中年期以降の2型糖尿病(T2D)の発症予防には、心血管の健康状態(cardiovascular health;CVH)が良好であることが重要であり、T2Dの遺伝的素因は無関係という研究結果が、「European Journal of Preventive Cardiology」に9月28日掲載された。エラスムス大学医療センター(オランダ)のKan Wang氏らは、T2Dの生涯リスクと、CVHおよびT2Dの遺伝的素因との関連を評価する研究を行った。オランダのロッテルダムに居住する55歳以上の住民を対象とした前向きコホート研究であるRotterdam Studyの参加者で、ベースライン時に糖尿病に罹患していなかった5,993例(平均年齢69.1±8.5歳、女性58%)を対象とした。ベースライン時のBMI、血圧、総コレステロール、喫煙状態、食事および身体活動の測定結果に基づいてCVHスコア(12点満点)を算出し、0~5点を「不良」(1,368例)、6~7点を「中等度」(2,605例)、8~12点を「理想的」(2,020例)とした。一方、T2Dの遺伝的素因については、T2Dの遺伝的リスクスコア(GRS)を算出し、全体を三分位数により「低リスク」、「中等度リスク」、「高リスク」に分けた。追跡期間(中央値14年、四分位範囲8~15年)中に、869例がT2Dを発症した。55歳の時点におけるT2Dの生涯リスクは、CVHが悪化するほど高くなり、T2Dの累積発症率は、CVHスコアが「理想的」で22.6%〔95%信頼区間(CI)19.4~25.8〕、「中等度」で28.3%(同25.8~30.8)、「不良」で32.6%(同29.0~36.2)であった(P<0.001、Fine-Grayサブハザードモデル)。次に、Fine-GrayサブハザードモデルにGRSを加えて9群に層別化して検討したところ、GRSが「低リスク」の群におけるT2Dの累積発症率は、CVHスコアが「不良」では24.5%(同18.1~30.8)と高かったのに対し、CVHスコアが「理想的」では21.5%(同13.7~29.3)と低くなっていた。同様に、GRSが「中等度リスク」の群におけるT2Dの累積発症率は、CVHスコアが「不良」では33.3%(同26.5~40.0)と高かったのに対し、CVHスコアが「理想的」では20.8%(同15.9~25.8)と低くなっており、GRSが「高リスク」の群におけるT2Dの累積発症率も同じく、CVHスコアが「不良」では38.7%(同31.4~46.1)と高かったのに対し、CVHスコアが「理想的」では23.5%(同18.5~28.6)と低くなっていた。これらの結果から、CVHスコアが「理想的」である場合の55歳時点でのT2Dの生涯リスクは、遺伝的素因とは関係なく、CVHスコアが「不良」および「中等度」である場合より低いという結論となった。共著者の一人は、「遺伝的素因がT2D発症に関与する可能性はあるが、そのリスクの程度がいかなるものであっても、健康的な生活習慣を維持し、心血管の健康状態を良好に保つことこそが、T2Dの生涯リスクを下げるための鍵となるだろう」と述べている。(HealthDay News 2021年10月5日)https://consumer.healthday.com/heart-health-tied-t….Abstract/Full Text.Editorial.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
中年期以降の2型糖尿病(T2D)の発症予防には、心血管の健康状態(cardiovascular health;CVH)が良好であることが重要であり、T2Dの遺伝的素因は無関係という研究結果が、「European Journal of Preventive Cardiology」に9月28日掲載された。エラスムス大学医療センター(オランダ)のKan Wang氏らは、T2Dの生涯リスクと、CVHおよびT2Dの遺伝的素因との関連を評価する研究を行った。オランダのロッテルダムに居住する55歳以上の住民を対象とした前向きコホート研究であるRotterdam Studyの参加者で、ベースライン時に糖尿病に罹患していなかった5,993例(平均年齢69.1±8.5歳、女性58%)を対象とした。ベースライン時のBMI、血圧、総コレステロール、喫煙状態、食事および身体活動の測定結果に基づいてCVHスコア(12点満点)を算出し、0~5点を「不良」(1,368例)、6~7点を「中等度」(2,605例)、8~12点を「理想的」(2,020例)とした。一方、T2Dの遺伝的素因については、T2Dの遺伝的リスクスコア(GRS)を算出し、全体を三分位数により「低リスク」、「中等度リスク」、「高リスク」に分けた。追跡期間(中央値14年、四分位範囲8~15年)中に、869例がT2Dを発症した。55歳の時点におけるT2Dの生涯リスクは、CVHが悪化するほど高くなり、T2Dの累積発症率は、CVHスコアが「理想的」で22.6%〔95%信頼区間(CI)19.4~25.8〕、「中等度」で28.3%(同25.8~30.8)、「不良」で32.6%(同29.0~36.2)であった(P<0.001、Fine-Grayサブハザードモデル)。次に、Fine-GrayサブハザードモデルにGRSを加えて9群に層別化して検討したところ、GRSが「低リスク」の群におけるT2Dの累積発症率は、CVHスコアが「不良」では24.5%(同18.1~30.8)と高かったのに対し、CVHスコアが「理想的」では21.5%(同13.7~29.3)と低くなっていた。同様に、GRSが「中等度リスク」の群におけるT2Dの累積発症率は、CVHスコアが「不良」では33.3%(同26.5~40.0)と高かったのに対し、CVHスコアが「理想的」では20.8%(同15.9~25.8)と低くなっており、GRSが「高リスク」の群におけるT2Dの累積発症率も同じく、CVHスコアが「不良」では38.7%(同31.4~46.1)と高かったのに対し、CVHスコアが「理想的」では23.5%(同18.5~28.6)と低くなっていた。これらの結果から、CVHスコアが「理想的」である場合の55歳時点でのT2Dの生涯リスクは、遺伝的素因とは関係なく、CVHスコアが「不良」および「中等度」である場合より低いという結論となった。共著者の一人は、「遺伝的素因がT2D発症に関与する可能性はあるが、そのリスクの程度がいかなるものであっても、健康的な生活習慣を維持し、心血管の健康状態を良好に保つことこそが、T2Dの生涯リスクを下げるための鍵となるだろう」と述べている。(HealthDay News 2021年10月5日)https://consumer.healthday.com/heart-health-tied-t….Abstract/Full Text.Editorial.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock