新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、がん治療が停滞している実態が米国から報告された。2020年の1年間に行われた病理検査は前年より1割以上少なく、パンデミック初期に当たる4月に限ると4割以上減少していたという。米国がん協会(ACS)のY. Robin Yabroff氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the National Cancer Institute」に6月28日掲載された。 Yabroff氏らは、米国ジョージア州とルイジアナ州のがん登録データベースを用いて、2019年と2020年の病理検査の施行件数を比較した。COVID-19パンデミックによるがん治療の停滞や遅延を指摘するデータはこれまでにも報告されているが、それらの研究は解析対象期間が短期に限られており、2020年通年のパンデミックの影響を検討した研究はこの報告が初めて。 まず、両年の病理検査の総件数を比較すると、2019年の29万4,113件に対して2020年は26万4,208件で2万9,905件少なく、変化率は-10.2(95%信頼区間-10.2~-10.2)だった。月ごとに比較した場合、4月が最も大きく減少しており、変化率は-42.8%に及んだ。2020年の1年間を通して、月ごとの病理件数が2019年の実績を超えた月は存在しなかった。 年齢層別に見ると、絶対数が最も大きく減少していたのは50代であり、5,633件の減少、変化率は-10.0%(同-10.0~-10.1)で、続いて70代の5,385件減、-7.9%(同-7.9~-7.9)だった。一方、変化率が最も大きかったのは18歳未満であり、2,366件減、-38.3%(同-38.3~-38.5)、続いて80歳以上の3,233件減、-11.6%(同-11.6~-11.7)だった。 がんの部位別では、絶対数の減少幅が最大だったのは乳がんの5,947件減、-9.0%(同-9.0~-9.1)であり、変化率が最も大きかったのは肺がんの5,844件減、-17.4%(同-17.4~-17.5)だった。乳がんや肺がんのほかには、大腸がんが2,693件減、-12.0%(同-11.9~-12.0)、前立腺がんが897件減、-5.8%(同-5.7~-5.9)であり、その他のがんは1万4,524件減、-9.3%(同-9.3~-9.3)だった。 この結果をYabroff氏は、「乳がんや大腸がんなど、これまで効果的なスクリーニング検査が実施されてきたがんでは、精査が必要とされる多数の疑い症例が存在するにもかかわらず、その診断確定が先延ばしされている実態が明らかになった。さらに、小児や若年成人などの従来から効果的なスクリーニング体制が確立されていないがんも含めて、2020年にはあらゆる年齢層、あらゆる部位のがんの診断が大幅に減少していた」と結論付けている。加えて、「これらの結果は、大半のがん患者の治療開始が遅延していたことを示唆するものだ」と影響の大きさを指摘している。(HealthDay News 2021年6月28日)https://consumer.healthday.com/10-2-percent-decrea….Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、がん治療が停滞している実態が米国から報告された。2020年の1年間に行われた病理検査は前年より1割以上少なく、パンデミック初期に当たる4月に限ると4割以上減少していたという。米国がん協会(ACS)のY. Robin Yabroff氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the National Cancer Institute」に6月28日掲載された。 Yabroff氏らは、米国ジョージア州とルイジアナ州のがん登録データベースを用いて、2019年と2020年の病理検査の施行件数を比較した。COVID-19パンデミックによるがん治療の停滞や遅延を指摘するデータはこれまでにも報告されているが、それらの研究は解析対象期間が短期に限られており、2020年通年のパンデミックの影響を検討した研究はこの報告が初めて。 まず、両年の病理検査の総件数を比較すると、2019年の29万4,113件に対して2020年は26万4,208件で2万9,905件少なく、変化率は-10.2(95%信頼区間-10.2~-10.2)だった。月ごとに比較した場合、4月が最も大きく減少しており、変化率は-42.8%に及んだ。2020年の1年間を通して、月ごとの病理件数が2019年の実績を超えた月は存在しなかった。 年齢層別に見ると、絶対数が最も大きく減少していたのは50代であり、5,633件の減少、変化率は-10.0%(同-10.0~-10.1)で、続いて70代の5,385件減、-7.9%(同-7.9~-7.9)だった。一方、変化率が最も大きかったのは18歳未満であり、2,366件減、-38.3%(同-38.3~-38.5)、続いて80歳以上の3,233件減、-11.6%(同-11.6~-11.7)だった。 がんの部位別では、絶対数の減少幅が最大だったのは乳がんの5,947件減、-9.0%(同-9.0~-9.1)であり、変化率が最も大きかったのは肺がんの5,844件減、-17.4%(同-17.4~-17.5)だった。乳がんや肺がんのほかには、大腸がんが2,693件減、-12.0%(同-11.9~-12.0)、前立腺がんが897件減、-5.8%(同-5.7~-5.9)であり、その他のがんは1万4,524件減、-9.3%(同-9.3~-9.3)だった。 この結果をYabroff氏は、「乳がんや大腸がんなど、これまで効果的なスクリーニング検査が実施されてきたがんでは、精査が必要とされる多数の疑い症例が存在するにもかかわらず、その診断確定が先延ばしされている実態が明らかになった。さらに、小児や若年成人などの従来から効果的なスクリーニング体制が確立されていないがんも含めて、2020年にはあらゆる年齢層、あらゆる部位のがんの診断が大幅に減少していた」と結論付けている。加えて、「これらの結果は、大半のがん患者の治療開始が遅延していたことを示唆するものだ」と影響の大きさを指摘している。(HealthDay News 2021年6月28日)https://consumer.healthday.com/10-2-percent-decrea….Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.