低用量の異なる4種類の降圧薬を1剤にした配合剤により、標準的な薬物治療に比較し優れた血圧管理が達成されたとする研究結果が報告された。シドニー大学(オーストラリア)のClara Chow氏らが行った無作為化二重盲検試験の結果であり、詳細は「The Lancet」に8月29日掲載された。この研究に用いられた配合剤は1剤に、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(イルベサルタン)37.5mg、カルシウム拮抗薬(アムロジピン)1.25mg、利尿薬(インダパミド)0.625mg、β遮断薬(ビソプロロール)2.5mgを含む"4-in-1"製剤。各薬剤の用量はいずれも単剤で処方される場合に比べて、ごく低用量に設定されていた。研究参加者は、未治療または単剤で治療されている18歳以上の成人高血圧患者591人(平均年齢59±12歳、男性60%、白人82%)。無作為に2群に分け、300人には配合剤が処方され、他の291人には単剤(イルベサルタン150mg)で治療が開始された。両群ともに降圧効果が不十分の場合には処方が追加された。主要評価項目は12週間での診察室(医療従事者のいない環境での自動測定)で測定した収縮期血圧(SBP)の群間差で、二次評価項目として、140/90mmHg未満の達成率、安全性などが評価された。サブ解析として、12カ月間の変化も比較検討された。ベースライン時の診察室血圧は141±13/85±10mmHgだった。12週目までに、配合剤群の15%、対照群の40%に処方が追加されていた。SBPは配合剤群の方が6.9mmHg(95%信頼区間4.9~8.9)低く、140/90mmHg未満達成率は配合剤群76%、対照群58%だった〔相対リスク1.30(同1.15~1.47)〕。有害事象により治療を中止した割合は、配合剤群4.0%、対照群2.4%で有意差がなかった(P=0.27)。この結果をChow氏は、「ごく低用量の降圧薬の配合剤は、単剤で開始し段階的に追加するという一般的なアプローチよりも効果的だった」とまとめている。同氏によると、12カ月経過した時点でも、両群の間には血圧レベルの差が存在しており、配合剤群の大半はそれのみで管理されていたという。Chow氏はまた副作用のリスクという点でも、配合剤にはメリットがあると述べている。「各薬剤の用量が4分の1であっても効果は4分の1ではなく、実際には60%に近い。かつ、それらは異なる作用機序で血圧を下げ、相乗的に働く。したがって、より低用量の組み合わせでより大きな降圧効果を得られる」とのことだ。一方、米ワシントン大学のEugene Yang氏は、「異なる薬剤を1剤にまとめるという戦略は、患者の服薬順守率の改善につながる」と、配合剤のメリットを指摘する。また、米国心臓協会(AHA)の高血圧治療ガイドライン著者陣の一人である米バージニア医科大学のRobert Carey氏は、「降圧薬の副作用の多くは用量と相関している。ごく低用量で用いられる薬剤の副作用のリスクはわずかなものであろう」とし、「医療へのアクセスが限られている米国の遠隔地や発展途上国では、このような配合剤のメリットが発揮される」と述べている。この研究結果を臨床に生かす上での障害としてChow氏は、「この配合剤の開発を手掛けようとする大手製薬企業がまだないことだ」とし、今回の研究結果が製薬企業の開発意欲を刺激することに期待を表している。またYang氏は、「今回の研究は平均血圧141/85mmHgの対象に介入し、140/90mmHg未満の達成率を検討している。より血圧の高い人に長期間介入する臨床試験が望まれる。さらに、心臓発作や脳卒中、心不全など、生命予後を左右する高血圧性疾患のリスク抑制効果の確認も必要だ」と述べている。(HealthDay News 2021年9月1日).https://consumer.healthday.com/9-1-4-in-1-blood-pr….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
低用量の異なる4種類の降圧薬を1剤にした配合剤により、標準的な薬物治療に比較し優れた血圧管理が達成されたとする研究結果が報告された。シドニー大学(オーストラリア)のClara Chow氏らが行った無作為化二重盲検試験の結果であり、詳細は「The Lancet」に8月29日掲載された。この研究に用いられた配合剤は1剤に、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(イルベサルタン)37.5mg、カルシウム拮抗薬(アムロジピン)1.25mg、利尿薬(インダパミド)0.625mg、β遮断薬(ビソプロロール)2.5mgを含む"4-in-1"製剤。各薬剤の用量はいずれも単剤で処方される場合に比べて、ごく低用量に設定されていた。研究参加者は、未治療または単剤で治療されている18歳以上の成人高血圧患者591人(平均年齢59±12歳、男性60%、白人82%)。無作為に2群に分け、300人には配合剤が処方され、他の291人には単剤(イルベサルタン150mg)で治療が開始された。両群ともに降圧効果が不十分の場合には処方が追加された。主要評価項目は12週間での診察室(医療従事者のいない環境での自動測定)で測定した収縮期血圧(SBP)の群間差で、二次評価項目として、140/90mmHg未満の達成率、安全性などが評価された。サブ解析として、12カ月間の変化も比較検討された。ベースライン時の診察室血圧は141±13/85±10mmHgだった。12週目までに、配合剤群の15%、対照群の40%に処方が追加されていた。SBPは配合剤群の方が6.9mmHg(95%信頼区間4.9~8.9)低く、140/90mmHg未満達成率は配合剤群76%、対照群58%だった〔相対リスク1.30(同1.15~1.47)〕。有害事象により治療を中止した割合は、配合剤群4.0%、対照群2.4%で有意差がなかった(P=0.27)。この結果をChow氏は、「ごく低用量の降圧薬の配合剤は、単剤で開始し段階的に追加するという一般的なアプローチよりも効果的だった」とまとめている。同氏によると、12カ月経過した時点でも、両群の間には血圧レベルの差が存在しており、配合剤群の大半はそれのみで管理されていたという。Chow氏はまた副作用のリスクという点でも、配合剤にはメリットがあると述べている。「各薬剤の用量が4分の1であっても効果は4分の1ではなく、実際には60%に近い。かつ、それらは異なる作用機序で血圧を下げ、相乗的に働く。したがって、より低用量の組み合わせでより大きな降圧効果を得られる」とのことだ。一方、米ワシントン大学のEugene Yang氏は、「異なる薬剤を1剤にまとめるという戦略は、患者の服薬順守率の改善につながる」と、配合剤のメリットを指摘する。また、米国心臓協会(AHA)の高血圧治療ガイドライン著者陣の一人である米バージニア医科大学のRobert Carey氏は、「降圧薬の副作用の多くは用量と相関している。ごく低用量で用いられる薬剤の副作用のリスクはわずかなものであろう」とし、「医療へのアクセスが限られている米国の遠隔地や発展途上国では、このような配合剤のメリットが発揮される」と述べている。この研究結果を臨床に生かす上での障害としてChow氏は、「この配合剤の開発を手掛けようとする大手製薬企業がまだないことだ」とし、今回の研究結果が製薬企業の開発意欲を刺激することに期待を表している。またYang氏は、「今回の研究は平均血圧141/85mmHgの対象に介入し、140/90mmHg未満の達成率を検討している。より血圧の高い人に長期間介入する臨床試験が望まれる。さらに、心臓発作や脳卒中、心不全など、生命予後を左右する高血圧性疾患のリスク抑制効果の確認も必要だ」と述べている。(HealthDay News 2021年9月1日).https://consumer.healthday.com/9-1-4-in-1-blood-pr….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.