新型コロナウイルス感染症(COVID-19)既往者をドナーとする臓器移植は安全であるとする研究結果が、第32回欧州臨床微生物学感染症会議(ECCMID2022、4月23~26日、ポルトガル・リスボン)で発表される。米デューク大学のEmily Eichenberger氏らの研究によるもので、COVID-19罹患後に死亡したドナーの臓器を移植されたレシピエントに、COVID-19の発症は見られず、移植された臓器も機能しているとのことだ。.この研究は予備的研究として実施されたもので、4人のドナーから4人のレシピエントへの移植成績が検討された。ドナーとなったCOVID-19既往者は、ウイルス陽性が最後に確認されてから20日以上経過して脳死に至った場合に、臓器移植の可能性が検討された。.移植の適否の判定には、COVID-19罹患の時期や重症度に加え、凝固能亢進の兆候の有無などにより、用いようとする臓器内での血栓リスクなどを慎重に評価した。なお、ドナーの死因は、COVID-19に伴う肺塞栓症による死亡が1人、COVID-19が関連すると考えられる脳膿瘍による死亡が1人で、他の2人はCOVID-19が直接的な死因ではなく、1人は出血性脳卒中、別の1人は薬物の過剰摂取による死亡だった。.一方のレシピエントは、肝臓が移植された患者が2人、膵腎同時移植を受けた患者が2人。中央値46日の追跡で、移植された臓器は安定して機能しており、予想外の拒絶反応は認められていないという。なお、肝臓を移植されたレシピエントの1人は、移植治療とは関連のない冠動脈疾患を発症し、ウイルス陽性の別のドナー(COVID-19は無症候であり銃創のために死亡)から摘出された心臓を移植されている。.移植後にCOVID-19を発症したレシピエントはいなかった。また、これらの治療に関与した医療従事者からのCOVID-19発症も、認められなかった。.COVID-19既往者をドナーとする臓器移植には安全面での懸念があるため、COVID-19パンデミック発生以降、臓器不足が生じている。Eichenberger氏は今回の研究の結果について、「限られたデータではあるが、COVID-19罹患後のドナーから提供された腹部臓器を移植に用いても、安全であり効果的な治療となり得ることを示唆する知見と言える」と、ECCMID2022のプレスリリースの中で述べている。また今回の4件の報告は、COVID-19既往ドナーからの臓器移植の初期のケースであって、既に同様の移植治療を20件行い、全て成功しているとのことだ。とは言え、COVID-19既往ドナーからの移植臓器に関する知見はまだ限られており、世界各国それぞれの医療環境での検討が必要とされる段階だ。.ところで、今回の研究の4人のレシピエントは、いずれもワクチン接種を受けていなかった。この点についてEichenberger氏は、「ワクチン未接種の場合、移植後に必要となる免疫抑制薬により、COVID-19に罹患した際の重症化リスクが高まる可能性がある。よって移植待機中の患者には、ワクチン接種を強く推奨する」と述べている。ただし、Eichenberger氏らの臓器移植登録システムで、ワクチン未接種であることを理由に優先順位が下がるようなことは、現時点ではないとのことだ。.なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2022年3月23日).https://consumer.healthday.com/b-3-23-organs-donated-by-people-who-had-covid-are-safe-study-2657001568.html.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)既往者をドナーとする臓器移植は安全であるとする研究結果が、第32回欧州臨床微生物学感染症会議(ECCMID2022、4月23~26日、ポルトガル・リスボン)で発表される。米デューク大学のEmily Eichenberger氏らの研究によるもので、COVID-19罹患後に死亡したドナーの臓器を移植されたレシピエントに、COVID-19の発症は見られず、移植された臓器も機能しているとのことだ。.この研究は予備的研究として実施されたもので、4人のドナーから4人のレシピエントへの移植成績が検討された。ドナーとなったCOVID-19既往者は、ウイルス陽性が最後に確認されてから20日以上経過して脳死に至った場合に、臓器移植の可能性が検討された。.移植の適否の判定には、COVID-19罹患の時期や重症度に加え、凝固能亢進の兆候の有無などにより、用いようとする臓器内での血栓リスクなどを慎重に評価した。なお、ドナーの死因は、COVID-19に伴う肺塞栓症による死亡が1人、COVID-19が関連すると考えられる脳膿瘍による死亡が1人で、他の2人はCOVID-19が直接的な死因ではなく、1人は出血性脳卒中、別の1人は薬物の過剰摂取による死亡だった。.一方のレシピエントは、肝臓が移植された患者が2人、膵腎同時移植を受けた患者が2人。中央値46日の追跡で、移植された臓器は安定して機能しており、予想外の拒絶反応は認められていないという。なお、肝臓を移植されたレシピエントの1人は、移植治療とは関連のない冠動脈疾患を発症し、ウイルス陽性の別のドナー(COVID-19は無症候であり銃創のために死亡)から摘出された心臓を移植されている。.移植後にCOVID-19を発症したレシピエントはいなかった。また、これらの治療に関与した医療従事者からのCOVID-19発症も、認められなかった。.COVID-19既往者をドナーとする臓器移植には安全面での懸念があるため、COVID-19パンデミック発生以降、臓器不足が生じている。Eichenberger氏は今回の研究の結果について、「限られたデータではあるが、COVID-19罹患後のドナーから提供された腹部臓器を移植に用いても、安全であり効果的な治療となり得ることを示唆する知見と言える」と、ECCMID2022のプレスリリースの中で述べている。また今回の4件の報告は、COVID-19既往ドナーからの臓器移植の初期のケースであって、既に同様の移植治療を20件行い、全て成功しているとのことだ。とは言え、COVID-19既往ドナーからの移植臓器に関する知見はまだ限られており、世界各国それぞれの医療環境での検討が必要とされる段階だ。.ところで、今回の研究の4人のレシピエントは、いずれもワクチン接種を受けていなかった。この点についてEichenberger氏は、「ワクチン未接種の場合、移植後に必要となる免疫抑制薬により、COVID-19に罹患した際の重症化リスクが高まる可能性がある。よって移植待機中の患者には、ワクチン接種を強く推奨する」と述べている。ただし、Eichenberger氏らの臓器移植登録システムで、ワクチン未接種であることを理由に優先順位が下がるようなことは、現時点ではないとのことだ。.なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2022年3月23日).https://consumer.healthday.com/b-3-23-organs-donated-by-people-who-had-covid-are-safe-study-2657001568.html.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock