多発性硬化症(MS)患者では、他の自己免疫疾患患者またはこれらの疾患のない人と比較して、初回診断前に国際疾病分類第10版(ICD-10)の改訂版の特定のコードが記録される頻度が高いことが、「Neurology」に6月15日掲載された研究において明らかにされた。 MS患者に対しては、初回診断の数年前からの受診状況と症状発生の特性を評価することで、早期の診断および治療が容易となる可能性がある。ミュンヘン工科大学(ドイツ)のChristiane Gasperi氏らは、ICD-10のドイツの改訂版によりコード化した2005~2017年の外来請求データを用いて、MS患者と3つの対照(クローン病患者、乾癬患者、これらの自己免疫疾患のない人)において、初回診断前の5年間における疾患および症状の発生の違いを体系的に評価する症例対照研究を実施した。特定のICD-10コードが少なくとも1回記録されたかどうかを示すのにバイナリ予測変数を使用した。無条件ロジスティック回帰モデルを用いて、これらの予測変数とMSとの関連を評価し、効果の尺度としてそれぞれのオッズ比(OR)によって関連を数値化した。 研究対象期間中、新たに診断されたMS患者は1万262人、クローン病患者は1万5,502人、乾癬患者は9万8,432人、これらの自己免疫疾患が新たに診断されなかった人は7万3,430人であった。MS患者では、自己免疫疾患のない対照と比較して、診断前に43件のICD-10コードが記録される頻度が高いことが明らかになった。これらのコードのうち、14件は神経学的疾患に関連する神経系・脳血管系の障害または症状であった。そのほか、視覚障害、椎間板障害、めまいまたはよろめき感、運動障害、尿路系の障害、皮膚感覚障害などに関連するコードが記録されていた。MSのORは、43件のコードのほぼ全てで1.0を超えていた。また、乾癬患者およびクローン病患者と比較したところ、43件のコードのうち、それぞれ35件および19件がMSの高いORと有意に関連していた。 ただし、これら43件のコードの多くは、脱髄イベントによって引き起こされ得る神経学的疾患であり、初回診断の5年前にこれらのコードの記録がある患者を除外して感度分析を実施した結果、MSに有意に関連するコードは特定できなかった。また、MSのORは7件のコードで低く、そのうち4件は上気道感染症に関連しており、感度分析では、それらのコードとMSとの関連がさらに顕著であった。 Gasperi氏は、「今回の結果は、MS患者の多くが最初の脱髄イベントの時点では診断されず、数年後に診断されることが多いことを示唆している。MSの診断が早ければ早いほど、より適切な治療が可能である。MSの初期症状が見落とされる可能性があるかどうかを詳しく検討する必要がある。そうすることで、より早い段階でMSを診断し、治療を早期に開始できるであろう」と述べている。 なお、数名の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。著者の一人は、MS患者のサブ集団におけるKIR4.1抗体の検出、インターフェロンに対する中和抗体の遺伝的決定因子に関する特許を保有している。(HealthDay News 2021年6月25日)https://consumer.healthday.com/icd-10-codes-more-f….Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Editorial (subscription or payment may be required).Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
多発性硬化症(MS)患者では、他の自己免疫疾患患者またはこれらの疾患のない人と比較して、初回診断前に国際疾病分類第10版(ICD-10)の改訂版の特定のコードが記録される頻度が高いことが、「Neurology」に6月15日掲載された研究において明らかにされた。 MS患者に対しては、初回診断の数年前からの受診状況と症状発生の特性を評価することで、早期の診断および治療が容易となる可能性がある。ミュンヘン工科大学(ドイツ)のChristiane Gasperi氏らは、ICD-10のドイツの改訂版によりコード化した2005~2017年の外来請求データを用いて、MS患者と3つの対照(クローン病患者、乾癬患者、これらの自己免疫疾患のない人)において、初回診断前の5年間における疾患および症状の発生の違いを体系的に評価する症例対照研究を実施した。特定のICD-10コードが少なくとも1回記録されたかどうかを示すのにバイナリ予測変数を使用した。無条件ロジスティック回帰モデルを用いて、これらの予測変数とMSとの関連を評価し、効果の尺度としてそれぞれのオッズ比(OR)によって関連を数値化した。 研究対象期間中、新たに診断されたMS患者は1万262人、クローン病患者は1万5,502人、乾癬患者は9万8,432人、これらの自己免疫疾患が新たに診断されなかった人は7万3,430人であった。MS患者では、自己免疫疾患のない対照と比較して、診断前に43件のICD-10コードが記録される頻度が高いことが明らかになった。これらのコードのうち、14件は神経学的疾患に関連する神経系・脳血管系の障害または症状であった。そのほか、視覚障害、椎間板障害、めまいまたはよろめき感、運動障害、尿路系の障害、皮膚感覚障害などに関連するコードが記録されていた。MSのORは、43件のコードのほぼ全てで1.0を超えていた。また、乾癬患者およびクローン病患者と比較したところ、43件のコードのうち、それぞれ35件および19件がMSの高いORと有意に関連していた。 ただし、これら43件のコードの多くは、脱髄イベントによって引き起こされ得る神経学的疾患であり、初回診断の5年前にこれらのコードの記録がある患者を除外して感度分析を実施した結果、MSに有意に関連するコードは特定できなかった。また、MSのORは7件のコードで低く、そのうち4件は上気道感染症に関連しており、感度分析では、それらのコードとMSとの関連がさらに顕著であった。 Gasperi氏は、「今回の結果は、MS患者の多くが最初の脱髄イベントの時点では診断されず、数年後に診断されることが多いことを示唆している。MSの診断が早ければ早いほど、より適切な治療が可能である。MSの初期症状が見落とされる可能性があるかどうかを詳しく検討する必要がある。そうすることで、より早い段階でMSを診断し、治療を早期に開始できるであろう」と述べている。 なお、数名の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。著者の一人は、MS患者のサブ集団におけるKIR4.1抗体の検出、インターフェロンに対する中和抗体の遺伝的決定因子に関する特許を保有している。(HealthDay News 2021年6月25日)https://consumer.healthday.com/icd-10-codes-more-f….Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Editorial (subscription or payment may be required).Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.