40歳未満で発症する乳がんは悪性度が高い傾向にある。しかし、そのような若い乳がん患者でも、乳房温存手術を受けた後の生存期間は乳房切除術を受けた患者と同程度であることが、初期的な研究で示された。米レヴィンがん研究所のChristine Pestana氏らが実施したこの研究の結果は、米国乳腺外科学会(ASBrS 2022、4月6~10日、米ラスベガス)で発表された。この研究では、2010年から2018年の間に同研究所で乳がんの診断と治療を受けた40歳未満の女性591人(平均年齢37歳)のデータが後ろ向きに解析された。患者のほとんどはステージ1または2の早期がん患者で、転移はなかった。このうち約3分の2の患者には片側または両側の乳房切除術が、残る患者には腫瘍およびその周辺組織を部分的に切除する乳房温存手術が施行されていた。67カ月の観察期間中に患者の12%が死亡していた。がんのステージや悪性度、手術以外に受けた治療などの因子を考慮して解析した結果、受けた手術が乳房切除術か乳房温存手術かは生存率に全く関係していなかった。しかし、ホルモン受容体陽性HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)陰性乳がん患者では、ホルモン療法を処方されたのに遵守しなかった患者で死亡リスクが上昇していた。この研究結果について専門家らは、「手術以外に受けた治療が、乳がんの転帰に関わる重要な要因になるという事実を浮き彫りにするものだ」と指摘する。手術以外の治療法としては、乳房温存手術を受けた女性の多くが受ける放射線治療が挙げられる。また、乳がん患者の多くを占めるホルモン感受性乳がんの患者は、通常、長期間にわたって再発リスクを抑える目的でホルモン療法を受ける。実際に今回の研究でも、ホルモン療法は乳がん患者の生存期間にかなり影響を与えていることが示されている。ただし、この結果についてPestana氏は、「全ての乳がん患者に部分的な切除術が適していると解釈すべきではない」と強調。「特に、BRCA1やBRCA2といった遺伝子に変異を持つ、遺伝的に再発リスクの高い女性は、両側の乳房を切除する手術を選択した方が良いかもしれない」とする見解を示している。また、遺伝子変異がない場合でも、再発に対する不安の軽減や、審美面から乳房切除術という選択肢を求める女性もいるとPestana氏は指摘。「例えば、胸が小さい女性の場合、乳房切除術後に乳房再建術を受けて審美性を高めたいと考える可能性はある」と付け加えている。米M. D. アンダーソンがんセンターの乳腺外科医であるMediget Teshome氏もまた、「全ての乳がん患者に適した手術法はない。乳がんの特徴や将来の再発リスク、手術の長期的な生活の質(QOL)への影響など、患者ごとの状況を踏まえた上で、最適な手術法が選ばれる」と話している。Pestana氏によると、乳がんは50歳以上で診断されることが多く、40歳未満での診断率は低いが上昇傾向にある。そのため、治療法の選択が長期予後に与える影響について理解しておくことの重要性は高まりつつあるという。Pestana氏とTeshome氏はいずれも、全ての治療法の良い面と悪い面や患者の個人的な価値について話し合い、患者と担当するケアチームが共同で意思決定を行うべきであると主張している。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2022年4月7日)https://consumer.healthday.com/4-7-lumpectomy-as-effective-as-mastectomy-for-young-women-with-breast-cancer-2657089858.htmlCopyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
40歳未満で発症する乳がんは悪性度が高い傾向にある。しかし、そのような若い乳がん患者でも、乳房温存手術を受けた後の生存期間は乳房切除術を受けた患者と同程度であることが、初期的な研究で示された。米レヴィンがん研究所のChristine Pestana氏らが実施したこの研究の結果は、米国乳腺外科学会(ASBrS 2022、4月6~10日、米ラスベガス)で発表された。この研究では、2010年から2018年の間に同研究所で乳がんの診断と治療を受けた40歳未満の女性591人(平均年齢37歳)のデータが後ろ向きに解析された。患者のほとんどはステージ1または2の早期がん患者で、転移はなかった。このうち約3分の2の患者には片側または両側の乳房切除術が、残る患者には腫瘍およびその周辺組織を部分的に切除する乳房温存手術が施行されていた。67カ月の観察期間中に患者の12%が死亡していた。がんのステージや悪性度、手術以外に受けた治療などの因子を考慮して解析した結果、受けた手術が乳房切除術か乳房温存手術かは生存率に全く関係していなかった。しかし、ホルモン受容体陽性HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)陰性乳がん患者では、ホルモン療法を処方されたのに遵守しなかった患者で死亡リスクが上昇していた。この研究結果について専門家らは、「手術以外に受けた治療が、乳がんの転帰に関わる重要な要因になるという事実を浮き彫りにするものだ」と指摘する。手術以外の治療法としては、乳房温存手術を受けた女性の多くが受ける放射線治療が挙げられる。また、乳がん患者の多くを占めるホルモン感受性乳がんの患者は、通常、長期間にわたって再発リスクを抑える目的でホルモン療法を受ける。実際に今回の研究でも、ホルモン療法は乳がん患者の生存期間にかなり影響を与えていることが示されている。ただし、この結果についてPestana氏は、「全ての乳がん患者に部分的な切除術が適していると解釈すべきではない」と強調。「特に、BRCA1やBRCA2といった遺伝子に変異を持つ、遺伝的に再発リスクの高い女性は、両側の乳房を切除する手術を選択した方が良いかもしれない」とする見解を示している。また、遺伝子変異がない場合でも、再発に対する不安の軽減や、審美面から乳房切除術という選択肢を求める女性もいるとPestana氏は指摘。「例えば、胸が小さい女性の場合、乳房切除術後に乳房再建術を受けて審美性を高めたいと考える可能性はある」と付け加えている。米M. D. アンダーソンがんセンターの乳腺外科医であるMediget Teshome氏もまた、「全ての乳がん患者に適した手術法はない。乳がんの特徴や将来の再発リスク、手術の長期的な生活の質(QOL)への影響など、患者ごとの状況を踏まえた上で、最適な手術法が選ばれる」と話している。Pestana氏によると、乳がんは50歳以上で診断されることが多く、40歳未満での診断率は低いが上昇傾向にある。そのため、治療法の選択が長期予後に与える影響について理解しておくことの重要性は高まりつつあるという。Pestana氏とTeshome氏はいずれも、全ての治療法の良い面と悪い面や患者の個人的な価値について話し合い、患者と担当するケアチームが共同で意思決定を行うべきであると主張している。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2022年4月7日)https://consumer.healthday.com/4-7-lumpectomy-as-effective-as-mastectomy-for-young-women-with-breast-cancer-2657089858.htmlCopyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock