片頭痛患者の5人に1人が化学物質過敏症(multiple chemical sensitivity;MCS)を有していることが、「Journal of Occupational Health」に4月1日掲載された研究により明らかになった。.MCSは、化学物質への曝露が引き金となり頭痛を含むさまざまな全身症状が起こる疾患である。片頭痛は中枢性感作症候群との関連が指摘されているが、MCSと片頭痛との関連についてはこれまで検討されていなかった。.そこで、獨協医科大学の鈴木圭輔氏らは、片頭痛患者95例(男性14例、女性81例、平均年齢45.4±12.4歳)のデータを用いて横断研究を行い、片頭痛とMCSの関係性を調べた。前兆(視覚性、感覚性、言語性、運動性)の有無、随伴症状、光過敏(羞明)、音過敏(音恐怖症)、嗅覚過敏(臭気恐怖症)に関する情報を収集した。Quick Environment Exposure Sensitivity Inventory(QEESI)日本語版に基づいて、Q1(化学物質不耐性)30点以上、Q3(症状重症度)13点以上、Q5(日常生活における障害)17点以上をMCSと定義した。Central Sensitization Inventory(CSI)のスコアが40点を超えた場合を中枢性感作ありと定義し、さらに過去に診断された中枢性感作に関連した疾患(不安・パニック発作、うつ病など)の情報も収集した。頭痛関連の障害はMigraine Disability Assessment(MIDAS)、精神的苦痛はKessler Psychological Distress Scale(K6)で評価した。カテゴリー変数はχ2検定またはFisherの正確検定、連続変数はStudentのt検定またはMann-Whitney U検定で評価した。.その結果、片頭痛患者95例のうち19例(20.0%)にMCSが認められたが、過去にMCSと診断された患者はいなかった。MCSがある患者では、ない患者に比べて、中枢性感作関連疾患のうち不安・パニック発作(31.6%対9.9%、P=0.017)およびうつ病(31.6%対6.9%、P=0.003)の割合が高かった。随伴症状・前兆のうち羞明(100.0%対73.7%、P=0.010)、臭気恐怖症(84.2%対50.0%、P=0.007)、視覚性前兆(68.4%対38.2%、P=0.018)、感覚性前兆(47.4%対17.1%、P=0.012)、中枢性感作(57.9%対16.9%、P<0.001)もMCSがある患者で多く見られた。さらに、MIDASスコア(17.3対9.4、P<0.001)とK6スコア(8.8対4.3、P=0.002)もMCSがある患者で高値であった。ロジスティック回帰分析を行ったところ、MCSがある患者で臭気恐怖症、感覚性前兆、中枢性感作のオッズが有意に高かった(いずれもP<0.05)。.著者らは、「われわれの研究では、片頭痛患者の20%にMCSが認められ、さらにMCSが片頭痛患者の中枢性感作や過敏症と関連している可能性が示唆された。今後、大規模な前向き研究を行うことで、MCSと片頭痛の関係性やMCSの治療経過が明らかになるだろう」と述べている。(HealthDay News 2022年8月31日).https://consumer.healthday.com/migraine-may-be-tied-to-multiple-chemistry-sensitivity-2657955985.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
片頭痛患者の5人に1人が化学物質過敏症(multiple chemical sensitivity;MCS)を有していることが、「Journal of Occupational Health」に4月1日掲載された研究により明らかになった。.MCSは、化学物質への曝露が引き金となり頭痛を含むさまざまな全身症状が起こる疾患である。片頭痛は中枢性感作症候群との関連が指摘されているが、MCSと片頭痛との関連についてはこれまで検討されていなかった。.そこで、獨協医科大学の鈴木圭輔氏らは、片頭痛患者95例(男性14例、女性81例、平均年齢45.4±12.4歳)のデータを用いて横断研究を行い、片頭痛とMCSの関係性を調べた。前兆(視覚性、感覚性、言語性、運動性)の有無、随伴症状、光過敏(羞明)、音過敏(音恐怖症)、嗅覚過敏(臭気恐怖症)に関する情報を収集した。Quick Environment Exposure Sensitivity Inventory(QEESI)日本語版に基づいて、Q1(化学物質不耐性)30点以上、Q3(症状重症度)13点以上、Q5(日常生活における障害)17点以上をMCSと定義した。Central Sensitization Inventory(CSI)のスコアが40点を超えた場合を中枢性感作ありと定義し、さらに過去に診断された中枢性感作に関連した疾患(不安・パニック発作、うつ病など)の情報も収集した。頭痛関連の障害はMigraine Disability Assessment(MIDAS)、精神的苦痛はKessler Psychological Distress Scale(K6)で評価した。カテゴリー変数はχ2検定またはFisherの正確検定、連続変数はStudentのt検定またはMann-Whitney U検定で評価した。.その結果、片頭痛患者95例のうち19例(20.0%)にMCSが認められたが、過去にMCSと診断された患者はいなかった。MCSがある患者では、ない患者に比べて、中枢性感作関連疾患のうち不安・パニック発作(31.6%対9.9%、P=0.017)およびうつ病(31.6%対6.9%、P=0.003)の割合が高かった。随伴症状・前兆のうち羞明(100.0%対73.7%、P=0.010)、臭気恐怖症(84.2%対50.0%、P=0.007)、視覚性前兆(68.4%対38.2%、P=0.018)、感覚性前兆(47.4%対17.1%、P=0.012)、中枢性感作(57.9%対16.9%、P<0.001)もMCSがある患者で多く見られた。さらに、MIDASスコア(17.3対9.4、P<0.001)とK6スコア(8.8対4.3、P=0.002)もMCSがある患者で高値であった。ロジスティック回帰分析を行ったところ、MCSがある患者で臭気恐怖症、感覚性前兆、中枢性感作のオッズが有意に高かった(いずれもP<0.05)。.著者らは、「われわれの研究では、片頭痛患者の20%にMCSが認められ、さらにMCSが片頭痛患者の中枢性感作や過敏症と関連している可能性が示唆された。今後、大規模な前向き研究を行うことで、MCSと片頭痛の関係性やMCSの治療経過が明らかになるだろう」と述べている。(HealthDay News 2022年8月31日).https://consumer.healthday.com/migraine-may-be-tied-to-multiple-chemistry-sensitivity-2657955985.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock