がんや心血管疾患などによる死亡リスクを下げる簡単な方法、それはウォーキングかもしれない。1日最大1万歩までは2,000歩多いごとに、それらのリスクが8~11%の割合で低下するという関連があるという。南デンマーク大学のBorja del Pozo Cruz氏らの研究の結果であり、詳細は「JAMA Internal Medicine」に9月12日掲載された。.Cruz氏は、「1日1万歩でメリットが最大化するが、そこまで多い歩数を歩けない人でも、歩くことによりメリットを得られると考えられる」と語っている。また、この研究の参加者の年齢が40~79歳であったことから、「ウォーキングを始めるのに遅すぎるということはなく、始めることが大切だ」としている。ただし本研究は、毎日の歩数が心血管疾患やがんによる死亡、全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクの低さと関連していることを示しているが、多く歩くことがリスク低下の理由であると証明するものではない。.ウォーキングが健康に良いことは広く知られている。しかし、1日何歩歩けばよいのか、または、歩行速度はメリットに影響があるのかといったことは、はっきり分かっていない。そこでCruz氏は、英国の大規模ヘルスケア情報ベース「UKバイオバンク」のデータを用いてこの点を検討した。.UKバイオバンクでは2013年2月~2015年12月に、電子メールアドレスが明らかな参加者23万6,462人に対して、手首装着タイプの加速度計を7日間着用して生活するという研究への協力を依頼し、10万3,684人が同意。今回の検討では、ベースライン時点での心血管疾患やがんの既往者、自己申告による健康状態の不良を報告した人、および加速度計着用時間が1日20時間未満だった人などを除外。40~79歳の成人7万8,500人(平均年齢61±8歳、女性55%)を解析対象とした。.5万3,196人年(期間中央値7.0年)の追跡で、心血管死664人、がん死1,325人を含む2,179人が死亡。死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、果物・野菜の摂取量、人種、教育歴、社会経済的地位、降圧薬・脂質低下薬・インスリンの処方、心血管疾患・がんの家族歴など)を調整後、1日1万歩までは歩数が多いほど、全死亡、心血管死、がん死のリスクが低いという関係が明らかになった。具体的には、1日2,000歩多いごとに、全死亡リスクは8%〔平均変化率(MRC)-0.08(95%信頼区間-0.11~-0.06)〕、心血管死は10%〔MRC-0.10(同-0.15~-0.06)〕、がん死は11%〔MRC-0.11(同-0.15~-0.06)〕少ないという結果だった。.また、歩行速度もリスク低下と関係があり、「1分間に約80歩という早歩きをしていた人の死亡リスクがより低かった」とCruz氏は述べている。さらに、論文の共著者が所属しているシドニー大学(オーストラリア)発のプレスリリースによると、ウォーキングが認知機能に対して保護的に働く可能性も示され、1日9,800歩の人では50%、3,800歩の人でも25%、認知症リスクが低かったという。.これらの結果を基にCruz氏は、「歩数を記録するウェアラブルデバイスが健康増進に役立つ可能性がある」と述べている。なお、一度に集中してウォーキングを行う必要はなく、1日の中で分散して行い、歩数を重ねても良いとのことだ。ただし、「それらのウェアラブルデバイスを使い始めた人の多くが、初めはしっかり使うものの、しばらくすると使わなくなってしまう。そうではなく、習慣として使い続けることが大切だ」と付け加えている。.本研究報告について、米サンドラ・アトラス・バス・ハート病院のBenjamin Hirsh氏は、「習慣的なウォーキングのメリットを強調する結果だ」と評価。また、「健康上のメリットを得るには最初の5,000歩がより重要であり、続く5,000歩の効果はやや下がるが、それでもメリットは上乗せされる」と解説している。(HealthDay News 2022年9月13日).https://consumer.healthday.com/9-15-how-many-steps-a-day-and-how-fast-to-lengthen-your-life-2658198959.html.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
がんや心血管疾患などによる死亡リスクを下げる簡単な方法、それはウォーキングかもしれない。1日最大1万歩までは2,000歩多いごとに、それらのリスクが8~11%の割合で低下するという関連があるという。南デンマーク大学のBorja del Pozo Cruz氏らの研究の結果であり、詳細は「JAMA Internal Medicine」に9月12日掲載された。.Cruz氏は、「1日1万歩でメリットが最大化するが、そこまで多い歩数を歩けない人でも、歩くことによりメリットを得られると考えられる」と語っている。また、この研究の参加者の年齢が40~79歳であったことから、「ウォーキングを始めるのに遅すぎるということはなく、始めることが大切だ」としている。ただし本研究は、毎日の歩数が心血管疾患やがんによる死亡、全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクの低さと関連していることを示しているが、多く歩くことがリスク低下の理由であると証明するものではない。.ウォーキングが健康に良いことは広く知られている。しかし、1日何歩歩けばよいのか、または、歩行速度はメリットに影響があるのかといったことは、はっきり分かっていない。そこでCruz氏は、英国の大規模ヘルスケア情報ベース「UKバイオバンク」のデータを用いてこの点を検討した。.UKバイオバンクでは2013年2月~2015年12月に、電子メールアドレスが明らかな参加者23万6,462人に対して、手首装着タイプの加速度計を7日間着用して生活するという研究への協力を依頼し、10万3,684人が同意。今回の検討では、ベースライン時点での心血管疾患やがんの既往者、自己申告による健康状態の不良を報告した人、および加速度計着用時間が1日20時間未満だった人などを除外。40~79歳の成人7万8,500人(平均年齢61±8歳、女性55%)を解析対象とした。.5万3,196人年(期間中央値7.0年)の追跡で、心血管死664人、がん死1,325人を含む2,179人が死亡。死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、果物・野菜の摂取量、人種、教育歴、社会経済的地位、降圧薬・脂質低下薬・インスリンの処方、心血管疾患・がんの家族歴など)を調整後、1日1万歩までは歩数が多いほど、全死亡、心血管死、がん死のリスクが低いという関係が明らかになった。具体的には、1日2,000歩多いごとに、全死亡リスクは8%〔平均変化率(MRC)-0.08(95%信頼区間-0.11~-0.06)〕、心血管死は10%〔MRC-0.10(同-0.15~-0.06)〕、がん死は11%〔MRC-0.11(同-0.15~-0.06)〕少ないという結果だった。.また、歩行速度もリスク低下と関係があり、「1分間に約80歩という早歩きをしていた人の死亡リスクがより低かった」とCruz氏は述べている。さらに、論文の共著者が所属しているシドニー大学(オーストラリア)発のプレスリリースによると、ウォーキングが認知機能に対して保護的に働く可能性も示され、1日9,800歩の人では50%、3,800歩の人でも25%、認知症リスクが低かったという。.これらの結果を基にCruz氏は、「歩数を記録するウェアラブルデバイスが健康増進に役立つ可能性がある」と述べている。なお、一度に集中してウォーキングを行う必要はなく、1日の中で分散して行い、歩数を重ねても良いとのことだ。ただし、「それらのウェアラブルデバイスを使い始めた人の多くが、初めはしっかり使うものの、しばらくすると使わなくなってしまう。そうではなく、習慣として使い続けることが大切だ」と付け加えている。.本研究報告について、米サンドラ・アトラス・バス・ハート病院のBenjamin Hirsh氏は、「習慣的なウォーキングのメリットを強調する結果だ」と評価。また、「健康上のメリットを得るには最初の5,000歩がより重要であり、続く5,000歩の効果はやや下がるが、それでもメリットは上乗せされる」と解説している。(HealthDay News 2022年9月13日).https://consumer.healthday.com/9-15-how-many-steps-a-day-and-how-fast-to-lengthen-your-life-2658198959.html.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock