ストレスを抱えることが多い人は、血圧や心臓の健康に注意した方がいいようだ。血圧が正常でもストレスホルモンのレベルが高い成人では低い成人に比べて、6〜7年以内に高血圧になりやすいとする研究結果が報告された。京都大学大学院医学研究科社会疫学の井上浩輔氏らによるこの研究結果は、「Hypertension」に9月13日掲載された。 近年、mind-heart-body connection(心と心臓と体のつながり)に言及した研究報告が増えつつある。これは、心のあり方は心血管リスクにポジティブにもネガティブにも影響を与えるとする考え方のことである。井上氏は、「これまでの研究では、高血圧患者におけるストレスホルモンレベルと高血圧や心血管イベントとの関係に焦点が当てられてきた。しかし、高血圧のない成人を対象にした研究は十分に行われていない」と話す。 井上氏らは今回、米国のアテローム性動脈硬化症に関する大規模研究(MESA)に参加した、高血圧のない48〜87歳の成人412人を対象に、ストレスホルモンレベルと、高血圧や心血管イベント(冠動脈バイパス術を要する胸痛や心筋梗塞、脳卒中など)の発生との関連について調べた。対象者の平均年齢は61.2歳で、女性が50%、人種は、ヒスパニック系54%、黒人22%、白人24%で構成されていた。 対象者は夜間の12時間の蓄尿により、ストレスホルモン(ノルアドレナリン、アドレナリン、ドパミン、コルチゾール)レベルが測定されていた。ノルアドレナリン、アドレナリン、ドパミンはカテコールアミンと総称され、心拍数や血圧、呼吸を調節する自律神経系に関連している。一方、コルチゾールは心身がストレスを感じると分泌が促される。井上氏は、「これらのホルモンは全て副腎で産生される。しかし、それぞれに異なる役割とメカニズムで心血管系に影響を与えるため、高血圧や心血管イベントとの関係を個別に調べることが重要だ」と強調する。 対象者を中央値で6.5年間追跡したところ、4種類のストレスホルモンレベルが2倍になるごとに、高血圧を発症するリスクが21〜31%増加することが明らかになった(調整ハザード比は、ノルアドレナリン1.31、アドレナリン1.21、ドパミン1.28、コルチゾール1.23)。この関連は、60歳未満の人で60歳以上の人に比べて強く、その傾向はドパミンとコルチゾールでより顕著だった。 また、中央値で11.2年間追跡したところ、コルチゾールレベルが2倍になるごとに心血管イベントの発生リスクが90%増加することが判明した(調整ハザード比1.90)。しかし、カテコールアミンと心血管イベントの発生リスクとの間には、関連が認められなかった。 こうした結果を受けて井上氏は、「ストレスホルモンは、ライフイベント、仕事、人間関係、経済状態などからのストレスが増えると、分泌が促進される。今回の研究により、ストレスが高血圧や心血管イベントのリスクを上昇させる重要な因子であることが確認された」と語っている。ただし同氏らは、この研究の限界についても認識している。例えば、高血圧のある人が対象者の中に含まれていなかった点や、ストレスホルモンの測定手段として尿検査しか使われていない点である。 井上氏は、「ストレスが一般成人に与える影響を調べる必要がある。そうすることで、高血圧や心血管イベントを予防するために、ストレスホルモンを定期的に測定することが有効なのかどうかについての新たな情報が得られるだろう」との見通しを示している。(HealthDay News 2021年9月13日).https://consumer.healthday.com/b-9-13-more-evidenc….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
ストレスを抱えることが多い人は、血圧や心臓の健康に注意した方がいいようだ。血圧が正常でもストレスホルモンのレベルが高い成人では低い成人に比べて、6〜7年以内に高血圧になりやすいとする研究結果が報告された。京都大学大学院医学研究科社会疫学の井上浩輔氏らによるこの研究結果は、「Hypertension」に9月13日掲載された。 近年、mind-heart-body connection(心と心臓と体のつながり)に言及した研究報告が増えつつある。これは、心のあり方は心血管リスクにポジティブにもネガティブにも影響を与えるとする考え方のことである。井上氏は、「これまでの研究では、高血圧患者におけるストレスホルモンレベルと高血圧や心血管イベントとの関係に焦点が当てられてきた。しかし、高血圧のない成人を対象にした研究は十分に行われていない」と話す。 井上氏らは今回、米国のアテローム性動脈硬化症に関する大規模研究(MESA)に参加した、高血圧のない48〜87歳の成人412人を対象に、ストレスホルモンレベルと、高血圧や心血管イベント(冠動脈バイパス術を要する胸痛や心筋梗塞、脳卒中など)の発生との関連について調べた。対象者の平均年齢は61.2歳で、女性が50%、人種は、ヒスパニック系54%、黒人22%、白人24%で構成されていた。 対象者は夜間の12時間の蓄尿により、ストレスホルモン(ノルアドレナリン、アドレナリン、ドパミン、コルチゾール)レベルが測定されていた。ノルアドレナリン、アドレナリン、ドパミンはカテコールアミンと総称され、心拍数や血圧、呼吸を調節する自律神経系に関連している。一方、コルチゾールは心身がストレスを感じると分泌が促される。井上氏は、「これらのホルモンは全て副腎で産生される。しかし、それぞれに異なる役割とメカニズムで心血管系に影響を与えるため、高血圧や心血管イベントとの関係を個別に調べることが重要だ」と強調する。 対象者を中央値で6.5年間追跡したところ、4種類のストレスホルモンレベルが2倍になるごとに、高血圧を発症するリスクが21〜31%増加することが明らかになった(調整ハザード比は、ノルアドレナリン1.31、アドレナリン1.21、ドパミン1.28、コルチゾール1.23)。この関連は、60歳未満の人で60歳以上の人に比べて強く、その傾向はドパミンとコルチゾールでより顕著だった。 また、中央値で11.2年間追跡したところ、コルチゾールレベルが2倍になるごとに心血管イベントの発生リスクが90%増加することが判明した(調整ハザード比1.90)。しかし、カテコールアミンと心血管イベントの発生リスクとの間には、関連が認められなかった。 こうした結果を受けて井上氏は、「ストレスホルモンは、ライフイベント、仕事、人間関係、経済状態などからのストレスが増えると、分泌が促進される。今回の研究により、ストレスが高血圧や心血管イベントのリスクを上昇させる重要な因子であることが確認された」と語っている。ただし同氏らは、この研究の限界についても認識している。例えば、高血圧のある人が対象者の中に含まれていなかった点や、ストレスホルモンの測定手段として尿検査しか使われていない点である。 井上氏は、「ストレスが一般成人に与える影響を調べる必要がある。そうすることで、高血圧や心血管イベントを予防するために、ストレスホルモンを定期的に測定することが有効なのかどうかについての新たな情報が得られるだろう」との見通しを示している。(HealthDay News 2021年9月13日).https://consumer.healthday.com/b-9-13-more-evidenc….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.