長年のスモーカーだったMike Jamesさん(55歳)は、右側の肺に小さな腫瘍が見つかったのをきっかけに、3年ほど前にタバコをやめた。ボストンの公立学校の教師であるJamesさんは、「それは私にとって死刑宣告ともいえるものだった。それから2週間、がんを告知されたことは誰にも言わなかった。妻をはじめとする家族にも伝えなかった。その2週間に不安な気持ちだけが原因で18パウンド(約8キロ)はやせたように思う」と振り返る。しかし、免疫療法薬と化学療法の併用療法で腫瘍を縮小させた後に、外科的手術で腫瘍を摘出するという治療法を検証する臨床試験に参加したおかげで、Jamesさんは現在も生きながらえている。この第3相臨床試験の結果は、米ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターのPatric Forde氏らにより、「The New England Journal of Medicine」に4月11日掲載され、米国がん研究協会の年次集会(AACR 2022、4月8~13日、米ニューオーリンズ)でも発表された。肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がんに大別され、NSCLCが肺がん全体の8〜9割を占めるとされる。NSCLC患者の約20~25%は手術によってがんの切除が可能であるという。しかし、肺がんを切除した患者の最大55%でがんが再発すると報告されている。この臨床試験で使用された免疫療法薬は、免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)のニボルマブ(商品名オプジーボ)だ。同薬はすでに、より進行した肺がんの治療薬として承認されている。同薬を開発したブリストルマイヤーズスクイブ社によると、今回の試験結果に基づき米食品医薬品局(FDA)は、切除可能な肺がん患者に対する術前補助療法として、化学療法との併用による同薬の使用を承認した。研究グループは、試験参加者を術前に標準的なプラチナ製剤ベースの化学療法にニボルマブを併用する群(併用療法群、179人)と、同化学療法のみを受ける群(化学療法群、179人)にランダムに割り付け、ニボルマブの併用により、腫瘍の縮小効果や再発リスク低減効果が高まるのかどうかを検討した。なお、試験参加者は、手術により切除可能なNSCLC患者で、診断時のステージは1B~3Aだった。その結果、無イベント生存期間は、併用療法群で平均31.6カ月、化学療法群で20.8カ月だった。併用療法群では化学療法群と比べて無イベント生存期間の有意な延長が認められ、がんの再発や進行、死亡のリスクが37%低下した。さらに、全てのがん細胞が完全に消失した病理学的完全奏効患者の割合も、化学療法群の2.2%に対して併用療法群では24.0%に上った。この臨床試験を実施した研究グループの一人で、米ダナ・ファーバーがん研究所のMark Awad氏は、病理学的完全奏効患者について、「これらの患者も全員手術を受けたが、採取された組織を顕微鏡で調べたところ、瘢痕組織あるいは線維化した組織が見られただけで、生きたがん細胞は見つからなかった」と話す。Jamesさんは、2019年9月から併用療法を開始し、同年12月に手術を受けた。その後、定期的に受けているCT検査では再発は認められず、併用療法の副作用も治まったという。Jamesさんは、「頑張り過ぎたときに少し息苦しさを感じる以外は全て順調」と話している。(HealthDay News 2022年4月13日)https://consumer.healthday.com/3-13-opdivo-may-bring-survival-boost-for-lung-cancer-patients-2657122893.htmlCopyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock