電子カルテの記録に基づいた臨床意思決定支援システム(CDSS)を活用すると、社会経済的に弱い立場にあり、かつ心血管疾患(CVD)のリスクが高い集団でCVDリスクが大きく低下するという研究結果が、「JAMA Network Open」に2月4日掲載された。社会経済的に弱い立場にある患者のCVDリスクのコントロールは万全とは言えない状況にあることから、このような患者におけるCVDリスク因子の状況を好ましい方向へ持っていくことにより、CVDアウトカムの改善が期待できる。そこで、米カイザー・パーマネンテのRachel Gold氏らは、CVDリスクを低下させるように患者を支援する電子ツールである臨床意思決定支援システム(CDSS)を使った介入が、CVDリスクにどのような影響を及ぼすかを評価するため、OCHIN Incに所属する米国の地域保健センター(Community Health Center、CHC;低所得者や保険未加入者に保健サービスを提供)が管轄しているクリニックを対象に、ランダム化試験を実施した。CHCの規模を考慮し、計70件のクリニックをCDSSによる介入を実施する群(介入群;8カ所のCHCが管轄する42件のクリニック)または実施しない群(対照群;7カ所のCHCが管轄する28件のクリニック)にランダムに割り付け、2018年9月20日から2020年3月15日までを調査期間とした。CDSSによる介入とは、「CDSSの画面に表示された、それぞれの患者におけるCVDの10年リスク、およびリスクを下げるために推奨される治療や行動の内容を患者が閲覧または印刷すること」とした。対象者は、40~75歳で、「糖尿病またはアテローム性動脈硬化性心血管疾患に罹患し、かつコントロール不良の主要CVDリスク因子を1つ以上有する患者」、または、「6個のCVDリスク因子(収縮期血圧、HbA1c、スタチンの使用状況、アスピリンの使用状況、喫煙、BMI)をコントロールできている場合に、CVDの10年リスクを10%以上低下させることが可能な患者」とした。主要アウトカムは、全CVDリスクおよび可逆的なCVDリスク(リスク因子の改善によって低下させることができるCVDリスク)の1年間の低下幅とした。調査期間中に来院した、評価可能な患者は1万8,578例〔女性9,490例(51.1%)、平均年齢58.7±8.8歳、介入群1万1,159例、対照群7,419例〕であった。調査期間内に患者がCDSSを使用できる機会は9万1,988回あったが、実際に使用された割合は19.8%と低く、患者1人当たり2.4±1.9回であった。ベースライン時における全CVDの10年リスクは、対照群では16.6±12.8%、介入群では15.6±12.3%と、対照群の方が有意に高かった(P<0.001)。同様にベースライン時の可逆的なCVDリスクも対照群の方が高く、対照群で9.7±10.0%、介入群で7.9±9.0%であった。可逆的なCVDリスクの1年間の低下幅をみたところ、介入群(0.4%、95%信頼区間0.3~0.5)よりも対照群(-0.1%、同-0.3~-0.02)で有意に大きく低下していた(P<0.001)。ところが、ベースライン時の全CVDの10年リスクが高い(20%以上)患者についてみたところ、全CVDリスクの1年間の低下幅は、介入群(-0.9%、同-1.2~-0.7)の方が対照群(-0.3%、同-0.5~-0.1)よりも大きく、さらに、可逆的なCVDリスクの1年間の低下幅も、介入群(-4.4%、同-5.2~-3.7)の方が対照群(-2.7%、同-3.4~-1.9%)よりも有意に大きかった(P=0.001)。著者は、「CHCでCDSSを活用することにより、社会経済的に弱い立場にあり、かつCVDリスクが高い患者のリスクの改善が期待できる。CHCで治療を受けているこのような患者に対し、CDSSによる支援を受けられる機会を増やす方策が必要だろう」と述べている。(HealthDay News 2022年2月10日)https://consumer.healthday.com/clinical-decision-support-may-cut-cardiovascular-disease-risk-2656590685.html.Abstract/Full Text.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
電子カルテの記録に基づいた臨床意思決定支援システム(CDSS)を活用すると、社会経済的に弱い立場にあり、かつ心血管疾患(CVD)のリスクが高い集団でCVDリスクが大きく低下するという研究結果が、「JAMA Network Open」に2月4日掲載された。社会経済的に弱い立場にある患者のCVDリスクのコントロールは万全とは言えない状況にあることから、このような患者におけるCVDリスク因子の状況を好ましい方向へ持っていくことにより、CVDアウトカムの改善が期待できる。そこで、米カイザー・パーマネンテのRachel Gold氏らは、CVDリスクを低下させるように患者を支援する電子ツールである臨床意思決定支援システム(CDSS)を使った介入が、CVDリスクにどのような影響を及ぼすかを評価するため、OCHIN Incに所属する米国の地域保健センター(Community Health Center、CHC;低所得者や保険未加入者に保健サービスを提供)が管轄しているクリニックを対象に、ランダム化試験を実施した。CHCの規模を考慮し、計70件のクリニックをCDSSによる介入を実施する群(介入群;8カ所のCHCが管轄する42件のクリニック)または実施しない群(対照群;7カ所のCHCが管轄する28件のクリニック)にランダムに割り付け、2018年9月20日から2020年3月15日までを調査期間とした。CDSSによる介入とは、「CDSSの画面に表示された、それぞれの患者におけるCVDの10年リスク、およびリスクを下げるために推奨される治療や行動の内容を患者が閲覧または印刷すること」とした。対象者は、40~75歳で、「糖尿病またはアテローム性動脈硬化性心血管疾患に罹患し、かつコントロール不良の主要CVDリスク因子を1つ以上有する患者」、または、「6個のCVDリスク因子(収縮期血圧、HbA1c、スタチンの使用状況、アスピリンの使用状況、喫煙、BMI)をコントロールできている場合に、CVDの10年リスクを10%以上低下させることが可能な患者」とした。主要アウトカムは、全CVDリスクおよび可逆的なCVDリスク(リスク因子の改善によって低下させることができるCVDリスク)の1年間の低下幅とした。調査期間中に来院した、評価可能な患者は1万8,578例〔女性9,490例(51.1%)、平均年齢58.7±8.8歳、介入群1万1,159例、対照群7,419例〕であった。調査期間内に患者がCDSSを使用できる機会は9万1,988回あったが、実際に使用された割合は19.8%と低く、患者1人当たり2.4±1.9回であった。ベースライン時における全CVDの10年リスクは、対照群では16.6±12.8%、介入群では15.6±12.3%と、対照群の方が有意に高かった(P<0.001)。同様にベースライン時の可逆的なCVDリスクも対照群の方が高く、対照群で9.7±10.0%、介入群で7.9±9.0%であった。可逆的なCVDリスクの1年間の低下幅をみたところ、介入群(0.4%、95%信頼区間0.3~0.5)よりも対照群(-0.1%、同-0.3~-0.02)で有意に大きく低下していた(P<0.001)。ところが、ベースライン時の全CVDの10年リスクが高い(20%以上)患者についてみたところ、全CVDリスクの1年間の低下幅は、介入群(-0.9%、同-1.2~-0.7)の方が対照群(-0.3%、同-0.5~-0.1)よりも大きく、さらに、可逆的なCVDリスクの1年間の低下幅も、介入群(-4.4%、同-5.2~-3.7)の方が対照群(-2.7%、同-3.4~-1.9%)よりも有意に大きかった(P=0.001)。著者は、「CHCでCDSSを活用することにより、社会経済的に弱い立場にあり、かつCVDリスクが高い患者のリスクの改善が期待できる。CHCで治療を受けているこのような患者に対し、CDSSによる支援を受けられる機会を増やす方策が必要だろう」と述べている。(HealthDay News 2022年2月10日)https://consumer.healthday.com/clinical-decision-support-may-cut-cardiovascular-disease-risk-2656590685.html.Abstract/Full Text.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock