妊娠糖尿病や妊娠前から糖尿病であった母親の子どもは、近視や遠視などの屈折異常が多いというデータが報告された。オーフス大学(デンマーク)のJiong Li氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetologia」に8月17日掲載された。 屈折異常とは、目のスクリーンである網膜にピントが合わない状態のことで、具体的には、近視や遠視、乱視を指す。軽度の屈折異常は眼鏡で光学的に調整可能だが、幼児期の重度の屈折異常は不可逆的な視覚障害に至ることがある。本論文の著者は、「幼児の屈折異常をより早期に発見し介入することが、生涯にわたってプラスに働くのではないか」と述べている。 屈折異常はここ数十年増加し続けており、その原因は非遺伝的因子の影響が大きいと考えられている。例えば、パソコンなどで長時間のディスプレイ操作を行ったり、野外活動が少ないことは、軽度から中等度の屈折異常の非遺伝的リスク因子として知られている。その一方で、近視や遠視などの程度がより強い、高度屈折異常も増加している原因は明らかでない。この点について著者らは、「出生前に何らかの変化が既に生じていることも想定される」と、ジャーナル発のニュースリリースに記している。 この研究は、デンマークの全国規模の住民対象コホート研究のデータを用いて行われた。1977~2016年に生まれた247万580人の子どもを長期間追跡し、母親の妊娠前からの糖尿病または妊娠糖尿病と、子どもの高度屈折異常との関連を調べた。追跡は子どもの出生時点からスタートし、25歳に至るか2016年12月31日に至るまでの間に高度屈折異常と診断されるか、もしくは移住や死亡による追跡打ち切りまで継続した。 この間の糖代謝異常妊婦は5万6,419人(2.3%)で、1型糖尿病が0.9%、2型糖尿病が0.3%、妊娠糖尿病が1.1%だった。また、糖代謝異常妊婦は1977年の0.4%から2016年の6.5%へと経年的に増加していた。糖代謝異常妊婦は糖代謝正常の妊婦に比較して、高齢で過去の妊娠回数が多く、教育歴が長く独居者が多かった。 最大25年間の追跡期間中に、糖代謝正常妊婦の子ども1万9,695人と、糖代謝異常妊婦の子ども553人が高度屈折異常と診断されていた。交絡因子を調整後、糖代謝異常妊婦の子どもは、高度屈折異常のリスクが39%有意に高いことが明らかになった。屈折異常のタイプ別に見ても、遠視は37%、近視は34%、乱視は58%、いずれも有意にハイリスクだった。 妊婦の糖尿病のタイプ別の比較では、1型糖尿病妊婦の子どもでは32%のリスク上昇、2型糖尿病妊婦の子どもでは68%のリスク上昇が見られた。また、母親が糖尿病性の合併症を有していなければ18%のリスク上昇であるのに対して、糖尿病性合併症を有している妊婦の子どものリスクは105%増と、2倍以上ハイリスクだった。 このほかに、小児期には遠視が多く発生し、10代から若年成人期には近視が増えることが分かった。この違いについて著者らは、「成長による目の形の自然な変化に起因しているのではないか」と推測。加えて、「年齢が高くなり学校教育の時間が長くなるに従い、近視のリスクが高まる可能性がある」としている。 また著者らは今回の研究全体を総括し、「39%のリスク増加という数値自体は極端に大きなリスク差ではないかもしれない。しかし、世界の屈折異常の人口の多さを考慮すれば、予防介入により絶対数の大幅な減少につながる可能性があり、意義は大きい」と述べている。(HealthDay News 2021年8月18日).https://consumer.healthday.com/b-8-18-diabetes-in-….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
妊娠糖尿病や妊娠前から糖尿病であった母親の子どもは、近視や遠視などの屈折異常が多いというデータが報告された。オーフス大学(デンマーク)のJiong Li氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetologia」に8月17日掲載された。 屈折異常とは、目のスクリーンである網膜にピントが合わない状態のことで、具体的には、近視や遠視、乱視を指す。軽度の屈折異常は眼鏡で光学的に調整可能だが、幼児期の重度の屈折異常は不可逆的な視覚障害に至ることがある。本論文の著者は、「幼児の屈折異常をより早期に発見し介入することが、生涯にわたってプラスに働くのではないか」と述べている。 屈折異常はここ数十年増加し続けており、その原因は非遺伝的因子の影響が大きいと考えられている。例えば、パソコンなどで長時間のディスプレイ操作を行ったり、野外活動が少ないことは、軽度から中等度の屈折異常の非遺伝的リスク因子として知られている。その一方で、近視や遠視などの程度がより強い、高度屈折異常も増加している原因は明らかでない。この点について著者らは、「出生前に何らかの変化が既に生じていることも想定される」と、ジャーナル発のニュースリリースに記している。 この研究は、デンマークの全国規模の住民対象コホート研究のデータを用いて行われた。1977~2016年に生まれた247万580人の子どもを長期間追跡し、母親の妊娠前からの糖尿病または妊娠糖尿病と、子どもの高度屈折異常との関連を調べた。追跡は子どもの出生時点からスタートし、25歳に至るか2016年12月31日に至るまでの間に高度屈折異常と診断されるか、もしくは移住や死亡による追跡打ち切りまで継続した。 この間の糖代謝異常妊婦は5万6,419人(2.3%)で、1型糖尿病が0.9%、2型糖尿病が0.3%、妊娠糖尿病が1.1%だった。また、糖代謝異常妊婦は1977年の0.4%から2016年の6.5%へと経年的に増加していた。糖代謝異常妊婦は糖代謝正常の妊婦に比較して、高齢で過去の妊娠回数が多く、教育歴が長く独居者が多かった。 最大25年間の追跡期間中に、糖代謝正常妊婦の子ども1万9,695人と、糖代謝異常妊婦の子ども553人が高度屈折異常と診断されていた。交絡因子を調整後、糖代謝異常妊婦の子どもは、高度屈折異常のリスクが39%有意に高いことが明らかになった。屈折異常のタイプ別に見ても、遠視は37%、近視は34%、乱視は58%、いずれも有意にハイリスクだった。 妊婦の糖尿病のタイプ別の比較では、1型糖尿病妊婦の子どもでは32%のリスク上昇、2型糖尿病妊婦の子どもでは68%のリスク上昇が見られた。また、母親が糖尿病性の合併症を有していなければ18%のリスク上昇であるのに対して、糖尿病性合併症を有している妊婦の子どものリスクは105%増と、2倍以上ハイリスクだった。 このほかに、小児期には遠視が多く発生し、10代から若年成人期には近視が増えることが分かった。この違いについて著者らは、「成長による目の形の自然な変化に起因しているのではないか」と推測。加えて、「年齢が高くなり学校教育の時間が長くなるに従い、近視のリスクが高まる可能性がある」としている。 また著者らは今回の研究全体を総括し、「39%のリスク増加という数値自体は極端に大きなリスク差ではないかもしれない。しかし、世界の屈折異常の人口の多さを考慮すれば、予防介入により絶対数の大幅な減少につながる可能性があり、意義は大きい」と述べている。(HealthDay News 2021年8月18日).https://consumer.healthday.com/b-8-18-diabetes-in-….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.