初産婦を対象とした米国の全国規模の調査の結果、2011年から2019年の間に、妊娠糖尿病の罹患率が30%上昇したことが明らかになった。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のSadiya Khan氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月17日掲載された。妊娠糖尿病が急増した原因は不明だという。 妊娠糖尿病は、妊娠前に糖尿病ではなかった女性の妊娠中に発症する、糖尿病の診断基準に至らない糖代謝異常。治療せずに妊娠を継続すると、妊娠高血圧症候群や巨大児出産などのリスクが高くなり、帝王切開となる確率も上昇する。また米国糖尿病学会(ADA)によると、将来的には母親も生まれた子どももともに、2型糖尿病や心臓病を発症する可能性が高くなるという。 Khan氏らは、米国立健康統計センター(NCHS)のデータを用いて、2011~2019年に単胎児を出産した、15~44歳の初産婦1261万235人(平均年齢26.3±5.8歳)を対象として、妊娠糖尿病罹患率の推移を検討。その結果、1,000人当たりの年齢調整罹患率は上記期間中に、47.6(95%信頼区間47.1~48.0)から63.5(同63.1~64.0)へと、大幅に増加したことが分かった。この間の年間平均増加率は、3.7%(同2.8~4.6)に及んだ。 人種/民族別に見ると、罹患率はインド人が最も高く、非ヒスパニック系白人と比較したリスク比は2.24(2.15~2.33)だった。ただし、全ての人種/民族で罹患率が上昇しており、また年齢階級別の解析からは、全年齢層での罹患率上昇が確認された。 妊娠糖尿病は高齢妊婦ほど発症しやすい。しかしKhan氏は、「母親の年齢はわずかに増加していたが、15~44歳の全ての年齢層で同様の増加が見られるため、年齢だけが罹患率を押し上げたわけではない」と語っている。同氏は、「妊娠糖尿病増加の原因は、完全には理解されていない」と述べ、その上で、肥満の増加や食習慣の変化、身体活動量の低下などの全てが関係している可能性があると考察。また、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックによるストレスのような、これまでにはなかったリスク因子による妊娠糖尿病罹患率への影響も、今後は注視すべきだ」と語っている。 米マサチューセッツ総合病院のCamille Powe氏と、米ワシントン大学のEbony Carter氏は、この論文に対する付随論評を寄せている。両氏は、「過去約10年で妊娠糖尿病が増加したという調査結果は、将来の糖尿病患者数の増加という好ましくない事態を予測させるものだ。特に、人種/民族的なマイノリティーにおける妊娠糖尿病の増加抑制に、真剣に取り組む時が来た」と述べている。 また、米レノックス・ヒル病院のJennifer Wu氏は、「妊娠糖尿病の増加傾向を抑制して減少に転じさせるには、妊娠前の女性に対するアプローチが必要だ」と語る。同氏は、全ての女性が妊娠する前に運動療法を開始し、理想的な体重を維持することを奨励している。また、妊娠糖尿病のハイリスク者を早期に特定する必要性も提言。「体重やその他の因子の評価から妊娠糖尿病のリスクが高いと考えられる女性には、妊娠糖尿病の発見のための検査を行う時期を、現在の24~28週よりも前倒しすべきだ」と語る。 Wu氏はさらに、産後についても「母親の血糖値は通常、出産後に正常に戻るが、経過観察が重要」とし、「糖尿病発症リスクを抑制するために、妊娠中に増加した体重を9カ月目までに元の値に戻したほうが良い」とアドバイスしている。(HealthDay News 2021年8月18日).https://consumer.healthday.com/8-18-dangerous-diab….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
初産婦を対象とした米国の全国規模の調査の結果、2011年から2019年の間に、妊娠糖尿病の罹患率が30%上昇したことが明らかになった。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のSadiya Khan氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月17日掲載された。妊娠糖尿病が急増した原因は不明だという。 妊娠糖尿病は、妊娠前に糖尿病ではなかった女性の妊娠中に発症する、糖尿病の診断基準に至らない糖代謝異常。治療せずに妊娠を継続すると、妊娠高血圧症候群や巨大児出産などのリスクが高くなり、帝王切開となる確率も上昇する。また米国糖尿病学会(ADA)によると、将来的には母親も生まれた子どももともに、2型糖尿病や心臓病を発症する可能性が高くなるという。 Khan氏らは、米国立健康統計センター(NCHS)のデータを用いて、2011~2019年に単胎児を出産した、15~44歳の初産婦1261万235人(平均年齢26.3±5.8歳)を対象として、妊娠糖尿病罹患率の推移を検討。その結果、1,000人当たりの年齢調整罹患率は上記期間中に、47.6(95%信頼区間47.1~48.0)から63.5(同63.1~64.0)へと、大幅に増加したことが分かった。この間の年間平均増加率は、3.7%(同2.8~4.6)に及んだ。 人種/民族別に見ると、罹患率はインド人が最も高く、非ヒスパニック系白人と比較したリスク比は2.24(2.15~2.33)だった。ただし、全ての人種/民族で罹患率が上昇しており、また年齢階級別の解析からは、全年齢層での罹患率上昇が確認された。 妊娠糖尿病は高齢妊婦ほど発症しやすい。しかしKhan氏は、「母親の年齢はわずかに増加していたが、15~44歳の全ての年齢層で同様の増加が見られるため、年齢だけが罹患率を押し上げたわけではない」と語っている。同氏は、「妊娠糖尿病増加の原因は、完全には理解されていない」と述べ、その上で、肥満の増加や食習慣の変化、身体活動量の低下などの全てが関係している可能性があると考察。また、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックによるストレスのような、これまでにはなかったリスク因子による妊娠糖尿病罹患率への影響も、今後は注視すべきだ」と語っている。 米マサチューセッツ総合病院のCamille Powe氏と、米ワシントン大学のEbony Carter氏は、この論文に対する付随論評を寄せている。両氏は、「過去約10年で妊娠糖尿病が増加したという調査結果は、将来の糖尿病患者数の増加という好ましくない事態を予測させるものだ。特に、人種/民族的なマイノリティーにおける妊娠糖尿病の増加抑制に、真剣に取り組む時が来た」と述べている。 また、米レノックス・ヒル病院のJennifer Wu氏は、「妊娠糖尿病の増加傾向を抑制して減少に転じさせるには、妊娠前の女性に対するアプローチが必要だ」と語る。同氏は、全ての女性が妊娠する前に運動療法を開始し、理想的な体重を維持することを奨励している。また、妊娠糖尿病のハイリスク者を早期に特定する必要性も提言。「体重やその他の因子の評価から妊娠糖尿病のリスクが高いと考えられる女性には、妊娠糖尿病の発見のための検査を行う時期を、現在の24~28週よりも前倒しすべきだ」と語る。 Wu氏はさらに、産後についても「母親の血糖値は通常、出産後に正常に戻るが、経過観察が重要」とし、「糖尿病発症リスクを抑制するために、妊娠中に増加した体重を9カ月目までに元の値に戻したほうが良い」とアドバイスしている。(HealthDay News 2021年8月18日).https://consumer.healthday.com/8-18-dangerous-diab….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.