不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、不眠症を有する高齢者の大うつ病性障害(以下、うつ病)の発症や再発の予防に有効であるとする研究結果が、「JAMA Psychiatry」に11月24日掲載された。.米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のMichael R. Irwin氏らは、高齢者の不眠症に対するCBT-Iがうつ病の発症や再発に有効であるのか否かを、不眠症に対する治療法として確立している睡眠教育療法(SET)との比較において検討した。対象は、過去1年間にうつ病や健康上の問題がなかった60歳以上の不眠症患者291人(平均年齢70.1歳、女性57.7%)。これらの対象者を、2カ月間にわたってCBT-Iによる介入を受ける群(156人)とSETによる介入を受ける群(135人)にランダムに割り付け、介入終了から24カ月後と36カ月後に追跡調査を行った。主要評価項目は、追跡期間中のDSM-5に準拠した構造化面接で診断されたうつ病の発症・再発までにかかった時間、副次評価項目は、うつ病の発症・再発前までに、または追跡期間中に認められた不眠症の寛解が持続していることとした。.CBT-I群で140人(89.7%)、SET群で130人(96.3%)が介入を完了した(χ2= 4.9、P=0.03)。24カ月後の追跡調査を完了したのは、CBT-I群で114人(73.1%)、SET群で117人(86.7%)であり(χ2=8.4、P=0.004)、36カ月後の追跡調査を完了したのは、前者で81人(51.9%)、後者で77人(57.0%)であった(χ2=0.8、P=0.39)。.介入終了から36カ月後までに、CBT-I群では19人(12.2%)、SET群では35人(25.9%)でうつ病の発症・再発が認められた。Cox比例ハザードモデルによる、SET群と比べたCBT-I群でのうつ病の発症・再発のハザード比(HR)は0.51〔95%信頼区間(CI)0.29〜0.88、P=0.02〕と、有意に低いことが示された。この結果は、性別や年齢、人種、併存疾患の有無などでサブグループ解析しても同様だった。.うつ病の発症・再発前、または追跡期間中における不眠症の持続的寛解が認められた患者の割合は、CBT-I群の方がSET群よりも高かった〔41人(26.3%)対26人(19.3%)、P=0.03〕。うつ病に対する調整HRは、不眠症の持続的寛解が得られていないSET群を1とした場合、不眠症の持続的寛解が得られたCBT-I群で0.17(95%CI 0.04〜0.73、P=0.02)と、うつ病の発症・再発リスクが82.6%低下していた。これに対して、持続的寛解の得られていないCBT-I群の調整HRは0.59(同0.33〜1.07、P=0.08)、不眠症の持続的寛解が得られたSET群の調整HRは0.68(同0.26〜1.73、P=0.42)で、有意な結果ではなかった。.著者らは、「高齢者が抱える不眠の悩みに対し、地域レベルでスクリーニングを実施して、不眠症の人たちにはCBT-Iを基幹とする治療を広く施すことが、高齢者という、弱さを抱えた集団における不眠症の治療やうつ病の予防を目指す公衆衛生上の取組みを、強力に後押しすることになるだろう」と述べている。(HealthDay News 2021年12月8日).https://consumer.healthday.com/cognitive-behavioral-tx-for-insomnia-prevents-major-depression-2655784528.html.Abstract/Full Text.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、不眠症を有する高齢者の大うつ病性障害(以下、うつ病)の発症や再発の予防に有効であるとする研究結果が、「JAMA Psychiatry」に11月24日掲載された。.米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のMichael R. Irwin氏らは、高齢者の不眠症に対するCBT-Iがうつ病の発症や再発に有効であるのか否かを、不眠症に対する治療法として確立している睡眠教育療法(SET)との比較において検討した。対象は、過去1年間にうつ病や健康上の問題がなかった60歳以上の不眠症患者291人(平均年齢70.1歳、女性57.7%)。これらの対象者を、2カ月間にわたってCBT-Iによる介入を受ける群(156人)とSETによる介入を受ける群(135人)にランダムに割り付け、介入終了から24カ月後と36カ月後に追跡調査を行った。主要評価項目は、追跡期間中のDSM-5に準拠した構造化面接で診断されたうつ病の発症・再発までにかかった時間、副次評価項目は、うつ病の発症・再発前までに、または追跡期間中に認められた不眠症の寛解が持続していることとした。.CBT-I群で140人(89.7%)、SET群で130人(96.3%)が介入を完了した(χ2= 4.9、P=0.03)。24カ月後の追跡調査を完了したのは、CBT-I群で114人(73.1%)、SET群で117人(86.7%)であり(χ2=8.4、P=0.004)、36カ月後の追跡調査を完了したのは、前者で81人(51.9%)、後者で77人(57.0%)であった(χ2=0.8、P=0.39)。.介入終了から36カ月後までに、CBT-I群では19人(12.2%)、SET群では35人(25.9%)でうつ病の発症・再発が認められた。Cox比例ハザードモデルによる、SET群と比べたCBT-I群でのうつ病の発症・再発のハザード比(HR)は0.51〔95%信頼区間(CI)0.29〜0.88、P=0.02〕と、有意に低いことが示された。この結果は、性別や年齢、人種、併存疾患の有無などでサブグループ解析しても同様だった。.うつ病の発症・再発前、または追跡期間中における不眠症の持続的寛解が認められた患者の割合は、CBT-I群の方がSET群よりも高かった〔41人(26.3%)対26人(19.3%)、P=0.03〕。うつ病に対する調整HRは、不眠症の持続的寛解が得られていないSET群を1とした場合、不眠症の持続的寛解が得られたCBT-I群で0.17(95%CI 0.04〜0.73、P=0.02)と、うつ病の発症・再発リスクが82.6%低下していた。これに対して、持続的寛解の得られていないCBT-I群の調整HRは0.59(同0.33〜1.07、P=0.08)、不眠症の持続的寛解が得られたSET群の調整HRは0.68(同0.26〜1.73、P=0.42)で、有意な結果ではなかった。.著者らは、「高齢者が抱える不眠の悩みに対し、地域レベルでスクリーニングを実施して、不眠症の人たちにはCBT-Iを基幹とする治療を広く施すことが、高齢者という、弱さを抱えた集団における不眠症の治療やうつ病の予防を目指す公衆衛生上の取組みを、強力に後押しすることになるだろう」と述べている。(HealthDay News 2021年12月8日).https://consumer.healthday.com/cognitive-behavioral-tx-for-insomnia-prevents-major-depression-2655784528.html.Abstract/Full Text.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock