炎症性腸疾患(IBD)患者では、喫煙が大腸新生物(CRN)の発生に関与していることが、フローニンゲン大学(オランダ)のKimberley W.J. van der Sloot氏らの後ろ向き研究で明らかになった。詳細は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に1月13日掲載された。. IBD患者では、腸粘膜の炎症に起因するCRNのリスクが高いことが明らかにされている。IBDのうち潰瘍性大腸炎(UC)の炎症は喫煙で軽減するとされている一方、クローン病(CD)の炎症は喫煙で悪化することが知られている。喫煙は一般集団ではCRNリスクを上昇させるが、IBD患者におけるCRN発生との関連に関する研究はごく少ない。そこで、著者らは、IBD患者におけるCRNの発生と能動・受動喫煙との関連を検討すべく後ろ向きコホート研究を行った。. 対象者は、オランダの全国ネットワーク病理診断レジストリであるPALGAに登録されているIBD患者1,386例とした。対象者のCRNの発生状況を調査し、関連するリスク因子および喫煙状態を調べた。また、対象者を、CRNの発生に関するサーベイランス・ガイドラインに基づいてリスク分けし、諸因子および能動・受動喫煙が、IBDの経過中に発生するCRNにどのように関与するかをCox回帰モデルで評価した。. 対象者のうち153例(11.5%)でCRNが発生した。CD患者でCRN発生の有意なリスク因子であったのは、CRNの既往歴を有する一親等家族がいることで、724例のCD患者のうち、CRNの既往歴を有する一親等家族がいる患者の割合は、CRNのない患者では5.4%(661例中28例)であったのに対し、CRNが発生した患者では17.8%(62例中8例)に達していた(P=0.001)。UC患者でCRN発生の有意なリスク因子であったのは、炎症後ポリープ(post-inflammatory polyp)があることで、589例のUC患者のうち、このポリープが認められた患者の割合は、CRNのない患者では15.8%(500例中79例)であったのに対し、CRNが発生した患者では28.1%(89例中25例)に達していた(P=0.005)。. UC患者では、受動喫煙によるCRNリスクへの影響は認められなかったが、元喫煙者のCRNリスクは非喫煙者と比べて有意に高かった〔多変量調整ハザード比(HR)1.73、95%信頼区間(CI)1.05~2.85〕。CD患者では、非喫煙者と比較して、能動喫煙者(同2.20、1.02~4.75)および受動喫煙者(同1.87、1.09~3.20)でCRNリスクが有意に高かった。. CD患者におけるCRNの無病生存期間予測に現在使用されている多変量調整Cox回帰モデルに、小児期の受動喫煙(P=0.001)および現在の受動喫煙(P=0.029)を追加して対数尤度比検定を行った結果、モデルの適合度が有意に改善した。. 著者らは、「本研究により、IBD患者におけるCRNの発生に喫煙が大きな役割を果たしていることが初めて明らかになった。IBD患者のCRNを早期発見するために現在行われているサーベイランスに、喫煙という因子を加えることによって、リスクをより良好に判別できるようになると考えられる。また、CD患者に禁煙の重要性をもっと強く伝えると、長期的なCRN発生リスクは低くなっていくのではないか」と述べている。. なお、2名の著者が、Takeda、Johnson and Johnson、Tramedico、Ferring Pharmaceutical Company、AbbVie、Mundipharma、PharmacosmosおよびJanssen Pharmaceuticalsとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年2月26日).https://consumer.healthday.com/cigarette-smoke-tie….Abstract/Full TextCopyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
炎症性腸疾患(IBD)患者では、喫煙が大腸新生物(CRN)の発生に関与していることが、フローニンゲン大学(オランダ)のKimberley W.J. van der Sloot氏らの後ろ向き研究で明らかになった。詳細は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に1月13日掲載された。. IBD患者では、腸粘膜の炎症に起因するCRNのリスクが高いことが明らかにされている。IBDのうち潰瘍性大腸炎(UC)の炎症は喫煙で軽減するとされている一方、クローン病(CD)の炎症は喫煙で悪化することが知られている。喫煙は一般集団ではCRNリスクを上昇させるが、IBD患者におけるCRN発生との関連に関する研究はごく少ない。そこで、著者らは、IBD患者におけるCRNの発生と能動・受動喫煙との関連を検討すべく後ろ向きコホート研究を行った。. 対象者は、オランダの全国ネットワーク病理診断レジストリであるPALGAに登録されているIBD患者1,386例とした。対象者のCRNの発生状況を調査し、関連するリスク因子および喫煙状態を調べた。また、対象者を、CRNの発生に関するサーベイランス・ガイドラインに基づいてリスク分けし、諸因子および能動・受動喫煙が、IBDの経過中に発生するCRNにどのように関与するかをCox回帰モデルで評価した。. 対象者のうち153例(11.5%)でCRNが発生した。CD患者でCRN発生の有意なリスク因子であったのは、CRNの既往歴を有する一親等家族がいることで、724例のCD患者のうち、CRNの既往歴を有する一親等家族がいる患者の割合は、CRNのない患者では5.4%(661例中28例)であったのに対し、CRNが発生した患者では17.8%(62例中8例)に達していた(P=0.001)。UC患者でCRN発生の有意なリスク因子であったのは、炎症後ポリープ(post-inflammatory polyp)があることで、589例のUC患者のうち、このポリープが認められた患者の割合は、CRNのない患者では15.8%(500例中79例)であったのに対し、CRNが発生した患者では28.1%(89例中25例)に達していた(P=0.005)。. UC患者では、受動喫煙によるCRNリスクへの影響は認められなかったが、元喫煙者のCRNリスクは非喫煙者と比べて有意に高かった〔多変量調整ハザード比(HR)1.73、95%信頼区間(CI)1.05~2.85〕。CD患者では、非喫煙者と比較して、能動喫煙者(同2.20、1.02~4.75)および受動喫煙者(同1.87、1.09~3.20)でCRNリスクが有意に高かった。. CD患者におけるCRNの無病生存期間予測に現在使用されている多変量調整Cox回帰モデルに、小児期の受動喫煙(P=0.001)および現在の受動喫煙(P=0.029)を追加して対数尤度比検定を行った結果、モデルの適合度が有意に改善した。. 著者らは、「本研究により、IBD患者におけるCRNの発生に喫煙が大きな役割を果たしていることが初めて明らかになった。IBD患者のCRNを早期発見するために現在行われているサーベイランスに、喫煙という因子を加えることによって、リスクをより良好に判別できるようになると考えられる。また、CD患者に禁煙の重要性をもっと強く伝えると、長期的なCRN発生リスクは低くなっていくのではないか」と述べている。. なお、2名の著者が、Takeda、Johnson and Johnson、Tramedico、Ferring Pharmaceutical Company、AbbVie、Mundipharma、PharmacosmosおよびJanssen Pharmaceuticalsとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年2月26日).https://consumer.healthday.com/cigarette-smoke-tie….Abstract/Full TextCopyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.