未就学児にとって昼寝は、体力を回復させて日中を機嫌良く過ごすために不可欠だと考える親は多い。こうした中、昼寝は子どもたちの読み書き能力の向上にもつながる可能性が、オーストラリアと英国のグループによる研究で示された。昼寝は、読解力習得の鍵となる文字と音の関係を認識する能力(letter-sound mappings)を高めることが示唆されたという。マッコーリー大学(オーストラリア)のHua-Chen Wang氏らによるこの研究の詳細は、「Child Development」に3月29日発表された。Wang氏らの研究は、シドニーの2カ所の保育施設に通う3~5歳の未就学児32人(平均年齢4歳3カ月)を対象に実施された。これらの保育施設では、毎日決まった時刻に昼寝の時間を設けていたが、子どもたちに対する文字の読み方や音に関する教育は行っていなかった。対象者の子どもはそれぞれ2~4週間かけて、7回のセッションに参加した。これらのセッションでは、子どもたちの文字と発音の知識を確認するテストを行った後に、昼寝ありと昼寝なしの両方の状況下で文字と音の関係について正式なトレーニングを行った。その後、文字と音の組み合わせや「このアルファベットはどう発音する?」などの質問で、子どもたちが学んだことを覚えているのかをテストした。その結果、昼寝をした子どもは、事前に学んだ文字の音(letter sounds)が含まれている知らない言葉を見つけるテストの結果が優れていた。しかし、学んだ文字の発音を認識したり自分で発音したりするといった明示的学習(学習者が意識的に情報を処理して行う学習)に対する昼寝のベネフィットは認められなかった。こうした結果を受けてWang氏は、「子どもたちが文字と音の関係について学習した後に昼寝すると、習得した情報を思い出して、その情報を基に言葉を認識する能力が高まっていることが分かった」と説明する。さらに同氏は、「われわれが得たのは初期のエビデンスに過ぎない。しかし、これまでの文献や同様のテーマについて検討した他の研究のデータも合わせて考慮すると、昼寝は子どもたちの学習能力に確実に役立つようだと言っても良いのではないだろうか」と話す。この研究は、成人において夜間の睡眠が記憶の固定を促すことを示したエビデンスに基づき実施された。Wang氏によると、新しいことを学ぶとその情報は脳内で符号化され、一時的に保持される。その後、徐々にその記憶が固定化され、長期的な記憶の一部になる。そして、睡眠にはこうしたプロセスを促す働きがあると考えられているという。米国小児科学会(AAP)のスポークスパーソンで米ウィスコンシン大学マディソン校のDipesh Navsaria氏は、「成人のデータで示されているからといって、それが小児、特に低年齢児にも当てはまるとは限らない」と指摘。Wang氏らが今回の研究でそのような疑問について検討したことの価値は高いとの見解を示している。さらに同氏は、早い段階から本を通じて言葉に触れることは、読み書き能力だけでなく、親子の絆を築く上でも有益であることも指摘している。研究グループは、保育園や幼稚園などの未就学児向け施設が活動スケジュールを組む際に、今回の研究から得られた情報を役立てることができるのではないかとの見方を示す。Wang氏は、「新しいことを学ぶ時間は午前中の早い時間帯に設け、昼寝の前に簡単な復習を行うと良い。あるいは、昼寝の直前に学ぶことも有効かもしれない。こうしたスケジュールの工夫によって、学んだことが定着しやすくなる可能性がある」と話している。(HealthDay News 2022年3月30日).https://consumer.healthday.com/3-30-2657033188.html.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
未就学児にとって昼寝は、体力を回復させて日中を機嫌良く過ごすために不可欠だと考える親は多い。こうした中、昼寝は子どもたちの読み書き能力の向上にもつながる可能性が、オーストラリアと英国のグループによる研究で示された。昼寝は、読解力習得の鍵となる文字と音の関係を認識する能力(letter-sound mappings)を高めることが示唆されたという。マッコーリー大学(オーストラリア)のHua-Chen Wang氏らによるこの研究の詳細は、「Child Development」に3月29日発表された。Wang氏らの研究は、シドニーの2カ所の保育施設に通う3~5歳の未就学児32人(平均年齢4歳3カ月)を対象に実施された。これらの保育施設では、毎日決まった時刻に昼寝の時間を設けていたが、子どもたちに対する文字の読み方や音に関する教育は行っていなかった。対象者の子どもはそれぞれ2~4週間かけて、7回のセッションに参加した。これらのセッションでは、子どもたちの文字と発音の知識を確認するテストを行った後に、昼寝ありと昼寝なしの両方の状況下で文字と音の関係について正式なトレーニングを行った。その後、文字と音の組み合わせや「このアルファベットはどう発音する?」などの質問で、子どもたちが学んだことを覚えているのかをテストした。その結果、昼寝をした子どもは、事前に学んだ文字の音(letter sounds)が含まれている知らない言葉を見つけるテストの結果が優れていた。しかし、学んだ文字の発音を認識したり自分で発音したりするといった明示的学習(学習者が意識的に情報を処理して行う学習)に対する昼寝のベネフィットは認められなかった。こうした結果を受けてWang氏は、「子どもたちが文字と音の関係について学習した後に昼寝すると、習得した情報を思い出して、その情報を基に言葉を認識する能力が高まっていることが分かった」と説明する。さらに同氏は、「われわれが得たのは初期のエビデンスに過ぎない。しかし、これまでの文献や同様のテーマについて検討した他の研究のデータも合わせて考慮すると、昼寝は子どもたちの学習能力に確実に役立つようだと言っても良いのではないだろうか」と話す。この研究は、成人において夜間の睡眠が記憶の固定を促すことを示したエビデンスに基づき実施された。Wang氏によると、新しいことを学ぶとその情報は脳内で符号化され、一時的に保持される。その後、徐々にその記憶が固定化され、長期的な記憶の一部になる。そして、睡眠にはこうしたプロセスを促す働きがあると考えられているという。米国小児科学会(AAP)のスポークスパーソンで米ウィスコンシン大学マディソン校のDipesh Navsaria氏は、「成人のデータで示されているからといって、それが小児、特に低年齢児にも当てはまるとは限らない」と指摘。Wang氏らが今回の研究でそのような疑問について検討したことの価値は高いとの見解を示している。さらに同氏は、早い段階から本を通じて言葉に触れることは、読み書き能力だけでなく、親子の絆を築く上でも有益であることも指摘している。研究グループは、保育園や幼稚園などの未就学児向け施設が活動スケジュールを組む際に、今回の研究から得られた情報を役立てることができるのではないかとの見方を示す。Wang氏は、「新しいことを学ぶ時間は午前中の早い時間帯に設け、昼寝の前に簡単な復習を行うと良い。あるいは、昼寝の直前に学ぶことも有効かもしれない。こうしたスケジュールの工夫によって、学んだことが定着しやすくなる可能性がある」と話している。(HealthDay News 2022年3月30日).https://consumer.healthday.com/3-30-2657033188.html.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock