全粒穀物の摂取により、ウエスト周囲長が増えにくくなり、血圧や血糖の上昇も抑制されるようだ。米国で1948年から続けられ、数々の重要なエビデンスを発信してきたフラミンガム研究からの新たな知見であり、米タフツ大学のNicola McKeown氏らの論文が、「The Journal of Nutrition」に7月13日掲載された。 McKeown氏は、「この新たな知見は、全粒穀物の摂取とウエスト周囲長や血圧、血糖との関係を示したものであり、因果関係までは分からない。しかし、ウエスト周囲長、血圧、血糖の上昇は、全て心臓病の発症に寄与するリスク因子である」と述べている。 この研究は、フラミンガム研究の参加者の第二世代、3,121人(平均年齢54.9±0.2歳、女性54.5%、BMI27.2±0.1)を、中央値18.1年追跡した研究。追跡期間中は約4年ごとに、全粒穀物や精製穀物の摂取量を含む食習慣、および喫煙や飲酒、身体活動状況などの情報を収集した。ベースライン時点の全粒穀物摂取量は、平均16.0±0.28g/日だった。 年齢や性別、BMI、摂取エネルギー量、喫煙・飲酒・身体活動量、糖尿病・高血圧・脂質異常症、閉経状態などで調整後、全粒穀物の摂取量が多い人ほど、ウエスト周囲長や血圧、血糖の上昇幅が少ないという関係が示された。具体的には以下のとおり。 ウエスト周囲長は、全粒穀物の摂取量が最も少ない群(8g/日未満)では4年ごとに3.01±0.13cm増えていたのに対し、摂取量が最も多い群(48g/日以上)の4年間ごとの変化は1.84±0.23cmであった(傾向性P<0.001)。収縮期血圧は、同順に1.32±0.28mmHg、0.55±0.49mmHgの上昇(傾向性P=0.009)、空腹時血糖値は2.51±0.20mg/dL、1.04±0.38mg/dLの上昇(傾向性P=0.001)。また、中性脂肪やHDL-コレステロールについては有意でないながらも、全粒穀物の摂取量が多い群では変化の幅が少なかった。 食事調査から、全粒穀物の大半は、全粒小麦パンと、手軽に食べられるように加工されたシリアル食品で占められていることが分かった。一方、精製穀物は主としてパスタと白パンとして摂取されていた。 今回の研究結果に関連してMcKeown氏は、「全粒穀物はおそらく複数のメカニズムを介して心血管リスク因子に対し抑制的に働くと考えられる。詳細は不明だが、例えば体脂肪が増えるのを抑制したり、食後の血糖値の急上昇を防いだり、少量の食事で満腹感を得られたり、腸内細菌叢を健康的に保ったりすることが関与しているのではないか」と述べている。 さらに、全粒穀物に含まれているマグネシウムなどの栄養素は、血圧や血糖の管理に役立つ可能性もあるという。「全粒穀物に含まれている多くの植物性化学物質が、それぞれ単独で、もしくは他の栄養素と相乗的に、健康維持に働いているのかもしれない。そのメカニズムの解明はたいへん刺激的な研究テーマだ」と同氏は語っている。 この研究に関与していない、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのSamantha Heller氏は、「全粒穀物には食物繊維、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質などの健康に良い成分が大量に含まれている。体重増加や炎症、血糖値の上昇を抑制し、消化管の機能を助け、一部のがんのリスクを低下させることも、これまでの研究で示唆されている」と解説。 また同氏によると、食事に全粒穀物を追加することは、それほど難しいことではないという。具体的に、「オートミールや全粒粉クラッカーなど、手軽に入手可能な全粒穀物製品が少なくない。成分表示ラベルを見て、全粒穀物の含有量を確認するのも良い方法だ」とアドバイスしている。(HealthDay News 2021年7月13日).https://consumer.healthday.com/7-13-whole-grains-e….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
全粒穀物の摂取により、ウエスト周囲長が増えにくくなり、血圧や血糖の上昇も抑制されるようだ。米国で1948年から続けられ、数々の重要なエビデンスを発信してきたフラミンガム研究からの新たな知見であり、米タフツ大学のNicola McKeown氏らの論文が、「The Journal of Nutrition」に7月13日掲載された。 McKeown氏は、「この新たな知見は、全粒穀物の摂取とウエスト周囲長や血圧、血糖との関係を示したものであり、因果関係までは分からない。しかし、ウエスト周囲長、血圧、血糖の上昇は、全て心臓病の発症に寄与するリスク因子である」と述べている。 この研究は、フラミンガム研究の参加者の第二世代、3,121人(平均年齢54.9±0.2歳、女性54.5%、BMI27.2±0.1)を、中央値18.1年追跡した研究。追跡期間中は約4年ごとに、全粒穀物や精製穀物の摂取量を含む食習慣、および喫煙や飲酒、身体活動状況などの情報を収集した。ベースライン時点の全粒穀物摂取量は、平均16.0±0.28g/日だった。 年齢や性別、BMI、摂取エネルギー量、喫煙・飲酒・身体活動量、糖尿病・高血圧・脂質異常症、閉経状態などで調整後、全粒穀物の摂取量が多い人ほど、ウエスト周囲長や血圧、血糖の上昇幅が少ないという関係が示された。具体的には以下のとおり。 ウエスト周囲長は、全粒穀物の摂取量が最も少ない群(8g/日未満)では4年ごとに3.01±0.13cm増えていたのに対し、摂取量が最も多い群(48g/日以上)の4年間ごとの変化は1.84±0.23cmであった(傾向性P<0.001)。収縮期血圧は、同順に1.32±0.28mmHg、0.55±0.49mmHgの上昇(傾向性P=0.009)、空腹時血糖値は2.51±0.20mg/dL、1.04±0.38mg/dLの上昇(傾向性P=0.001)。また、中性脂肪やHDL-コレステロールについては有意でないながらも、全粒穀物の摂取量が多い群では変化の幅が少なかった。 食事調査から、全粒穀物の大半は、全粒小麦パンと、手軽に食べられるように加工されたシリアル食品で占められていることが分かった。一方、精製穀物は主としてパスタと白パンとして摂取されていた。 今回の研究結果に関連してMcKeown氏は、「全粒穀物はおそらく複数のメカニズムを介して心血管リスク因子に対し抑制的に働くと考えられる。詳細は不明だが、例えば体脂肪が増えるのを抑制したり、食後の血糖値の急上昇を防いだり、少量の食事で満腹感を得られたり、腸内細菌叢を健康的に保ったりすることが関与しているのではないか」と述べている。 さらに、全粒穀物に含まれているマグネシウムなどの栄養素は、血圧や血糖の管理に役立つ可能性もあるという。「全粒穀物に含まれている多くの植物性化学物質が、それぞれ単独で、もしくは他の栄養素と相乗的に、健康維持に働いているのかもしれない。そのメカニズムの解明はたいへん刺激的な研究テーマだ」と同氏は語っている。 この研究に関与していない、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのSamantha Heller氏は、「全粒穀物には食物繊維、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質などの健康に良い成分が大量に含まれている。体重増加や炎症、血糖値の上昇を抑制し、消化管の機能を助け、一部のがんのリスクを低下させることも、これまでの研究で示唆されている」と解説。 また同氏によると、食事に全粒穀物を追加することは、それほど難しいことではないという。具体的に、「オートミールや全粒粉クラッカーなど、手軽に入手可能な全粒穀物製品が少なくない。成分表示ラベルを見て、全粒穀物の含有量を確認するのも良い方法だ」とアドバイスしている。(HealthDay News 2021年7月13日).https://consumer.healthday.com/7-13-whole-grains-e….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.