オンラインゲームを有利に進めるために、ゲームの中で販売されているアイテムを購入するという行為と、行動特性やメンタルヘルス状態との関連が報告された。弘前大学教育学部の新川広樹氏(研究時点の所属は同大学大学院医学系研究科子どものこころの発達研究センター)、川崎医療福祉大学医療福祉学部の横光健吾氏らが、日本人中学生を対象に行った研究の結果であり、詳細は「Frontiers in Psychology」に8月3日掲載された。. オンラインゲーム市場は世界中で急速に拡大しており、特に日本での成長が著しい。2019年の統計では、世界のオンラインゲームによる収益の23%(14.5億ドル)を日本が占めていたと報告されている。オンラインゲームの特徴として、ゲームの中で販売されているアイテムを購入することで、有利にプレーを進められることが挙げられる。例えばルートボックス(国内では「ガチャ」と呼ばれる)という手法で購入すると、ゲーム攻略上の利便性が異なる多くのアイテムの中から、ランダムに選択されたアイテムを使えるようになる。. このようなオンラインゲームの持つ射幸性が、ギャンブル依存症のリスクにつながる可能性が指摘されている。特に未成年は成人に比較して射幸心を煽る刺激に脆弱であり、影響がより大きいと考えられる。ただし、国内の未成年のオンラインゲーム中のアイテム購入の実態や、行動特性、メンタルヘルスとの関連は明らかになっていない。このような現状を背景として新川氏らは、国内の中学生を対象とする以下のアンケート調査を行った。. 調査に回答したのは2校の中学校の生徒344人。地域の教育委員会の協力を得て、オフラインで実施された。データ欠落のない335人(男子51.6%。1年生100人、2年生138人、3年生97人)を解析対象とした。アンケートではオンラインゲームのプレー時間やアイテム購入の経験を質問するとともに、行動特性やメンタルヘルス状態を「子どもの強さと困難さアンケート」(SDQ)および「こころとからだの質問票(思春期版)」(PHQ-A)で評価した。. 結果について、最初にオンラインゲームのプレー状況を見ると、対象者の大半が1日1時間以上プレーしていた(平日は70.1%、休日は83.9%)。また、37.0%は平日に1~2時間プレーし、22.4%は休日に2~3時間プレーしていた。. アイテム購入経験については、全体の30.7%が経験ありと回答した。このうち16.7%はお小遣の収支を考えて計画的に購入していたが、14.0%は収支を考慮せずに購入(計画外購入)した経験があった。なお、お小遣の平均は月額2,347円だった。アイテムを計画外購入したことがあると回答した生徒の23.4%は、お小遣の月額平均を上回る金額を購入に充てていた。. 次に、アイテム購入経験がない群(非購入群、232人)、計画的購入群(56人)、計画外購入群(47人)の3群に分類。これら3群を比較すると、お小遣の平均金額には有意差がなかったが、休日のプレー時間は非購入群に比較しアイテム購入経験のある2群は有意に長かった。平日のプレー時間には有意な群間差がなかった。. 行動特性やメンタルヘルス状態には、以下のような群間差が認められた。. まず、SDQのサブスケールのうち、行為の問題は、非購入群、計画的購入群、計画外購入群の順にスコアが高く、それぞれの群間差が有意だった。多動/不注意は、非購入群に対してアイテム購入経験のある2群は、購入が計画的か否かにかかわらず、有意にスコアが高かった。仲間関係の問題は、非購入群と計画的購入群には有意な群間差がないものの、計画外購入群は有意にスコアが高かった。PHQ-Aについては、有意な群間差がなかった。. 本研究について著者らは、「横断的研究であるため因果関係については言及できず、将来の縦断的研究が望まれる」としつつ、「この結果は、オンラインゲーム内でアイテムを計画せずに購入する未成年の行動特性や、メンタルヘルス上の問題の理解に役立つ」と述べている。(HealthDay News 2021年9月27日).Abstract/Full Text.https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2021.708801/full.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.