アルコール摂取が関連して、2020年に世界で74万人が新たにがんを発症したとする研究結果が発表された。この数値は、同年に新たに診断された全てのがんの4%に相当するという。世界保健機関(WHO)のがん対策専門組織である、国際がん研究機関(IARC、フランス)のHarriet Rumgay氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Oncology」に7月13日掲載された。 論文の筆頭著者であるRumgay氏はアルコール摂取の世界的な傾向について、「ヨーロッパ諸国では減少傾向にある一方で、中国やインドなどのアジアとサハラ以南のアフリカで増加傾向にある。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによって、複数の国で飲酒者率が上昇したことを示すエビデンスがある」とし、パンデミック中に新たにアルコールを飲み始めた人がパンデミック終息後、習慣的飲酒者に移行してしまうことに懸念を表している。同氏によると、アルコール摂取によるがん発症リスクの上昇は個人レベルではそれほど大きいものではないが、社会全体で見ればがん患者の増加につながると考えられるとのことだ。 Rumgay氏らはIARCのデータを解析し、アルコール摂取が発がんに関連しているとの十分なエビデンスのあるがんを特定した上で、国際的ながん統計である「GLOBOCAN2020」などの疫学データを用いて、アルコール摂取によるがん発症者数を推計した。 その結果、2020年の1年間で74万1,300人(95%不確定区間55万8,500~95万1,200)がアルコール摂取が関連して新たにがんを発症。これは全ての新規がん患者の4.1%(同3.1~5.3)に相当した。そのうち4人に3人以上(76.7%)に当たる56万8,700人(同42万2,500~73万1,100)は男性だった。 部位別に見ると食道がんが最多で18万9,700人(同11万900~27万4,600)、2位が肝臓がんであり15万4,700人(同4万3,700~28万1,500)、続いて乳がんが9万8,300人(同6万8,200~13万500)だった。 発がんに対するアルコール摂取の人口寄与割合(PAF)を地域別に見ると、東アジア(5.7%)や中央ヨーロッパおよび東欧(5.6%)で高く、西アジア(0.7%)や北アフリカ(0.3%)では低かった。国別では、モンゴルが最も高く(9.8%)、クウェートが最も低かった(0%)。その他、米国は3.0%、中国は6.2%、日本は3.7%だった。 アルコールに起因する発がんは、全体の46.7%、34万6,400人(同22万7,900~48万9,400)に上る大量飲酒者の存在の影響が大きかった。ただし、論文共著者の一人である、カナダの中毒・精神衛生センターのJürgen Rehm氏は、「アルコールの摂取量にかかわりなく、すべての飲酒が何らかの発がんリスクと関連している」と話す。 同氏は、アルコール摂取によって、DNA損傷を引き起こすことのある有害物質が体内に生じたり、ホルモン分泌に影響が及ぶ可能性を指摘する。また、タバコをはじめとする発がん性物質の悪影響をアルコールが増強させる可能性もあるとのことだ。 Rumgay氏は、「アルコール摂取とがんリスクとの関連の認識を高める啓発活動を早急に始めるべきだ。アルコールを入手しにくくしたり、製品に健康被害警告ラベルを貼付したり、販売を禁止するなどの公衆衛生上の対策は、アルコール摂取によりがんを発症する人を減らす戦略として検討に値する」と語っている。同氏は、欧州でアルコールへの課税などにより摂取量が減少した事実を挙げて、この手法は世界のほかの地域でも有効と考えられると述べている。(HealthDay News 2021年7月14日).https://consumer.healthday.com/b-7-14-alcohol-tied….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
アルコール摂取が関連して、2020年に世界で74万人が新たにがんを発症したとする研究結果が発表された。この数値は、同年に新たに診断された全てのがんの4%に相当するという。世界保健機関(WHO)のがん対策専門組織である、国際がん研究機関(IARC、フランス)のHarriet Rumgay氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Oncology」に7月13日掲載された。 論文の筆頭著者であるRumgay氏はアルコール摂取の世界的な傾向について、「ヨーロッパ諸国では減少傾向にある一方で、中国やインドなどのアジアとサハラ以南のアフリカで増加傾向にある。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによって、複数の国で飲酒者率が上昇したことを示すエビデンスがある」とし、パンデミック中に新たにアルコールを飲み始めた人がパンデミック終息後、習慣的飲酒者に移行してしまうことに懸念を表している。同氏によると、アルコール摂取によるがん発症リスクの上昇は個人レベルではそれほど大きいものではないが、社会全体で見ればがん患者の増加につながると考えられるとのことだ。 Rumgay氏らはIARCのデータを解析し、アルコール摂取が発がんに関連しているとの十分なエビデンスのあるがんを特定した上で、国際的ながん統計である「GLOBOCAN2020」などの疫学データを用いて、アルコール摂取によるがん発症者数を推計した。 その結果、2020年の1年間で74万1,300人(95%不確定区間55万8,500~95万1,200)がアルコール摂取が関連して新たにがんを発症。これは全ての新規がん患者の4.1%(同3.1~5.3)に相当した。そのうち4人に3人以上(76.7%)に当たる56万8,700人(同42万2,500~73万1,100)は男性だった。 部位別に見ると食道がんが最多で18万9,700人(同11万900~27万4,600)、2位が肝臓がんであり15万4,700人(同4万3,700~28万1,500)、続いて乳がんが9万8,300人(同6万8,200~13万500)だった。 発がんに対するアルコール摂取の人口寄与割合(PAF)を地域別に見ると、東アジア(5.7%)や中央ヨーロッパおよび東欧(5.6%)で高く、西アジア(0.7%)や北アフリカ(0.3%)では低かった。国別では、モンゴルが最も高く(9.8%)、クウェートが最も低かった(0%)。その他、米国は3.0%、中国は6.2%、日本は3.7%だった。 アルコールに起因する発がんは、全体の46.7%、34万6,400人(同22万7,900~48万9,400)に上る大量飲酒者の存在の影響が大きかった。ただし、論文共著者の一人である、カナダの中毒・精神衛生センターのJürgen Rehm氏は、「アルコールの摂取量にかかわりなく、すべての飲酒が何らかの発がんリスクと関連している」と話す。 同氏は、アルコール摂取によって、DNA損傷を引き起こすことのある有害物質が体内に生じたり、ホルモン分泌に影響が及ぶ可能性を指摘する。また、タバコをはじめとする発がん性物質の悪影響をアルコールが増強させる可能性もあるとのことだ。 Rumgay氏は、「アルコール摂取とがんリスクとの関連の認識を高める啓発活動を早急に始めるべきだ。アルコールを入手しにくくしたり、製品に健康被害警告ラベルを貼付したり、販売を禁止するなどの公衆衛生上の対策は、アルコール摂取によりがんを発症する人を減らす戦略として検討に値する」と語っている。同氏は、欧州でアルコールへの課税などにより摂取量が減少した事実を挙げて、この手法は世界のほかの地域でも有効と考えられると述べている。(HealthDay News 2021年7月14日).https://consumer.healthday.com/b-7-14-alcohol-tied….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.