米国心臓協会(AHA)が推奨する7つの生活習慣「Life's Simple 7(LS7)」を守ると、遺伝的リスクが高くても低くても、冠動脈性心疾患(CHD)の生涯リスクは低下の方向に向かうという研究結果が、「Circulation」に1月31日掲載された論文で明らかにされた。米テキサス大学のNatalie R. Hasbani氏らは、ARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)の参加者でベースライン時にCHDではなかった白人8,372例および黒人2,314例(ベースライン時の年齢45~64歳)を対象に、CHDの生涯リスク(lifetime risk of CHD、以下、LRCHDと記載)が、多遺伝子リスクスコア(PRS)およびLS7ガイドラインの遵守状況と、どのような関連を持つのかを検討する前向きコホート研究を実施した。600万個以上の遺伝子変異の情報に基づき、CHDのPRSを、「低(20パーセンタイル未満)」、「中(20~80パーセンタイル)」、および「高(80パーセンタイル超)」の3群に分類した。LS7は喫煙、BMI、総コレステロール、血糖、血圧、身体活動、食事の7項目を対象としており、ベースライン時における各項目の遵守状況を0~2点として合計し(LS7スコア)、「不良(0~4点)」、「中(5~9点)」、「理想的(10~14点)」の3群に分類した。これらのPRSとLS7スコアのカテゴリーに基づいて、LRCHDおよびCHDに罹患していない年数を推定した。LRCHDは、対象者全体で27.8%、白人で28.8%、黒人で24.4%であった。LS7スコアの群別にLRCHDを評価したところ、「理想的」で16.6%〔95%信頼区間(CI)14.7~18.7〕、「中」で30.4%(同28.5~32.5)、「不良」で43.1%(同38.5~48.0)と、LS7スコアが良好なほどLRCHDは低かった。PRSとLRCHDとの関連は、人種によって異なっていた。白人のLRCHDは、PRSが「低」で19.6%(95%CI 16.9~22.6)、「中」で28.0%(同25.2~31.1)、「高」で39.5%(同36.0~43.1)と、PRSが高くなるほどLRCHDが高くなり、「高」と「中」の絶対差は11.4%、「高」と「低」の絶対差は19.9%であった。PRSが「高」かつLS7スコアが「不良」の白人では、LRCHDが67.1%(95%CI 52.4~81.1)と極めて高く、PRSが「中」かつLS7が「中」の白人と比べてCHDに罹患していないと推定される年数が約15.9年短かった(62.3±2.99年 対 78.2±0.29年)。PRSが「高」の白人について見てみると、LS7スコアが「理想的」の場合は、「不良」である場合と比べてCHDに罹患していないと推定される年数が約20.2年も長かった(82.5±0.67年 対 62.3±2.99年)。一方、黒人におけるLRCHDは、PRSが「低」で19.1%(同14.0~25.8)、「中」で24.9%(同22.1~28.0)、「高」で28.6%(同23.5~34.4)と、白人と同様にPRSが高くなるほどLRCHDが高くなる傾向が認められたが、PRSの群間の絶対差は白人よりも小さく、「高」と「中」の絶対差は3.7%、「高」と「低」の絶対差は9.5%であった。LS7スコアが「不良」の黒人について見てみると、そのLRCHDはPRSの3群ともほぼ同じで、PRSが「高」で72.6±1.20%、「中」で72.6±1.01%、「低」で72.6±3.14%であった。著者は、「AHAが推奨する良好な7つの生活習慣を守れば、CHDの遺伝的素因がどうであれ、CHD発症リスクを低下させることができ、特にPRSが最も高い集団で、CHD発症リスクを最も大幅に低下させることができる」と述べている。(HealthDay News 2022年2月8日)https://consumer.healthday.com/adherence-to-life-s-simple-7-cuts-lifetime-risk-of-chd-2656532620.html.Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
米国心臓協会(AHA)が推奨する7つの生活習慣「Life's Simple 7(LS7)」を守ると、遺伝的リスクが高くても低くても、冠動脈性心疾患(CHD)の生涯リスクは低下の方向に向かうという研究結果が、「Circulation」に1月31日掲載された論文で明らかにされた。米テキサス大学のNatalie R. Hasbani氏らは、ARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)の参加者でベースライン時にCHDではなかった白人8,372例および黒人2,314例(ベースライン時の年齢45~64歳)を対象に、CHDの生涯リスク(lifetime risk of CHD、以下、LRCHDと記載)が、多遺伝子リスクスコア(PRS)およびLS7ガイドラインの遵守状況と、どのような関連を持つのかを検討する前向きコホート研究を実施した。600万個以上の遺伝子変異の情報に基づき、CHDのPRSを、「低(20パーセンタイル未満)」、「中(20~80パーセンタイル)」、および「高(80パーセンタイル超)」の3群に分類した。LS7は喫煙、BMI、総コレステロール、血糖、血圧、身体活動、食事の7項目を対象としており、ベースライン時における各項目の遵守状況を0~2点として合計し(LS7スコア)、「不良(0~4点)」、「中(5~9点)」、「理想的(10~14点)」の3群に分類した。これらのPRSとLS7スコアのカテゴリーに基づいて、LRCHDおよびCHDに罹患していない年数を推定した。LRCHDは、対象者全体で27.8%、白人で28.8%、黒人で24.4%であった。LS7スコアの群別にLRCHDを評価したところ、「理想的」で16.6%〔95%信頼区間(CI)14.7~18.7〕、「中」で30.4%(同28.5~32.5)、「不良」で43.1%(同38.5~48.0)と、LS7スコアが良好なほどLRCHDは低かった。PRSとLRCHDとの関連は、人種によって異なっていた。白人のLRCHDは、PRSが「低」で19.6%(95%CI 16.9~22.6)、「中」で28.0%(同25.2~31.1)、「高」で39.5%(同36.0~43.1)と、PRSが高くなるほどLRCHDが高くなり、「高」と「中」の絶対差は11.4%、「高」と「低」の絶対差は19.9%であった。PRSが「高」かつLS7スコアが「不良」の白人では、LRCHDが67.1%(95%CI 52.4~81.1)と極めて高く、PRSが「中」かつLS7が「中」の白人と比べてCHDに罹患していないと推定される年数が約15.9年短かった(62.3±2.99年 対 78.2±0.29年)。PRSが「高」の白人について見てみると、LS7スコアが「理想的」の場合は、「不良」である場合と比べてCHDに罹患していないと推定される年数が約20.2年も長かった(82.5±0.67年 対 62.3±2.99年)。一方、黒人におけるLRCHDは、PRSが「低」で19.1%(同14.0~25.8)、「中」で24.9%(同22.1~28.0)、「高」で28.6%(同23.5~34.4)と、白人と同様にPRSが高くなるほどLRCHDが高くなる傾向が認められたが、PRSの群間の絶対差は白人よりも小さく、「高」と「中」の絶対差は3.7%、「高」と「低」の絶対差は9.5%であった。LS7スコアが「不良」の黒人について見てみると、そのLRCHDはPRSの3群ともほぼ同じで、PRSが「高」で72.6±1.20%、「中」で72.6±1.01%、「低」で72.6±3.14%であった。著者は、「AHAが推奨する良好な7つの生活習慣を守れば、CHDの遺伝的素因がどうであれ、CHD発症リスクを低下させることができ、特にPRSが最も高い集団で、CHD発症リスクを最も大幅に低下させることができる」と述べている。(HealthDay News 2022年2月8日)https://consumer.healthday.com/adherence-to-life-s-simple-7-cuts-lifetime-risk-of-chd-2656532620.html.Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock