仕事中に座っていることが多い人は、30分ごとに3分の軽い運動を差し挟むと良いかもしれない。それによって、糖尿病でない人でも血糖値の上下動が少なくなるというデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のErik Näslund氏らの研究によるもので、詳細は「American Journal of Physiology—Endocrinology and Metabolism」8月号に掲載された。 座位時間が長いほど、メタボリックシンドロームや2型糖尿病のリスクが高まる。それに対して、座位が長く続くときにそれをこまめに中断して身体活動を行うことで、インスリン感受性の低下が抑制され、それらの発症リスクが低下する。Näslund氏は、「座りがちな生活を是正することで代謝が改善し、健康にプラスの効果をもたらす。よって、座業が多い職業に就いている人も、一日中座っているのは良くない」と話す。 ただし、座業を中断することの有効性を示したこれまでの研究の多くは、介入期間が数日程度と短い。長期間の生活習慣の結果として発症する2型糖尿病リスクへの影響を検討するには、できるだけ長く介入する検討が望まれる。そこでNäslund氏らは、介入期間を3週間とした研究を行った。 研究参加者は、座業の多い労働者または無職の肥満成人16人。糖尿病患者や重度の心血管疾患患者、抗凝固薬服用者、日常的に身体活動を行っている人は除外されていた。年齢は中央値50歳で10人が女性であり、BMIは中央値32だった。 無作為に8人ずつの2群に分け、1群に対してのみスマートウォッチを渡し、3週間にわたり毎日8~18時の間は30分ごとに3分間の中強度の運動を行うよう指示を送った。介入前のベースライン時点と3週間の介入後に75g経口ブドウ糖負荷試験により耐糖能を評価するとともに、介入期間中は活動量計で歩行数を計測し、かつ連続血糖測定(CGM)によって血糖変動を把握した。 その結果、スマートウォッチの指示により座業をこまめに中断した群では、ベースライン時に比較し毎日の歩行時間が10.4分(四分位範囲2.2~24.6)、歩数は744歩(同483~951)増加した。75g経口ブドウ糖負荷試験で評価した耐糖能は両群ともに変化は見られなかったが、座業をこまめに中断した群ではCGMで評価した血糖変動がベースライン時より少なく〔変動係数(CV)が-2.0±2.2%〕、空腹時血糖値も低下する傾向(-6.1±6.7mg/dL)にあった。また、悪玉(LDL)コレステロールは、ベースライン時の128±27mg/dLから116±19mg/dLへと低下していた。 この結果についてNäslund氏は、「こまめに運動を差し挟むことで血糖変動が抑制されたのは、運動による血流の改善に起因するものかもしれない」と考察している。ただし、耐糖能の改善は認められなかったことから、「健康上のメリットを確実に得るためには、おそらくより多くの運動が必要だろう」と今後の研究への課題を挙げている。 予防可能な疾患を予防するための健康推進活動を行っている非営利団体、True Health Initiativeの代表を務めるDavid Katz氏は、この発表を「身体活動による代謝改善効果の研究領域に、貴重な知見を追加するもの」と評価している。「もちろん身体活動量が多いに越したことはない。しかし、大半の人が達成可能なレベルの身体活動量で、健康へのメリットを得られることを示す研究の成果は、運動を実践する人の増加につながるだろう」と同氏は述べている。 また、米レノックス・ヒル病院のLen Horovitz氏は、この研究に関連し、「座位時間の長い人が多いという問題は、医学的には、新たな喫煙問題とも言える」とコメント。そして、「体を動かさなければエネルギーが消費されず、筋肉は固まり、血液の循環が滞る」と解説。「職場では定期的に立ち上がり歩くべきだ。歩けば歩くほど体には良い」と強調している。(HealthDay News 2021年8月16日).https://consumer.healthday.com/8-17-sit-all-day-fo….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
仕事中に座っていることが多い人は、30分ごとに3分の軽い運動を差し挟むと良いかもしれない。それによって、糖尿病でない人でも血糖値の上下動が少なくなるというデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のErik Näslund氏らの研究によるもので、詳細は「American Journal of Physiology—Endocrinology and Metabolism」8月号に掲載された。 座位時間が長いほど、メタボリックシンドロームや2型糖尿病のリスクが高まる。それに対して、座位が長く続くときにそれをこまめに中断して身体活動を行うことで、インスリン感受性の低下が抑制され、それらの発症リスクが低下する。Näslund氏は、「座りがちな生活を是正することで代謝が改善し、健康にプラスの効果をもたらす。よって、座業が多い職業に就いている人も、一日中座っているのは良くない」と話す。 ただし、座業を中断することの有効性を示したこれまでの研究の多くは、介入期間が数日程度と短い。長期間の生活習慣の結果として発症する2型糖尿病リスクへの影響を検討するには、できるだけ長く介入する検討が望まれる。そこでNäslund氏らは、介入期間を3週間とした研究を行った。 研究参加者は、座業の多い労働者または無職の肥満成人16人。糖尿病患者や重度の心血管疾患患者、抗凝固薬服用者、日常的に身体活動を行っている人は除外されていた。年齢は中央値50歳で10人が女性であり、BMIは中央値32だった。 無作為に8人ずつの2群に分け、1群に対してのみスマートウォッチを渡し、3週間にわたり毎日8~18時の間は30分ごとに3分間の中強度の運動を行うよう指示を送った。介入前のベースライン時点と3週間の介入後に75g経口ブドウ糖負荷試験により耐糖能を評価するとともに、介入期間中は活動量計で歩行数を計測し、かつ連続血糖測定(CGM)によって血糖変動を把握した。 その結果、スマートウォッチの指示により座業をこまめに中断した群では、ベースライン時に比較し毎日の歩行時間が10.4分(四分位範囲2.2~24.6)、歩数は744歩(同483~951)増加した。75g経口ブドウ糖負荷試験で評価した耐糖能は両群ともに変化は見られなかったが、座業をこまめに中断した群ではCGMで評価した血糖変動がベースライン時より少なく〔変動係数(CV)が-2.0±2.2%〕、空腹時血糖値も低下する傾向(-6.1±6.7mg/dL)にあった。また、悪玉(LDL)コレステロールは、ベースライン時の128±27mg/dLから116±19mg/dLへと低下していた。 この結果についてNäslund氏は、「こまめに運動を差し挟むことで血糖変動が抑制されたのは、運動による血流の改善に起因するものかもしれない」と考察している。ただし、耐糖能の改善は認められなかったことから、「健康上のメリットを確実に得るためには、おそらくより多くの運動が必要だろう」と今後の研究への課題を挙げている。 予防可能な疾患を予防するための健康推進活動を行っている非営利団体、True Health Initiativeの代表を務めるDavid Katz氏は、この発表を「身体活動による代謝改善効果の研究領域に、貴重な知見を追加するもの」と評価している。「もちろん身体活動量が多いに越したことはない。しかし、大半の人が達成可能なレベルの身体活動量で、健康へのメリットを得られることを示す研究の成果は、運動を実践する人の増加につながるだろう」と同氏は述べている。 また、米レノックス・ヒル病院のLen Horovitz氏は、この研究に関連し、「座位時間の長い人が多いという問題は、医学的には、新たな喫煙問題とも言える」とコメント。そして、「体を動かさなければエネルギーが消費されず、筋肉は固まり、血液の循環が滞る」と解説。「職場では定期的に立ち上がり歩くべきだ。歩けば歩くほど体には良い」と強調している。(HealthDay News 2021年8月16日).https://consumer.healthday.com/8-17-sit-all-day-fo….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.