米国で腎移植を受けた患者の長期生存率は、この30年で上昇したことが、新たなレビューで報告された。レビューの筆頭著者である米ピッツバーグ大学のSundaram Hariharan氏は、「1996年から現在までに、腎移植後の患者の生存率と移植片の生着率の双方が、十分に向上している」と述べている。研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine」8月19日号に掲載された。 末期腎不全患者の多くにとって、一生涯にわたって透析を受けるよりも腎移植を受ける方が選択肢としては好ましい。しかし一部の患者では、移植が最終的に失敗に終わる。それゆえ、移植片の生着期間の延長は、患者の寿命を延ばし、生活の質(QOL)を高め、医療費削減につながるだけでなく、移植待ち患者が利用できる腎臓の数が増えることも意味する。米国では、約9万人が移植を待っているという。 Hariharan氏らは今回、1990年代半ば以降、現在までの間に、腎移植後の生存率、人口統計学的特性、リスク変数がどのように変わったかをレビューした。その結果、献腎移植(死体腎移植)を受けた患者の5年生存率は、1996~1999年の66.2%から、2012~2015年の78.2%へと上昇したことが明らかになった。また、生体腎移植を受けた患者の生存率についても、1996~1999年の79.5%から2012~2015年の88.1%へと向上したことが判明した。 Hariharan氏は、「患者やドナーが肥満、糖尿病、その他の疾患を持つ割合は、残念ながら増えているが、それでも生存率は向上している」と述べる。そして、「研究や腎移植患者のケアを通して、多くのことが分かってきている」として、組織適合性判定、臓器配分システム、外科的手技、免疫抑制薬、術後医療管理などの改善が生存率の向上に寄与していると説明する。 米国では腎移植患者の長期生存率が向上しているとはいえ、他の先進国に比べるとまだ低い。「その理由はおそらく、免疫抑制薬へのメディケアの適用が移植後3年までに限定されているためである」とHariharan氏らは指摘する。移植を受けた患者は、身体が移植臓器を拒絶するのを防ぐために、免疫抑制薬を生涯服用し続ける必要がある。2020年に成立した新しい法律により、今後は移植患者に必須の薬剤には生涯保険が適用されるようになる予定だという。「この法律の成立は、移植患者にとって大きな勝利であり、今後10年で、腎移植後の生存率はさらに向上すると予想される」とHariharan氏は述べている。 著者らは、腎移植患者では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡率が高く、深刻な脅威となっていることを強調。COVID-19ワクチンは感染率や重症度の低減に有用ではあるが、移植患者では一般集団に比べるとワクチンの効果が劣る。そのため、移植患者には3回目の追加接種が有効であるとの考えを示している。 Hariharan氏はさらに、「腎移植患者は、米疾病対策センター(CDC)のガイドラインに従って、ソーシャルディスタンスの維持やマスク着用を守ることが極めて重要である」と付け加えている。(HealthDay News 2021年8月24日).https://consumer.healthday.com/b-8-19-u-s-kidney-t….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
米国で腎移植を受けた患者の長期生存率は、この30年で上昇したことが、新たなレビューで報告された。レビューの筆頭著者である米ピッツバーグ大学のSundaram Hariharan氏は、「1996年から現在までに、腎移植後の患者の生存率と移植片の生着率の双方が、十分に向上している」と述べている。研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine」8月19日号に掲載された。 末期腎不全患者の多くにとって、一生涯にわたって透析を受けるよりも腎移植を受ける方が選択肢としては好ましい。しかし一部の患者では、移植が最終的に失敗に終わる。それゆえ、移植片の生着期間の延長は、患者の寿命を延ばし、生活の質(QOL)を高め、医療費削減につながるだけでなく、移植待ち患者が利用できる腎臓の数が増えることも意味する。米国では、約9万人が移植を待っているという。 Hariharan氏らは今回、1990年代半ば以降、現在までの間に、腎移植後の生存率、人口統計学的特性、リスク変数がどのように変わったかをレビューした。その結果、献腎移植(死体腎移植)を受けた患者の5年生存率は、1996~1999年の66.2%から、2012~2015年の78.2%へと上昇したことが明らかになった。また、生体腎移植を受けた患者の生存率についても、1996~1999年の79.5%から2012~2015年の88.1%へと向上したことが判明した。 Hariharan氏は、「患者やドナーが肥満、糖尿病、その他の疾患を持つ割合は、残念ながら増えているが、それでも生存率は向上している」と述べる。そして、「研究や腎移植患者のケアを通して、多くのことが分かってきている」として、組織適合性判定、臓器配分システム、外科的手技、免疫抑制薬、術後医療管理などの改善が生存率の向上に寄与していると説明する。 米国では腎移植患者の長期生存率が向上しているとはいえ、他の先進国に比べるとまだ低い。「その理由はおそらく、免疫抑制薬へのメディケアの適用が移植後3年までに限定されているためである」とHariharan氏らは指摘する。移植を受けた患者は、身体が移植臓器を拒絶するのを防ぐために、免疫抑制薬を生涯服用し続ける必要がある。2020年に成立した新しい法律により、今後は移植患者に必須の薬剤には生涯保険が適用されるようになる予定だという。「この法律の成立は、移植患者にとって大きな勝利であり、今後10年で、腎移植後の生存率はさらに向上すると予想される」とHariharan氏は述べている。 著者らは、腎移植患者では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡率が高く、深刻な脅威となっていることを強調。COVID-19ワクチンは感染率や重症度の低減に有用ではあるが、移植患者では一般集団に比べるとワクチンの効果が劣る。そのため、移植患者には3回目の追加接種が有効であるとの考えを示している。 Hariharan氏はさらに、「腎移植患者は、米疾病対策センター(CDC)のガイドラインに従って、ソーシャルディスタンスの維持やマスク着用を守ることが極めて重要である」と付け加えている。(HealthDay News 2021年8月24日).https://consumer.healthday.com/b-8-19-u-s-kidney-t….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.