らせるか、あるいは同薬が不要になる可能性があるという。研究結果の詳細は、「Anesthesiology」に4月15日発表された。. 経皮的末梢神経刺激では、細いリードを神経の近くまで挿入し、パルスジェネレーターにより疼痛部位に弱い電流を流して痛みの伝達を遮断する。具体的には、麻痺させた皮膚の部位から針を挿入し、超音波ガイド下でその針を標的とする神経から1cmほどの場所まで進めていき、針の内側に収められたリードを留置した上で、針を回収する。その後、回復室にいる患者に、50セント硬貨を2枚並べた程度のサイズ(6cm程度)のパルスジェネレーターを装着する。患者は自宅で、このパルスジェネレーターを用いて電気刺激をコントロールする。. Ilfeld氏らは今回、足や足首、膝、肩の手術を受けた65人の患者を対象に、このデバイスの有効性を検証した。なお、このような、デバイスを通した電気刺激や薬物投与により神経活動を調節する治療はニューロモデュレーションと呼ばれる。ニューロモデュレーションは、慢性疼痛を抱える患者には用いられているが、術後の急性疼痛に対する効果をランダム化比較試験で検討したのは、今回の研究が初めてだという。. 対象患者のうち31人はパルスジェネレーターを使用する群(介入群)に、残る34人は偽物のデバイスを使用する群(対照群)にランダムに割り付けられた。全ての対象者には、万一に備えて短時間作用型のオピオイド系鎮痛薬が処方された。試験開始2週間後には、術後の経過観察でリードが抜去された。患者の追跡期間は4カ月間だった。. その結果、介入群の術後の平均疼痛スコア(0〜10点、高いほど痛みが強い)は1.1点で、対照群(3.1点)に比べて有意に低かった。また、術後のオピオイド系鎮痛薬の使用量は、術後1週間で介入群5mg、対照群48mgであり、介入群では対照群に比べて大幅に少なかった。. こうした結果を受けてIlfeld氏は、「オピオイド系鎮痛薬の使用量を80%も減らすことができた上に、疼痛スコアも約60%改善した。経皮的末梢神経刺激による治療の有効性は、われわれの予想を大きく上回っていた」と述べている。ただ、結果は有望ではあるが、明確な主張の裏付けとなるには研究の規模が小さ過ぎると同氏は指摘する。また、このデバイスが有効な身体の範囲は比較的狭いため、治療領域が複数の神経領域に及ぶ場合には、効果が期待できないという。. この治療法について、米国麻酔科学会(ASA)疼痛医学委員会の委員長であるDavid Dickerson氏は、「新たな抗炎症薬や神経ブロックなど、さまざまな疼痛管理法が開発されてきたが、術後にコントロールできない中等度から重度の疼痛が発生する頻度は15~20年前からほとんど変わっていない」と指摘。その上で、この治療法により大幅な疼痛軽減とオピオイド系鎮痛薬の使用量削減につながるのであれば、「この状況がようやく大きく変わることになるだろう」と期待を寄せている。. また、この画期的な治療法は米国で蔓延するオピオイド系鎮痛薬乱用を食い止める一助となる可能性がある。米国での同薬の乱用者数は200万人に上り、それによる死者が1日当たり90人に達すると推定されている。その多くは、術後の疼痛管理を目的とした同薬の処方がきっかけで、使用をやめられなくなった人たちであるという。(HealthDay News 2021年4月21日).https://consumer.healthday.com/4-20-nerve-zap-pain….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
経皮的末梢神経刺激と呼ばれる技術が、術後の痛みの緩和に有効である可能性が、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のBrian Ilfeld氏らの研究で示された。この方法により術後のオピオイド系鎮痛薬の使用量を減らせるか、あるいは同薬が不要になる可能性があるという。研究結果の詳細は、「Anesthesiology」に4月15日発表された。. 経皮的末梢神経刺激では、細いリードを神経の近くまで挿入し、パルスジェネレーターにより疼痛部位に弱い電流を流して痛みの伝達を遮断する。具体的には、麻痺させた皮膚の部位から針を挿入し、超音波ガイド下でその針を標的とする神経から1cmほどの場所まで進めていき、針の内側に収められたリードを留置した上で、針を回収する。その後、回復室にいる患者に、50セント硬貨を2枚並べた程度のサイズ(6cm程度)のパルスジェネレーターを装着する。患者は自宅で、このパルスジェネレーターを用いて電気刺激をコントロールする。. Ilfeld氏らは今回、足や足首、膝、肩の手術を受けた65人の患者を対象に、このデバイスの有効性を検証した。なお、このような、デバイスを通した電気刺激や薬物投与により神経活動を調節する治療はニューロモデュレーションと呼ばれる。ニューロモデュレーションは、慢性疼痛を抱える患者には用いられているが、術後の急性疼痛に対する効果をランダム化比較試験で検討したのは、今回の研究が初めてだという。. 対象患者のうち31人はパルスジェネレーターを使用する群(介入群)に、残る34人は偽物のデバイスを使用する群(対照群)にランダムに割り付けられた。全ての対象者には、万一に備えて短時間作用型のオピオイド系鎮痛薬が処方された。試験開始2週間後には、術後の経過観察でリードが抜去された。患者の追跡期間は4カ月間だった。. その結果、介入群の術後の平均疼痛スコア(0〜10点、高いほど痛みが強い)は1.1点で、対照群(3.1点)に比べて有意に低かった。また、術後のオピオイド系鎮痛薬の使用量は、術後1週間で介入群5mg、対照群48mgであり、介入群では対照群に比べて大幅に少なかった。. こうした結果を受けてIlfeld氏は、「オピオイド系鎮痛薬の使用量を80%も減らすことができた上に、疼痛スコアも約60%改善した。経皮的末梢神経刺激による治療の有効性は、われわれの予想を大きく上回っていた」と述べている。ただ、結果は有望ではあるが、明確な主張の裏付けとなるには研究の規模が小さ過ぎると同氏は指摘する。また、このデバイスが有効な身体の範囲は比較的狭いため、治療領域が複数の神経領域に及ぶ場合には、効果が期待できないという。. この治療法について、米国麻酔科学会(ASA)疼痛医学委員会の委員長であるDavid Dickerson氏は、「新たな抗炎症薬や神経ブロックなど、さまざまな疼痛管理法が開発されてきたが、術後にコントロールできない中等度から重度の疼痛が発生する頻度は15~20年前からほとんど変わっていない」と指摘。その上で、この治療法により大幅な疼痛軽減とオピオイド系鎮痛薬の使用量削減につながるのであれば、「この状況がようやく大きく変わることになるだろう」と期待を寄せている。. また、この画期的な治療法は米国で蔓延するオピオイド系鎮痛薬乱用を食い止める一助となる可能性がある。米国での同薬の乱用者数は200万人に上り、それによる死者が1日当たり90人に達すると推定されている。その多くは、術後の疼痛管理を目的とした同薬の処方がきっかけで、使用をやめられなくなった人たちであるという。(HealthDay News 2021年4月21日).https://consumer.healthday.com/4-20-nerve-zap-pain….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.