赤ワインやベリーなどの摂取量が多い人には、血圧が高い人が少ないというデータが報告された。また、これらの食品の摂取量の多さと腸内細菌の多様性の高さとの関連も明らかになり、それが良好な血圧に関与している可能性も示された。英クイーンズ大学のAedin Cassidy氏らの研究によるもので、詳細は「Hypertension」に8月23日掲載された。 腸内細菌叢が、ヒトの健康にさまざまな影響を与えることが明らかになりつつある。しかし、その複雑なメカニズムの解明に向けた研究はまだ緒についたばかりだ。腸内細菌叢のどのような組成が「健康的」と言えるのかもよく分かっていない。今のところ、腸内細菌の多様性が高いほど、より健康的だと考える研究者が多い。 今回の研究で有益性が示された赤ワインやベリーなどは、フラボノイドと呼ばれる植物性抗酸化物質の含有量が高いという共通点を持つ。論文の上席著者であるCassidy氏は、「腸内細菌はフラボノイドを利用する上で重要な役割を果たしている。腸内細菌叢の組成は人によって大きく異なり、腸内細菌の多様性が高いことは、フラボノイドが豊富な食品が持つ、心臓や血管の健康上のメリットをより高めるようだ」と語っている。 Cassidy氏らの研究の対象は、25~82歳のドイツ人904人。詳細な食事アンケートにより食品摂取量を把握し、血圧測定値、および糞便を用いた腸内細菌叢の分析結果との関連を検討した。その結果、フラボノイド摂取量が多い人は収縮期血圧(SBP)が低いことが分かった。具体的には、フラボノイド摂取量の第3三分位群(摂取量の多い上位3分の1)のSBPは、第1三分位群(下位3分の1)に比較して-2.9%(95%信頼区間-5.1~-0.7)であり、有意に低かった。 摂取している食品との関連では、赤ワインやベリーの摂取量が多いことが、SBPや脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差。動脈硬化の指標の一つ)の低さと関連していた。例えば、赤ワインの摂取量の第4四分位群(上位4分の1)は第1四分位群(下位4分の1)に比較して、SBPは-2.6%(95%信頼区間-4.8~-0.3)、脈圧は-6.1%(同-10.1~-2.0)であり、ベリーに関しては同順に-2.9%(同-5.2~-0.6)、-5.5%(同-9.6~-1.2)だった。 赤ワインやベリーの摂取量が多いことと、腸内細菌叢の多様性との関連も明らかになった。具体的には、それらの摂取量の第4四分位群と第1四分位群との間に、多様性の指標に有意差が認められた〔α多様性の群間差が赤ワインは0.03(同0.01~0.1)、ベリーは0.1(同0.03~0.1)〕。また、ベリーやリンゴ、ナシの摂取量が多いことは、パラバクテロイデスという腸内細菌が少ないことと関連していた。 この研究からは、フラボノイドが豊富な食品の摂取量と血圧との関連の15.2%は、腸内細菌の多様性によって説明可能であることが分かった。 米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部の栄養学部門を統括し、米国心臓協会(AHA)でボランティア活動に従事しているLinda Van Horn氏は、この研究結果について、「食生活が健康に及ぼす詳細なメカニズムを、研究者が深く理解しようとする際に役立つ知見」と評価。しかし、一般生活者の視点に立つのなら、全体的な食事の質に焦点を当てた方が良いと語る。その理由を、「人々は個々の'栄養素'を食べているのではなく'食品'を食べている。そして食品に含まれている栄養素が生体内で利用される時には、相互作用が生じるからだ」と同氏は解説する。 栄養素の利用が食事内容全体の影響を受けるのと同様に、腸内細菌叢も食事の影響を受ける。最近の研究から、野菜や果物、魚、ナッツ類、食物繊維が豊富な穀物の摂取量が多い人は、炎症を抑制するように働く腸内細菌の割合が高く、対照的に、肉や加工食品、砂糖の摂取量が多い人は、炎症を促す腸内細菌の割合が高いことが分かってきた。 Van Horn氏は、「加工食品の代わりに全粒穀物を多く食べることは、腸内細菌叢に良い影響を与える。しかし好ましい影響はそればかりでなく、塩と砂糖などの摂取量を減らすことにもつながる」と述べている。なお、本研究では赤ワインのメリットが示されたが、AHAは、飲酒にはリスクがあり、心臓へのメリットを期待して赤ワインを飲む習慣を取り入れるべきでないとしている。(HealthDay News 2021年8月24日).https://consumer.healthday.com/8-24-a-little-wine-….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
赤ワインやベリーなどの摂取量が多い人には、血圧が高い人が少ないというデータが報告された。また、これらの食品の摂取量の多さと腸内細菌の多様性の高さとの関連も明らかになり、それが良好な血圧に関与している可能性も示された。英クイーンズ大学のAedin Cassidy氏らの研究によるもので、詳細は「Hypertension」に8月23日掲載された。 腸内細菌叢が、ヒトの健康にさまざまな影響を与えることが明らかになりつつある。しかし、その複雑なメカニズムの解明に向けた研究はまだ緒についたばかりだ。腸内細菌叢のどのような組成が「健康的」と言えるのかもよく分かっていない。今のところ、腸内細菌の多様性が高いほど、より健康的だと考える研究者が多い。 今回の研究で有益性が示された赤ワインやベリーなどは、フラボノイドと呼ばれる植物性抗酸化物質の含有量が高いという共通点を持つ。論文の上席著者であるCassidy氏は、「腸内細菌はフラボノイドを利用する上で重要な役割を果たしている。腸内細菌叢の組成は人によって大きく異なり、腸内細菌の多様性が高いことは、フラボノイドが豊富な食品が持つ、心臓や血管の健康上のメリットをより高めるようだ」と語っている。 Cassidy氏らの研究の対象は、25~82歳のドイツ人904人。詳細な食事アンケートにより食品摂取量を把握し、血圧測定値、および糞便を用いた腸内細菌叢の分析結果との関連を検討した。その結果、フラボノイド摂取量が多い人は収縮期血圧(SBP)が低いことが分かった。具体的には、フラボノイド摂取量の第3三分位群(摂取量の多い上位3分の1)のSBPは、第1三分位群(下位3分の1)に比較して-2.9%(95%信頼区間-5.1~-0.7)であり、有意に低かった。 摂取している食品との関連では、赤ワインやベリーの摂取量が多いことが、SBPや脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差。動脈硬化の指標の一つ)の低さと関連していた。例えば、赤ワインの摂取量の第4四分位群(上位4分の1)は第1四分位群(下位4分の1)に比較して、SBPは-2.6%(95%信頼区間-4.8~-0.3)、脈圧は-6.1%(同-10.1~-2.0)であり、ベリーに関しては同順に-2.9%(同-5.2~-0.6)、-5.5%(同-9.6~-1.2)だった。 赤ワインやベリーの摂取量が多いことと、腸内細菌叢の多様性との関連も明らかになった。具体的には、それらの摂取量の第4四分位群と第1四分位群との間に、多様性の指標に有意差が認められた〔α多様性の群間差が赤ワインは0.03(同0.01~0.1)、ベリーは0.1(同0.03~0.1)〕。また、ベリーやリンゴ、ナシの摂取量が多いことは、パラバクテロイデスという腸内細菌が少ないことと関連していた。 この研究からは、フラボノイドが豊富な食品の摂取量と血圧との関連の15.2%は、腸内細菌の多様性によって説明可能であることが分かった。 米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部の栄養学部門を統括し、米国心臓協会(AHA)でボランティア活動に従事しているLinda Van Horn氏は、この研究結果について、「食生活が健康に及ぼす詳細なメカニズムを、研究者が深く理解しようとする際に役立つ知見」と評価。しかし、一般生活者の視点に立つのなら、全体的な食事の質に焦点を当てた方が良いと語る。その理由を、「人々は個々の'栄養素'を食べているのではなく'食品'を食べている。そして食品に含まれている栄養素が生体内で利用される時には、相互作用が生じるからだ」と同氏は解説する。 栄養素の利用が食事内容全体の影響を受けるのと同様に、腸内細菌叢も食事の影響を受ける。最近の研究から、野菜や果物、魚、ナッツ類、食物繊維が豊富な穀物の摂取量が多い人は、炎症を抑制するように働く腸内細菌の割合が高く、対照的に、肉や加工食品、砂糖の摂取量が多い人は、炎症を促す腸内細菌の割合が高いことが分かってきた。 Van Horn氏は、「加工食品の代わりに全粒穀物を多く食べることは、腸内細菌叢に良い影響を与える。しかし好ましい影響はそればかりでなく、塩と砂糖などの摂取量を減らすことにもつながる」と述べている。なお、本研究では赤ワインのメリットが示されたが、AHAは、飲酒にはリスクがあり、心臓へのメリットを期待して赤ワインを飲む習慣を取り入れるべきでないとしている。(HealthDay News 2021年8月24日).https://consumer.healthday.com/8-24-a-little-wine-….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.