統合失調症の家族性リスクが高い(familial high risk;FHR)児において、7〜11歳の間での神経認知機能の発達の程度は、双極性障害のFHRを持つ児やpopulation-basedの対照(PBC)における発達の程度と大差はないが、11歳時において神経認知障害を有する率は高いとする前向きコホート研究の結果が、オーフス大学病院(デンマーク)精神科のChristina Bruun Knudsen氏らにより、「JAMA Psychiatry」に4月6日発表された。.本研究は、前向き縦断研究であるDanish High Risk and Resilience Studyの一部として実施された。同研究では、1)1人以上の親が統合失調症スペクトラム障害である児(統合失調症FHR群)、2)1人以上の親が双極性障害である児(双極性障害FHR群)、3)親に統合失調症も双極性障害もなく、統合失調症のFHRを持つ児と性別、年齢、居住自治体をマッチさせた児(PBC群)の3群、計522人を対象とし、7歳時(2013年1月1日から2016年1月31日までの間)と11歳時(2017年3月1日から2020年6月30日までの間)の2回にわたって、精神病理学や神経認知から運動発達、遺伝子解析、身体的健康や家庭環境まで、多岐にわたる分野に関する包括的な評価が行われた。神経認知機能については、知能、処理速度、注意力、言語記憶、視空間記憶、言語流暢性、作業記憶(言語、視覚)、遂行機能(計画、セットシフティング)について評価された。この研究により、統合失調症のFHRを有する児は、7歳の時点で多岐にわたる神経認知障害を有する率が高いことが示唆されている.今回の研究では、7歳から11歳までの神経認知機能の発達の程度が検討された。検討には、FHR群と時間×群の交互作用を固定要因とランダム要因として用いた最尤推定に基づくマルチレベル線形混合効果モデルを採用した。11歳時における諸神経認知機能の3群間の効果量の評価には、Cohen's dを使用した。.計451人の児〔平均年齢(標準偏差)11.9(0.2)歳、男児53.9%〕が11歳となった4年後に神経認知機能の検査を再度受けた。内訳は、統合失調症FHR群170人〔同12.0(0.3)歳、男児52.4%〕、双極性障害FHR群103人〔同11.9(0.2)歳、男児56.3%〕、PBC群178人〔同11.9(0.2)歳、男児53.9%〕であった。.この4年の間に、神経認知機能の発達の程度に差が生じているかを見たところ、統合失調症FHR群対PBC群、双極性障害FHR群対PBC群、および統合失調症FHR群対双極性障害FHR群の間には、神経認知機能に対する有意な時間×群の相互作用は認められず(多重比較補正済)、発達の程度に3群間で明らかな差はなかった。.次に、11歳時における諸神経認知機能の検査成績を比較したところ、統合失調症FHR群ではPBC群に比べて、24種類の神経認知機能検査のうちTrail Making Testなど7種類(29.2%、Cohen's dは0.29から0.37の間)のスコアが有意に低かった。また、統合失調症FHR群では双極性障害FHR群と比べて、24種類の神経認知機能検査のうちRapid Visual Information Processing A'など5種類(20.8%、同0.29〜0.38)のスコアが有意に低かった。.著者らは、「われわれの研究から、統合失調症FHRを有する児では、年少時から神経認知障害が確認され、かつこの障害は7〜11歳の間で変動しないと考えられた。今回の結果は、統合失調症FHRを有する児の認知障害をターゲットにした早期介入プログラムの活用を広く知らしめるべきことを意味している。こうした障害は、介入により改善される余地が十分にあるからだ」と述べている。(HealthDay News 2022年7月14日).https://consumer.healthday.com/neurocognition-examined-for-kids-at-familial-high-schizophrenia-risk-2657895302.html.Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
統合失調症の家族性リスクが高い(familial high risk;FHR)児において、7〜11歳の間での神経認知機能の発達の程度は、双極性障害のFHRを持つ児やpopulation-basedの対照(PBC)における発達の程度と大差はないが、11歳時において神経認知障害を有する率は高いとする前向きコホート研究の結果が、オーフス大学病院(デンマーク)精神科のChristina Bruun Knudsen氏らにより、「JAMA Psychiatry」に4月6日発表された。.本研究は、前向き縦断研究であるDanish High Risk and Resilience Studyの一部として実施された。同研究では、1)1人以上の親が統合失調症スペクトラム障害である児(統合失調症FHR群)、2)1人以上の親が双極性障害である児(双極性障害FHR群)、3)親に統合失調症も双極性障害もなく、統合失調症のFHRを持つ児と性別、年齢、居住自治体をマッチさせた児(PBC群)の3群、計522人を対象とし、7歳時(2013年1月1日から2016年1月31日までの間)と11歳時(2017年3月1日から2020年6月30日までの間)の2回にわたって、精神病理学や神経認知から運動発達、遺伝子解析、身体的健康や家庭環境まで、多岐にわたる分野に関する包括的な評価が行われた。神経認知機能については、知能、処理速度、注意力、言語記憶、視空間記憶、言語流暢性、作業記憶(言語、視覚)、遂行機能(計画、セットシフティング)について評価された。この研究により、統合失調症のFHRを有する児は、7歳の時点で多岐にわたる神経認知障害を有する率が高いことが示唆されている.今回の研究では、7歳から11歳までの神経認知機能の発達の程度が検討された。検討には、FHR群と時間×群の交互作用を固定要因とランダム要因として用いた最尤推定に基づくマルチレベル線形混合効果モデルを採用した。11歳時における諸神経認知機能の3群間の効果量の評価には、Cohen's dを使用した。.計451人の児〔平均年齢(標準偏差)11.9(0.2)歳、男児53.9%〕が11歳となった4年後に神経認知機能の検査を再度受けた。内訳は、統合失調症FHR群170人〔同12.0(0.3)歳、男児52.4%〕、双極性障害FHR群103人〔同11.9(0.2)歳、男児56.3%〕、PBC群178人〔同11.9(0.2)歳、男児53.9%〕であった。.この4年の間に、神経認知機能の発達の程度に差が生じているかを見たところ、統合失調症FHR群対PBC群、双極性障害FHR群対PBC群、および統合失調症FHR群対双極性障害FHR群の間には、神経認知機能に対する有意な時間×群の相互作用は認められず(多重比較補正済)、発達の程度に3群間で明らかな差はなかった。.次に、11歳時における諸神経認知機能の検査成績を比較したところ、統合失調症FHR群ではPBC群に比べて、24種類の神経認知機能検査のうちTrail Making Testなど7種類(29.2%、Cohen's dは0.29から0.37の間)のスコアが有意に低かった。また、統合失調症FHR群では双極性障害FHR群と比べて、24種類の神経認知機能検査のうちRapid Visual Information Processing A'など5種類(20.8%、同0.29〜0.38)のスコアが有意に低かった。.著者らは、「われわれの研究から、統合失調症FHRを有する児では、年少時から神経認知障害が確認され、かつこの障害は7〜11歳の間で変動しないと考えられた。今回の結果は、統合失調症FHRを有する児の認知障害をターゲットにした早期介入プログラムの活用を広く知らしめるべきことを意味している。こうした障害は、介入により改善される余地が十分にあるからだ」と述べている。(HealthDay News 2022年7月14日).https://consumer.healthday.com/neurocognition-examined-for-kids-at-familial-high-schizophrenia-risk-2657895302.html.Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock