新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大防止のため、ジムでのトレーニング中もマスク着用が求められる状態が続いている。マスクを着用しながらトレーニングを行うことで、呼吸機能や心臓への負担が増すのではないかと不安になる人もいることだろう。しかし、健康な人であれば、その心配はほとんど無用であることを示すデータが報告された。米クリーブランド・クリニックのMatthew Kampert氏らの研究によるもので、結果が「JAMA Network Open」に6月30日、レターとして掲載された。 Kampert氏らの研究は、全ての研究参加者に、マスクなし、布製マスクの着用、N95マスク(微粒子の吸入量抑制に優れているマスク)の着用という3つの条件でトレッドミル運動負荷試験を行うという、クロスオーバー法による研究。研究参加者は、日常的に身体活動を行っている疾患のない20人の非喫煙者。男性が11人で平均年齢39±11歳、BMI25.0±2.4、女性は9人で35±11歳、BMI25.1±4.2。疲労困憊に至るまでトレッドミルの運動負荷を徐々に上げていき、最高酸素摂取量(VO2peak)や心拍数、自覚的運動強度などを比較した。試験条件の施行順序は参加者ごとにランダム化した。 結果に影響を及ぼし得る因子を調整後、VO2peakや心拍数に条件間の有意差はなく、安全性への懸念は認められなかった。また、自覚的運動強度にも有意差がなかった。それにもかかわらず運動持続時間は、マスク非着用条件の591±145秒に対し、布製マスク着用条件では548±147秒、N95マスク着用条件は545±141秒であり、マスクを着用した時の方が短いという有意差が見られた(P=0.047)。 マスク着用条件でのトレッドミル走行中に研究参加者が走行を中止した理由の大半は、マスクの不快感によるものだった。特に主観的な呼吸抵抗感が、マスク非着用条件と着用条件とで差が最も大きかった。具体的には10点満点のスコアで、マスク非着用条件での呼吸抵抗感が0点(四分位範囲0~0)であったのに対して、布製マスク着用条件では7.0点(同5.3~8.0)、N95マスク着用条件では7.0点(同5.5~8.3)と有意差が見られた(P<0.001)。 そのほかにも、湿気や熱気などにも以下のように条件間の有意差が見られた。湿気についてはマスク非着用条件の0点(同0~1.0)に対して、布製マスク着用条件は6.3点(同3.5~7.8)、N95マスク着用条件は7.0点(同5.5~8.0)、熱気については同順に0点(同0~1.5)、6.3点(同3.3~7.5)、7.0点(同5.0~8.0)だった(いずれもP<0.001)。 以上の結果から著者らは、マスクを着用してのトレーニングは一般的に安全と考えられると述べている。ただし、呼吸抵抗感などの主観的な負荷が増大し、結果としてマスク着用時にはつらさが増すことは避けられない可能性があるとしている。 なお、本研究の参加者は全て健康な人であり、心臓や呼吸器の慢性疾患のある人は除外されていた。Kampert氏は、「基礎疾患のある人は、マスク着用の有無にかかわらず、運動をすることの可否について医師に相談してほしい」と注意を促している。(HealthDay News 2021年7月2日).https://consumer.healthday.com/b-7-2-masks-at-the-….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大防止のため、ジムでのトレーニング中もマスク着用が求められる状態が続いている。マスクを着用しながらトレーニングを行うことで、呼吸機能や心臓への負担が増すのではないかと不安になる人もいることだろう。しかし、健康な人であれば、その心配はほとんど無用であることを示すデータが報告された。米クリーブランド・クリニックのMatthew Kampert氏らの研究によるもので、結果が「JAMA Network Open」に6月30日、レターとして掲載された。 Kampert氏らの研究は、全ての研究参加者に、マスクなし、布製マスクの着用、N95マスク(微粒子の吸入量抑制に優れているマスク)の着用という3つの条件でトレッドミル運動負荷試験を行うという、クロスオーバー法による研究。研究参加者は、日常的に身体活動を行っている疾患のない20人の非喫煙者。男性が11人で平均年齢39±11歳、BMI25.0±2.4、女性は9人で35±11歳、BMI25.1±4.2。疲労困憊に至るまでトレッドミルの運動負荷を徐々に上げていき、最高酸素摂取量(VO2peak)や心拍数、自覚的運動強度などを比較した。試験条件の施行順序は参加者ごとにランダム化した。 結果に影響を及ぼし得る因子を調整後、VO2peakや心拍数に条件間の有意差はなく、安全性への懸念は認められなかった。また、自覚的運動強度にも有意差がなかった。それにもかかわらず運動持続時間は、マスク非着用条件の591±145秒に対し、布製マスク着用条件では548±147秒、N95マスク着用条件は545±141秒であり、マスクを着用した時の方が短いという有意差が見られた(P=0.047)。 マスク着用条件でのトレッドミル走行中に研究参加者が走行を中止した理由の大半は、マスクの不快感によるものだった。特に主観的な呼吸抵抗感が、マスク非着用条件と着用条件とで差が最も大きかった。具体的には10点満点のスコアで、マスク非着用条件での呼吸抵抗感が0点(四分位範囲0~0)であったのに対して、布製マスク着用条件では7.0点(同5.3~8.0)、N95マスク着用条件では7.0点(同5.5~8.3)と有意差が見られた(P<0.001)。 そのほかにも、湿気や熱気などにも以下のように条件間の有意差が見られた。湿気についてはマスク非着用条件の0点(同0~1.0)に対して、布製マスク着用条件は6.3点(同3.5~7.8)、N95マスク着用条件は7.0点(同5.5~8.0)、熱気については同順に0点(同0~1.5)、6.3点(同3.3~7.5)、7.0点(同5.0~8.0)だった(いずれもP<0.001)。 以上の結果から著者らは、マスクを着用してのトレーニングは一般的に安全と考えられると述べている。ただし、呼吸抵抗感などの主観的な負荷が増大し、結果としてマスク着用時にはつらさが増すことは避けられない可能性があるとしている。 なお、本研究の参加者は全て健康な人であり、心臓や呼吸器の慢性疾患のある人は除外されていた。Kampert氏は、「基礎疾患のある人は、マスク着用の有無にかかわらず、運動をすることの可否について医師に相談してほしい」と注意を促している。(HealthDay News 2021年7月2日).https://consumer.healthday.com/b-7-2-masks-at-the-….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.